英労働党で“スターマーおろし”加速 次期首相の有力候補にバーナム氏 下院補選で立ちはだかる「2つの壁」

英労働党で“スターマーおろし”加速 次期首相の有力候補にバーナム氏 下院補選で立ちはだかる「2つの壁」
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 スターマー首相への退陣圧力が強まるイギリスで“ポスト・スターマー”最有力との呼び声が高いアンディ・バーナム氏(56)だが、来月の下院補欠選では野党・リフォームUKの候補に苦戦が予想されている。もう一つ、労働党に立ちはだかる野党が「緑の党」だ。どんな政党なのだろうか。

【画像】英首相に退陣圧力 後任の有力候補は

後任“最有力”のバーナム氏とは

 まずは、“ポスト・スターマー”最有力とされるバーナム氏について見ていく。“スターマーおろし”を加速させたのが今月の統一地方選挙だった。

肝いり政策は路上生活者の巡回調査
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 統一地方選で歴史的大敗を喫した労働党だが、党首のスターマー首相は「約束した変革を実現するという決意は揺らぐことはない」と続投の意向を表明した。しかし、2029年夏までに国政選挙を控える中、BBCによると、スターマー首相の退陣を求める労働党議員は90人を超えているという。

 こうした状況で“ポスト・スターマー”と言われているのが、グレーター・マンチェスター市長のバーナム氏。2001年~17年まで下院議員を務めて、ブラウン政権下では文化・メディア・スポーツ相と保健相を歴任した人物だ。2017年には国政を離れ、グレーター・マンチェスター市長になり現在3期目となる。

 調査会社が、次期党首選でスターマー首相とバーナム氏、どちらを支持するか労働党党員にアンケート調査を行ったところ、59%が「バーナム氏を支持する」と答えたという。

 そんなバーナム氏の趣味が、まず「長距離ランニング」。フルマラソンを複数回完走していて、ロンドンマラソンでは4時間26分19秒の記録を持つ。

 もう一つの趣味が「音楽」で、過去にはリバプールの市長とチャリティーDJ対決をしたこともある。

 バーナム市長としての“肝煎り(きもいり)”の政策が、路上生活者の巡回調査だ。市長自らが調査にあたり、午前4時に街に出ることもあるという。これは、国政を離れたからこそ培うことのできたスタイルだという。

 このように、市民と同じ目線を持つ市長というイメージがある。

評価高めたバス網の「再公営化」

 “ポスト・スターマー”最有力とされるバーナム氏の手腕とは、どのようなものなのか。

バーナム氏 市長としての手腕は
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 バーナム氏が市長を務めるグレーター・マンチェスターはイングランド北西部に位置し、マンチェスター市を含む10の自治体で構成された合同行政機構だ。

 イギリス第2の経済圏を構成し、2015年~23年の経済成長率は3.1%。イギリス全体の成長率の2倍以上となっている。そのため、マンチェスタ―は繁栄する大都市のイメージがある。

 例えば、プロサッカーの世界的クラブチームで、デビッド・ベッカム氏も所属していたマンチェスター・ユナイテッドが有名。さらに、街の中心部には高層ビルが立ち並び、イギリスBBCのオフィスがあるなどロンドンに次ぐメディア産業の拠点となっている。

 一方で、衰退する製造産業都市のイメージも持たれている。そもそも、マンチェスターは18世紀後半から19世紀にかけて綿製品の製造拠点となり、“綿の都”として産業革命の中心地となっていた。

 そうしたことから、労働者らの“勤勉さ”や“協調性”を示すものとして、市のシンボルには「働きバチ」が使われている。ただ、第2次大戦以降は徐々に製造産業が衰退していった。

 このグレーター・マンチェスターで、バーナム氏はサッチャー政権時に民営化し、運賃が高騰していたバス網を再び公営化した。その結果、「ビー・ネットワーク」として路面電車や自動車など域内交通と統合させて便利にしたことから、市民からの評価がより高まったという。

下院補選では「EU再加盟」争点か

 ただ、そのバーナム氏が出馬予定の来月の下院補欠選挙では苦戦するとの見方も出ている。

対抗馬として有力視されるロバート・ケニヨン氏
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 バーナム氏の対抗馬として有力視されているのが野党で、右派ポピュリスト政党のリフォームUK公認のロバート・ケニヨン氏(41)。配管工として18歳から働いている。

 ケニヨン氏が出馬予定の選挙区を含む地域の統一地方選の結果は、労働党が22議席減らして獲得0議席だったのに対し、リフォームUKは24議席増やした。そこで来月の下院補選も、リフォームUKが圧倒的優勢との見方もある。

 また、下院補選では「EU再加盟」が争点となる可能性もある。

 イギリスのシンクタンク「モア・イン・コモン」の「ブレグジット(EU離脱)」に関する世論調査によると、「最初からうまくいくはずがなかった」または「政治が台無しにした」と答えた人が合わせて80%を超えている。一方、「うまくいった」と答えた人はわずか6%だった。

 そうした状況の中、リフォームUKが再加盟に「絶対反対」なのに対し、労働党は元々ブレグジットに反対だったが、バーナム氏は今回の補選でこれを争点化しない姿勢を示している。しかし、補選の結果次第で、ブレグジットから10年が経つ今年、「再加盟」が再び議題に上がる可能性がある。

「緑の党」大躍進 若者の取り込みに成功

 来月の下院補選で、労働党に立ちはだかることも予想される、もう一つの政党。それが統一地方選で大躍進した「緑の党」だ。一体、どんな政党なのだろうか。

躍進の「緑の党」 労働党にも影響力
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 緑の党は左派環境政党。つまり、環境問題を優先課題としてきた党だ。

 今月7日、イングランド地方選挙で合わせて587議席を獲得し、前回よりも411議席増やした。政党の得票率が11.7%から18%となる大躍進を遂げた。

 元々は、1972年に結成されたグループがルーツで、緑の党という名前になったのが1985年。現在は43歳のザック・ポランスキー氏が党首を務めている。

 ポランスキー氏は舞台俳優や催眠療法士などを経て、去年9月に党首になった。また、同性愛者であることを公表している。

 このポランスキー氏が党首に就任して以降、緑の党は躍進している。党員を80%増やし、現在約12万6000人もいる。既存政党に期待していない若者の取り込みに成功しているという。

 また、その影響力は今や労働党にも及んでいるといい、イギリス紙ガーディアンによると、ポランスキー氏は「労働党を支持してきた何百万もの人々に言いたい。あなたたちが労働党を離れるのではなく、労働党があなたたちから離れるのだ」と訴えている。

 そうした中で、労働党の中からも緑の党への合流を検討している議員もいるという。

イスラエル批判も…政策に独自色

 では、緑の党政策はどのようなものなのか。

重要政策に富裕層への課税強化
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 重要政策に富裕層への課税強化を掲げている。具体的には1000万ポンド(日本円で約21億4000万円)を超える資産の場合は年間1%の税金、10億ポンド(約2140億円)を超える資産の場合は2%の富裕税を課すというもの。

 外交政策ではイスラエルに批判的。対イスラエルの外交関係停止を掲げていて、武器輸出の全面停止や駐英イスラエル大使の停職を訴えている。

 元々は環境政策に特化していたが、近年はこういった政策で独自色を出している。

(2026年5月22日放送分より)

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