
21日、中東情勢に関する関係閣僚会議が開かれ、ナフサ由来の石油製品について高市早苗総理大臣が流通過程の目詰まり解消に取り組むよう指示しました。政府の言う「目詰まり」はどこで起きているのでしょうか。
包装材や容器が入手困難
都内にある洋菓子店「Cafe Amicalement」は、本場パリで学んだレシピをベースにしたケーキや焼き菓子が人気のお店です。
Cafe Amicalementオーナー
ムノ明子さん
「この袋も品切れです。買えませんでした」
お菓子を包むパッケージ袋やプリンの容器など、ナフサ由来の包装材が手に入らなくなったといいます。
普段仕入れを行っている問屋に問い合わせてみると、普段使っているパッケージ袋は在庫切れで、入荷時期も未定だといいます。
ムノさん
「物は入ってこないし、入ってきたと思ったら信じられない歩幅で値上げしている。まぁ…つらいかな…」
身の回りのあらゆるものに影響を及ぼす“ナフサショック”。21日に高市総理は「流通過程において物資の目詰まりが発生しています」と述べました。
政府は「年を越えて安定供給できる見込み」としていますが、目詰まりなどが起きていて、こちらの洋菓子店までは届いていません。
石油から精製されるナフサは、石油化学メーカーでパッケージ袋の元となるプラスチックに形成されます。それが加工工場に送られ、パッケージの袋や容器が出来上がり、卸業者を通し店舗に届きます。この一番「川下」にあたるのが洋菓子店などです。
では、一体どこで目詰まりしているのでしょうか。
費用上がるも製造数は変わらず
多くの洋菓子店などが仕入れている包装用品を取り扱う問屋「本間商店 包装店」を取材すると、欠品中や入荷未定のものがあるなど品薄の状態が見て取れます。さらに「原材料不足によりお一人様10袋まで」と制限をかけている商品もありました。
本間商店 包装店
「2カ月ほど前から値段が高騰していて、メーカーからは一部商品の仕入れを断られることもあります」
問屋が仕入れているのは「プラスチック加工メーカー」。川中にあたる福岡県の加工メーカーを取材しました。
丸本 西川暁大社長
「前年の実績と同じ量であれば、確実に入ってきて。供給自体は現時点では全部そろっている」
原材料の費用は上がっているものの、製造の数自体は“去年と変わらない”といいます。
西川社長
「これ予測なんですけど、モノ(ナフサ由来のプラスチックなど)は足りている。足りているけど、たくさん注文すると皆さんパニックになるじゃないですか。パニックを防ぐために、少しずつ出していただいているのかなと」
塗装業界「入手できない」
ナフサショックは塗装業界にも…。
株式会社円谷美装 円谷琢磨代表
「シンナーがないので注文してもその注文も受けてもらえないような感じなので、先が本当に見えないので困っているという状況ですね」
住宅などの塗装を行う東京・目黒区の「円谷美装」では、塗料を薄めるためのシンナーが不足しているといいます。
円谷代表
「頼んでも入ってこないような状態で、ホームセンターに駆け込んでいる業者もかなり多い。どこに行っても買えないっていうのが現状ですね」
シンナーや塗料だけでなく、養生で使うテープやシートといったナフサ由来の製品も手に入らないといい、事態は深刻だと話します。
円谷代表
「材料がないので施工できない、売り上げにもつながらないので耐えられないと。実際にもうたたまれている会社もいますし、結構ダメージは会社としては大きいですね」
石油から精製されたナフサ、そこから石油化学メーカーによってシンナーの原料となるトルエンやキシレンができます。
シンナーメーカーでシンナーとなり、その後、卸業者などを介して利用者である塗装事業者の手にわたります。
21日、川下の塗装事業者のもとに、シンナーの卸しにあたる業者が訪れていました。
円谷代表
「もう頼めない状況?」
荻野化成株式会社 曽根直哉さん
「確認してて受注が再開してないんで、『もうちょっと待ってください』とメーカーから言われている状態で…」
円谷代表
「それはいつ?」
曽根さん
「分からないです、納期が」
円谷代表
「全く分からない?」
曽根さん
「全く分からないです」
円谷さんによると、これまでは代替となる別の溶剤を使っていたといいますが、入手できたのは一斗缶でわずか4缶。価格も普段使用するシンナーの2倍だったといいます。
代理店の曽根さんによると、供給不安からシンナーの製造メーカーに注文が殺到してしまい、受注が停止。そのため商品が全く入ってこなくなったといいます。
曽根さん
「一時期は完全にストックがゼロになっちゃった時もあって。在庫が入ってきてやっとお出しできたとしても、また(在庫が)全部ゼロになっちゃったりっていう状態が続いています」
円谷さん
「みんな結局焦っちゃって買いだめしちゃうんで。結局そのナフサで違うものも入ってこなくなるんじゃないかってことで、みんな焦って注文して、注文がたまりすぎて製造が追いつかない」
川上と川下に“認識のズレ”
では、シンナーは一体どこで目詰まりを起こしているのでしょうか。
次に話を聞いたのは、原料を仕入れてシンナーを製造するメーカーです。
21日、複数の製造メーカーに話を聞きました。
シンナー製造A社
「発注しても発注数通りに原料が入ってこなかったり、(入ってくるまでに)時間がかなりかかっている。石油化学メーカーも現実にはナフサが足りていないから、我々加工メーカーに原料となる溶剤が回ってこないのではないか」
原料の溶剤がなかなか入ってこないために、シンナーの生産量が一時低下。
シンナー製造B社は「現状新規の注文は止まっているものの、すでに受けている注文分については供給が再開されています」としていて、今月に入ってから一部の商品で供給が再開されたといいますが、新規に注文を受けられる状態までには至っていないといいます。
最後に話を聞いたのは、ナフサからシンナーの材料となる溶剤を精製する川上の石油化学メーカーです。
石油化学メーカーA社
「当社はナフサも調達していますが、今のところナフサが足りなくて供給できない状況には全くなっていません。当社では目詰まりは起こっていません」
石油化学メーカーB社
「ナフサが不足しているという認識ではなく、前年実績並みの供給量を維持しております。ただ価格は高水準で、供給環境が完全に平常化したわけではありません。そのため無理に増産するのではなく、現在の稼働率を維持しながら安定供給を優先していく考えです」
川上にあたる石油化学メーカーから聞こえてきたのは、「目詰まりは起きておらず、供給は維持されている」という回答。一方で、川下にあたる現場からは「シンナー不足」の声が聞こえてきます。
円谷代表
「報道で言われている『ナフサはある』。確かにあるのかもしれないんですけど、現場、建設業では現場に材料が届いてないのが本当の現実なので、僕たちとしては、この業界としては、本当に結構まずいようなことにはなってます」
(2026年5月22日放送分より)
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