■結局、ナフサは足りている?足りていない?
“ナフサ目詰まり”について高市早苗総理は5月25日、「ナフサ由来の石油製品は年を越えて供給継続が可能だ」「流通過程における買いだめや売り惜しみなどに対しては、目詰まり解消のための取り組みで懸命に対処している」と説明した。
前環境大臣で、参議院経済産業委員会に所属する、自民党参院議員の浅尾慶一郎氏は、「結論から言うと、いっぱい買っている人のところには確実に行っているが、少ないところに行っていないケースがあるのが実態だろう」と説明する。
対策として、「工夫している人は、同じ規格の塩ビ管を韓国から日本へ持ってきて、建築確認を取っている。韓国はイラン情勢が変わる前の値段で日本に供給している。国としては、そうした後押しをしっかりやらないといけない。韓国から入れば、多く買っていたり、供給を抑えていたりする所が『出さないと』となる。総量は足りているのは事実だ」と語る。
建設産業最大の労働組合「全国建設労働組合総連合」の東京都連合会で執行委員長を務める山本享氏は、「塗装業としてシンナー不足は承知している。マンションの外装工事では、最初に防水材が入ってこなくなった。4月に発注したが、5月末の今も返事がない」との窮状を明かす。
現場では「外壁を塗っても、屋上の防水がいつになるかわからないため、足場を解体できない。金銭面でも、契約の手付金や中間工事金はあるが、完工しないとお金をいただけない」といい、「連休前には『5月いっぱい休んだらバカみたい』と笑っていたが、連休明けには困り果てた。今は屋根の防水ができないため、足場を組まなくなった。仕事が始まらない状況だ」と嘆く。
業界内でも差はあるようだ。「大きな会社は、材料メーカーから直接仕入れている。メーカーも受注高が高いため、優先的にそちらへ回す。私の所は職人が約10人いるため、ちょっとはマシだ。取引している材料屋は3件あり、一番大きいところは、私たちより上の塗装屋と付き合っているため材料が来ない」。
資金面は「コロナ禍で融資を受けた会社の中には、払い終えていないところも多い。新規の融資を持ちかけても、信用保証協会の審査は厳しいらしい。倒産で焦げ付いている企業が多いためだ」と話す。
また、価格高騰の余波で「一般客がホームセンターで断熱材を買い、半分に切ってもらい、ネットで少し高めに転売している。我々が材料屋から仕入れられず、ホームセンターに行くと、店員が『一般の方が買って帰る』と言っていた」といった経験を明かす。
全国2500以上の病院が加盟する全日本病院協会の神野正博会長は、「政府が医療に優先的に供給してくれているのには感謝する。ただし物に不足はないが、価格は上がっている。卸や物流業者は『あなたの病院で使っている量は保証するが、それ以上の発注は断る』と話している」と語る。
医療現場では「使う物資は、ほぼ使い捨てで石油製。一部の部品は東南アジアで作られているが、メイド・イン・ジャパンだ。薬の包装材なども、一部東南アジア製を使っている。日本国内より、グローバルなナフサ不足が業界に効いてくるだろう」との危機感を募らせる。
そして、「透析の膜はメイド・イン・ジャパンだが、患者と膜をつなぐ回路は、ほぼベトナムやタイ、中国製。そこが目詰まりすると医療ができない。日本国内が足りても安心できない」と気をもむ。
「かつて手術時のガウンやマスク、帽子は布で、血が付いても消毒して再利用していた。しかし今は、患者の安全や感染防止に加えて、経済性から使い捨て中心になっている。医療だけではないが、政府はリサイクルを呼びかけないといけないのでは。『足りているか、足りていないか』の前に値段が上がっている。それはどこかで目詰まりしているからだ」。
浅尾議員は「目詰まりが一番起きているのは、小さな企業だ。そこをどうしたらいいかを考えないといけない。使い捨てについては、ペットボトルはリサイクルしているが、ゴム手袋はしていない。これをできるようにする技術を高める。サプライチェーンを1カ所に依存すると、今回のようなことが起きるため対策したい」とした。
■政府の介入、今後の見通しは?
