国民民主党の榛葉賀津也幹事長は16日の参議院外交防衛委員会において、日本の海を守る水産庁の漁業監督官の過酷な任務実態を明かし、その待遇改善などを強く訴えた。
榛葉氏は質問の冒頭、前日に一部野党議員から自衛官やその家族、そして将来自衛官を目指す子どもたちを愚弄する発言があったとして、「あまりにもひどい職業差別であると同時に、我が国の安全、外交防衛政策をねじ曲げかねない印象操作をするような言動もあった。強く抗議を申し上げたい」と述べた。その上で、海上自衛隊や海上保安庁と同様に、最前線で日本の海を守っている水産庁の漁業監督官の仕事について質疑に入った。
水産庁の高橋広道漁政部長は、漁業監督官の具体的な職務について、漁業法に基づき、漁業に関する法令の励行に関する事務を司っていると説明した。全国の漁業調整事務所のほか多くの漁業監督官が漁業取締船に配属されており、日本の水域での外国漁船などの違法操業を防止するための監視活動、必要に応じた立入検査や拿捕などを行っていると答弁した。また、漁業取締船には国が所有する「官船」と民間船を借り上げる「用船」があり、本年度は建造中の1隻を含め官船9隻、用船37隻の計46隻が全国に配備されている。漁業監督官の配置人数は、官船では1隻あたり20人から30人程度、用船には若干名が乗船している。
ここで榛葉氏は、ほぼ同じ仕事をしているにもかかわらず、官船の漁業監督官には海事職俸給表、用船の漁業監督官には行政職俸給表が適用され、俸給に差がある点を指摘した。さらに、不法な漁民を拿捕・逮捕する権利を持った極めて厳しい任務に当たっているにもかかわらず、いずれの漁業監督官にも「公安職」の俸給表が適用されていない問題を追及した。
これに対し、人事院事務総局給与局の植村隆生次長は、公安職俸給表は警察官や海上保安官など治安の確保に関わる職務に従事する職員に適用されると説明した。漁業監督官は漁業に関する法令の励行を目的とする職務であり、司法警察員としての漁業に関する犯罪捜査は職務に付随するものにとどまるため、公安職俸給表は適用されていないと述べた。榛葉氏は「現場で命をかけている監督官にしたら相当厳しい任務だ。警察官や海上保安官と何も変わらない」と反論。厚生労働省の麻薬取締官が特別措置として調整手当を付与されている例を挙げ、漁業監督官にも同様の特別措置を講じて現場の生活やプライドを守るべきだと主張した。植村次長は、適正な処遇の確保は重要であるとした上で、「水産庁から要望されている手当の拡大などについて、実情を伺いながら必要な検討を行っていく」と回答した。
また、榛葉氏は漁業監督官の装備や安全性のリスクについても切り込んだ。尖閣諸島周辺水域では水産庁と海上保安庁が連携して外国漁船の違法操業防止に当たっているが、榛葉氏は「漁船を装って政治的意図を持った偽装漁船(海上民兵)が上陸を試みるリスクは否定できない」と指摘し、小泉進次郎防衛大臣に危機感の共有を求めた。小泉防衛大臣は「共有する。あらゆる事態に対応すべく、緊密な連携をこれからもやっていく」と応じた。
装備の実態について、高橋部長は、自己防衛のための装備として防塵防弾や救命胴衣などは保有しているが「武器は携帯していない」と答弁した。榛葉氏は、現場の船長から「こん棒とヘルメットと盾を持って対応している」と聞いた実態を明かし、用船には非武装の民間人も10数名乗船していることから「非武装で本当に(相手の拿捕や民間人を守ったり)できるのか」と懸念を示した。山下雄平農林水産副大臣は、武器携帯については職員の訓練や船上での保管管理体制などの課題が多く、慎重に検討していく必要があるとし、現在は安全を脅かす事態には海上保安庁と緊密に連携して対処していると説明した。さらに、逮捕術や制圧術の教育訓練について、高橋部長は、海上保安庁などの訓練に参加しているものの、航海スケジュールの兼ね合いから不定期かつ回数が限定的になっているとして、今後のあり方を検討すると述べた。
最後に榛葉氏が取り上げたのは、漁業取締船の洋上環境と通信インフラの課題だった。一度任務に出ると1カ月から1カ月半は陸に帰れず、24時間体制の緊張感が続く中、職員にとって数少ない休息時間の娯楽である動画視聴などが、脆弱なWi-Fi環境によって制限されている実態を指摘。「1人7ギガしかなく、メールを送って終わりという状況だ。船の上のストレスが大きくなると職を離れていってしまう」と述べ、洋上環境の改善を求めた。高橋部長は、運航する官船に海上向け衛星通信サービスを導入してきたものの、取締りの秘匿性を確保する観点から一定の制約があるとした。その上で、若い船員を中心に洋上の通信ニーズが高まっていることを鑑み、今後の環境改善に努める意図を示した。
山下副大臣は「漁業監督官が相当なリスクを背負って職務に当たっている一方で、俸給や手当、調整額の面で、海上保安庁の皆さんと比べて胸を張って引けを取らないと言える状況でないことは重々承知している」と述べ、人事院の理解を得ながら処遇改善と人員確保に努力する姿勢を強調した。榛葉氏は、委員会に出席していた茂木敏充外務大臣や小泉防衛大臣らに対し、水産庁で頑張る職員を守ってほしいと呼びかけ、質問を締めくくった。
(ABEMA NEWS)

