
G7に出席しているアメリカのトランプ大統領は、イランとの戦闘終結に向けた覚書に両国の代表が署名したと明らかにした。ただ双方が「勝利」を主張しており、ホルムズ海峡の開放や核問題を巡る主張のずれが浮き彫りになっている。
ホルムズ海峡巡り食い違い
「アメリカを譲歩させた」と「勝利」をアピールするイランだが、政権内部や市民の間で意見の対立も指摘されている。
まずは、ホルムズ海峡の開放に向けた動きを見ていく。
トランプ大統領は15日、自身のSNSに「ホルムズ海峡から多くの船が動き始めている。船団は完全に安全で安心でき、何の問題もない」などと投稿。ホルムズ海峡の封鎖は解除されつつあるとアピールしている。
しかしCNNは、船舶の動向を追跡する分析会社「ケプラー」のデータをもとに、現在ペルシャ湾に足止めされている220隻のタンカーと船舶全般でおよそ500隻に顕著な移動は確認されていないと報じている。
こうした状況を受け、フランスのマクロン大統領は米仏首脳会談の中で、ホルムズ海峡に空母や戦闘機などを2~3日以内に派遣し、船舶の護衛などによって安全な航行の維持に貢献する意向を示したという。
またホルムズ海峡周辺にはイラン側が敷設したとされる機雷があり、その除去が必要とみられている。
ロイター通信によると、日本、イギリス、フランス、ドイツ、イタリアなど9カ国の首脳が、各国の憲法上の要件に従うことを前提に「機雷除去作業を実施するための防衛的任務を通じて役割を果たす」とする共同声明を発表したという。日本も協力を求められているということだ。
核問題なお不透明
アメリカとイランは、ホルムズ海峡の開放を巡って互いに勝利をアピールしているが、その中でポイントになるのが通航料だ。
トランプ大統領は14日、ニューヨークタイムズのインタビューで「ホルムズ海峡の通航は恒久的に無料になる」と述べている。
しかしイランのメヘル通信は、アメリカ側が直前になって譲歩した合意内容として、ホルムズ海峡の通過管理や提供されるサービスに関連する料金の徴収はイランとオマーンに委ねられると伝えている。
またイランのファルス通信も、最終合意に向けた交渉が行われる今後60日間のみ船舶の無償通過を認めるが、それ以降はイランが料金を徴収し、経済発展の支援に充てる予定だと情報筋の話として伝えている。
では、イランの核問題はどうなるのだろうか。
アメリカが攻撃に踏み切った大義名分の一つが、この問題だ。トランプ大統領は15日、覚書について、イランが核兵器を保有しないことに同意したなどとして「世界に多くの成功をもたらす」と強調した。
しかしメヘル通信によると、イラン外務省のバガイ報道官は「我々は覚書で核計画の詳細について言及していない」としており、「核問題とその見返りとしての制裁解除の両方について60日以内に協議を行うことで合意している」と話しているという。
ただCNNは、アメリカの諜報(ちょうほう)に詳しい情報筋の話として、イランは査察や回収を逃れるためか、ここ数週間でウランの貯蔵施設を封鎖する動きを加速させていると報じている。
具体的には、トンネルを意図的に崩落させたり入り口に地雷を仕掛けたりするなど、貯蔵施設の要塞化を進めているとの見方も伝えている。
対米合意で国内対立
イラン国内では意見の対立も指摘されている。
イランは戦闘後も体制を維持しているが、ニューヨーク・タイムズによると、イランの権力構造に変化が生じているという。革命防衛隊が中心となる集団指導体制に移行し、強硬路線を追求するようになっているようだ。
またアメリカのシンクタンク「湾岸国際フォーラム」によると、ハメネイ師の死後、対米政策などを巡ってイラン指導部の内部対立が激化しているという。
そんななか、アメリカとの合意に踏み切った背景には経済の悪化を指摘する声もあるとみられている。
アルジャジーラによると、イラン当局はアメリカとの戦闘によって日本円でおよそ43兆円もの損害が出ているとの推計もある。
またCNNによると、イランの労働当局はおよそ100万人が失業したとみており、ロイター通信は経済危機が長引けば去年末から起きていた大規模な反政府デモが再び起きる可能性も指摘している。
さらにSNSに投稿された動画には、イランの首都テヘランで「ガリバフ!アラグチ!我が指導者の血をどうするのか」と、強硬派の市民が交渉にあたっているガリバフ国会議長やアラグチ外相を名指しで批判。アメリカとの合意に反対してデモを行う様子が映っているという。
レバノンで応酬続く
アメリカとイランの合意がうまくいくのか、不安定要因となっているのがイスラエルの存在だ。
イランメディアが報じた覚書の合意内容には「レバノンを含むすべての戦線で即時かつ恒久的に戦闘を停止する」とある。
一方、アメリカ側はレバノンでの停戦が合意に含まれるかどうかについて言及していない。
こうしたなか、合意後もイスラエル軍はレバノンの複数箇所を攻撃し、レバノンの親イラン武装組織ヒズボラとの応酬が続いている。
イスラエルの動向がアメリカとイランの合意の障害になる可能性もある。
イスラエルのベングビール国家治安相は自身のSNSに「合意は我々を拘束するものではない。イスラエルはアメリカに従属する国ではない」と投稿し、アメリカとイランの合意に反発している。
またネタニヤフ首相も15日「トランプ氏とは意見が食い違うこともある」と述べ、レバノンからの撤退を否定した。
こうしたイスラエルの動きに対してトランプ大統領は16日、「(ネタニヤフ首相は)より責任ある対応をすべきだ」と発言した。
また茂木外務大臣も16日、イスラエルの外相との電話会談でレバノン情勢についてイスラエルに最大限の自制を求めるとしている。
(2026年6月17日放送分より)
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