刑法“胎児への被害”認めない…なぜ 妊婦死亡事故で“実刑判決”禁錮2年6カ月

刑法“胎児への被害”認めない…なぜ 妊婦死亡事故で“実刑判決”禁錮2年6カ月
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去年、愛知県一宮市で、妊娠9カ月の研谷沙也香さんが、車ではねられ、死亡しました。事故のあと、緊急の帝王切開で生まれた日七未ちゃん(1)は、脳に重い障害が残り、人工呼吸器なしには生きていけません。

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18日、車を運転していた被告に対して、異例の“実刑判決”が言い渡されました。

検察は、沙也香さんを死なせたとして、児野尚子被告(50)を過失運転致死の罪で起訴しました。

当時の状況
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起訴状などによりますと、当時、車は時速30キロ。約80メートル、9秒間にわたって右斜めに走行し、路側帯を歩いていた沙也香さんをはねたとされています。しかし、事故当時、お腹の中にいた日七未ちゃんに対する罪での起訴は見送りました。

刑法の壁
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そこには刑法の壁が立ちはだかります。胎児は、母体の一部とされ、“人”とはみなされていません。母体から外に出て、初めて“人”と解釈されます。

検察の起訴を受け、遺族は、日七未ちゃんに対する過失運転致傷罪の適用を求め、去年8月、署名活動を始めました。

こうした活動の輪が広がり、愛知県議会では、胎児も事故の被害者と認めるよう、国に対し法整備に向けた議論を求める意見書が可決されました。

検察は、公判中、日七未ちゃんへの罪も問えるか、追加の補充捜査を実施しましたが、罪には問えないと判断。ただ、『日七未ちゃんが事故でけがをした』という一文を、起訴内容に加える訴因変更を行いました。

児野被告
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18日、児野被告に対し、禁錮2年6カ月の実刑判決が言い渡されました。

名古屋地裁一宮支部 鳥居俊一裁判長
「何ら落ち度のない被害者は、若くして、突然、命を奪われた。被害者が夫婦で誕生を心待ちにしていた我が子を抱くこともできずに、この世を去る無念は計り知れない。当然ながら、被害者遺族の処罰感情は峻烈である」

執行猶予がつかない異例の判決。過失運転致死事件の場合、実刑の割合は4.7%。実に、95パーセント以上のケースで、執行猶予付きの判決が言い渡されています。

そして、遺族側が希望していたことが現実になりました。

名古屋地裁一宮支部 鳥居俊一裁判長
「順調に生育していた胎児、出生後の氏名は研谷日七未」

法廷で2度、日七未ちゃんの名前が読み上げられました。

日七未ちゃんの父親 研谷友太さん
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日七未ちゃんの父親 研谷友太さん
「まず、勘違いをしてほしくないのは、娘の過失運転致死傷罪での立件を求めたことについては、相手の量刑を重くするために求めていたわけではなく、あくまでも娘は、一人の人間として、人として認めてほしいという思いでやっていました。起訴されなかったけれども、娘が、ちゃんと被害者として扱われた部分は、ほっとしました。よかったなと思っています。量刑の酌量のところにしっかり裁判官の方も考慮をしてくれた。ある意味、これは大きなことだと思います」

日七未ちゃんの祖父は、今後、胎児が交通事故などで被害にあった場合の法整備に向けて、活動をしていきたいとしています。

日七未ちゃんの祖父 水川淳史さん
「今後、また私たちみたいな被害者が出る可能性もあるわけですから、私は、引き続き、法改正に向けて動いていこうと思っています。それをすることによって、悲しみがまぎれるというのはおかしいですが、一生懸命やっているのを娘・孫に見せたい」

今回の量刑には、事故当時、沙也香さんのお腹にいて、重い脳障害を負って生まれた日七未ちゃんに対する遺族感情も反映されていますが、日七未ちゃんの被害に対する立件はされませんでした。

◆その理由について、交通犯罪に詳しい立教大学の小林憲太郎教授に聞きました。

小林憲太郎教授
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小林教授は「刑法上、胎児は母体から外に出て初めて“人”と解釈される。つまり、胎児は人ではない。だから、被害者にもなれない。交通事故で胎児が死傷しても、原則として罪に問われない」と話します。

なぜ、法律上、そういった考えをしているのでしょうか。

小林憲太郎教授
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小林教授は「胎児を傷害罪の被害者として認めると、さまざまな難しい問題が起きてしまう。例えば、出産時のトラブル。医師が傷害罪の対象となってしまう懸念があったり、適法な人工妊娠中絶でも、妊婦が、お腹の中の独立した人間を殺す、殺人行為だという位置づけになってしまう」といいます。

ただ、日七未ちゃんの家族は、胎児が被害を受けた場合でも、その子を救済できるような法整備を望んでいます。現実的にどのようなことができるのでしょうか。

愛知県議会は、交通事故などで被害を受けた胎児に係る法整備についての意見書を国に提出しました。国会でも取り上げられています。

小林憲太郎教授
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こうした法整備について、小林教授は「胎児を人と認めるかどうかの議論ではなく、交通事故に“限定した法律”の見直しを図るべき」としています。具体的には「交通事故で妊婦を死傷させたり、結果として胎児が死産したり、障害を負ったりした場合に通常の過失運転致死傷罪よりも重い刑罰を科すことを明文化すること」などが考えられるということです。

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