
高齢者が年齢を理由に賃貸物件への入居を断られるケースが増えてきています。アパートの老朽化で今月中の立ち退きを求められ、部屋探しをしている高齢の男性を取材しました。
突然の退去通告
都内で一人暮らしをする狩野晃男さん(74)。月およそ7万円の年金とスーパーのアルバイトで生計を立てています。
狩野晃男さん
「出口のないトンネルみたいなもんで、迷い込んだなぁみたいな感じ」
若いころは専門誌の記者として働いていましたが退職、35年前に離婚しました。
「私が家庭向きな男じゃなかったんですよね。自己中で好きなことばっかりやってね。車とかバイクとか随分お金つぎ込んで、ダメ人間なんですよ」
後悔を抱えつつ、一人で暮らしてきた狩野さん。自宅に手紙が届いたのは2年前。
狩野さんに届いた手紙
「建物が築40年以上になり朽廃し、きわめて危険ですので二年以内に本室の明渡しの御協力をお願い致します」
30年以上住んでいたアパートの大家から立ち退きを要請する手紙でした。
狩野さん
「青天のへきれきでした。さてどうしようかって」
そこから家賃の安い都営住宅に4度応募しましたが、すべて落選。当選確率が高いだろうと、いわゆる事故物件にも応募しましたが3月、落選の通知が届きました。
大家から告げられた立ち退きの期限は6月中。
狩野さんは、都営住宅を諦め、民間の不動産仲介業者で家を探すことに決めました。
ところが、ここでも思わぬ壁が立ちはだかることに…。
年齢を理由に“拒否”
この日、都内で家を探すことにした狩野さん。
「(家探しは)面白い。変な言い方だけど」
期待を胸に、不動産の仲介業者へ。
「狩野と申しますけど、(物件を)探しているんです。金町駅か亀有駅の周辺で。73歳なんですよね」(取材当時)
自身の年齢や希望の物件を伝えますが、その直後、店から出てきました。
「該当なしだそうです。ネックありますからね、年齢と、あと独り者」
65歳以上という年齢に加えて、一人暮らし。
物件を見せてもらえず、入店からわずか1分で断られてしまいました。
「上品な門前払いですね。失礼ではないんですけど『ないですね』みたいな一言で。『うちは扱ってないですね』みたいな」
続いて向かったのは、大手の不動産仲介業者。しかし、ここでも…。
「そもそも65歳以上はダメですよという大家さんが多くて、かなり狭まるらしいんですね」
狩野さんの求める条件は1DK以上で月7万円以下の家。担当者は条件に合う部屋を探して大家に電話してくれたそうですが、年齢を理由に断られました。
その後も狩野さんは不動産の仲介業者を回り、合わせて4店舗を訪れましたが条件に合う物件は見つかりませんでした。
「がっかりしかないですよね。やり切れなさというか、無力さというか」
オーナー「孤独死が不安」
高齢者が家を借りられない現実。
ある不動産仲介業者の調査によると、65歳以上の高齢者のおよそ3人に1人が年齢を理由に入居を拒否された経験があり、その数は増え続けています。
国交省の調査では、高齢者の入居に拒否感を示した大家は7割に上りました。その主な理由が…。
不動産オーナーの女性
「孤独死の問題があって、その後の原状回復とかにかなり苦労されている話も聞きますので、そういった問題がやっぱり心配かなと思いますね」
不動産オーナーの女性
「孤独死されるのは高齢の人には限らないんだけれども。高齢の方っていうのはその辺のリスクが高いかなとは思いますので、それが怖いですね」
仮に居室内で孤独死が起きた場合、原状回復にかかる費用は最大で750万円と言われ、その費用を大家が負担するケースも少なくありません。
また入居者が残した持ち物の処理に関わる問題や、事故物件になった場合に家賃収入が減ってしまう問題も、高齢者が入居を断られる要因となっています。
78歳新居探しをサポート
そんな高齢者をサポートする人たちが…。
都道府県の指定を受け、住宅を借りることが難しい人に対し、住まい探しの支援を行う居住支援法人です。
この団体では介護福祉士や宅建の資格を持つ4人の職員が高齢者の入居相談から転居に至るまで一貫して支援しています。
高齢者住まい相談室こたつ 松田朗室長
「単身の高齢者で頼る人がいない(身寄りがない)方が多いですね。大家さんもこの方に何かあった時に『誰に言えばいいの?』『誰が面倒を見てくれるの?』という心配があるので、そこをどうやって大家さんや管理会社の方に安心してもらえるか、その手配をどうするかということを考えるわけですね」
この日、スタッフが訪れたのは、78歳の男性が暮らす都内のアパート。
築40年、老朽化を理由に男性は半年前、大家から立ち退きを求められました。しかし、78歳の男性は、一人で家探しをしましたが、年齢を理由に不動産の仲介業者から何度も断られたと言います。
さらに身近に頼れる親族などがおらず、身元保証人や緊急連絡先を頼める人がいないことも物件を借りられない要因に…。
新居が見つからず途方に暮れていた時、役所を通じて紹介を受けたのがこの団体でした。
高齢者住まい相談室こたつ 吉田岳史相談員
「こちらの物件、見られてどうでしたか?感想は」
男性
「いいですね」
吉田相談員
「良かったです。内容も特に問題ないですか?」
男性
「問題ないです」
吉田相談員
「良かったです」
立ち退きの期限まで3週間を切ったこの日、男性はようやく物件の契約にこぎつけました。
団体の紹介を受けてからおよそ1カ月。なぜ新居がすぐに見つかったのでしょうか。
身元保証の会社も選定
実は団体では男性の新居を探すのと同時に、緊急連絡先などを引き受けてくれる身元保証の会社も選定。
こちらの会社では契約金5万5000円を支払うことで緊急連絡先となってくれるほか、亡くなった際には遺体の引き取り代行なども行ってくれます。
男性がこの保証サービスと契約することを条件に不動産の仲介業者が物件を紹介してくれたのでした。
終活コンシェルジュ相談員
「お亡くなりになった時は駆け付けてご遺体を引き取りますし、このアパートの解約の手続きから明け渡し、水道光熱費の解約とか。お亡くなりになった後のことはすべて行いますので、それで多分、大家さんのほうも少し安心できるんじゃないかな」
そのほか役所で行った転居手続きの同行サポート費などがおよそ7万5000円。家賃が支払えなくなった場合の家賃債務保証およそ2万円など、まとまったお金が必要になります。
それでも高齢者が1人で探すのは負担が大きく、男性は助かったと話します。
男性
「1人じゃ、どうしたって『いいや、あしたにしよう』って(なるから)。助かりますよ」
立ち退きまで10日
物件の契約から1週間。急ピッチで作業を進めるのは居住支援法人が手配した引っ越し業者。
男性
「(Q.ようやく引っ越しですね)そうですね」
「(Q.1人だと片付けも難しい?)片付けが下手だから、しょうがないね」
サポートを受け、男性は立ち退き期限までに何とか新生活を整えられました。
「みんながやってくれて助かりますね」
後日、男性は緊急時に駆け付けてくれる警備保障会社とも契約しました。
最近ではさまざまな見守りサービスがあることで高齢者が孤独死するリスクも軽減され、理解を示す大家も出てきているといいます。
松田室長
「これからまだまだ高齢社会で高齢者が増えていくんですよね。仮に(入居者が)亡くなったとしても、すぐに発見できる態勢を作っておく。そういった形で大家さんが安心してもらえるようなことをやっています」
(2026年6月19日放送分より)
この記事の画像一覧
