
アメリカとイランの最終合意に向けた協議が今週末にも始まる見通しだ。覚書の合意内容が実現すれば48兆円の復興支援など巨額の資金がイランに入ることになる。
週末にも協議か 最終合意は?
当初の予定から2日早い署名となった。
トランプ大統領は17日にパリ近郊のベルサイユ宮殿で、日程を2日前倒して、戦闘終結に向けた覚書に署名したことを明かした。
ベルサイユ宮殿といえば、1919年、アメリカのウィルソン大統領(当時)が、第1次世界大戦を正式に終結させたベルサイユ条約に署名したことでも知られる場所だ。
また、イラン国営メディアも、ペゼシュキアン大統領が覚書に正式に署名したと伝えた。
覚書の効力はすでに発生していて、アメリカのバンス副大統領によると、最終合意に向けた協議が今週末にも始まる見通しだという。
交渉チームは、アメリカ側がバンス副大統領で、イラン側がガリバフ国会議長だ。ただ、バンス氏は、スイスで予定されている協議への自身の訪問については、「正確な時期は未定」としている。
核開発・ミサイルは?
戦闘終結に向けた覚書は、“イラン寄り”とも指摘されている。
この覚書は正式には「アメリカとイラン・イスラム共和国との間のイスラマバード了解覚書」と題されていて、合意内容は14項目にわたる。
主なものを見ていく。
1つ目は、「アメリカとイラン及び現在の戦争における両国の同盟国は、レバノンを含むすべての前線での軍事行動を即時かつ恒久的に終了することを宣言する」とある。この同盟国には、イスラエルも含まれているという。
3つ目は「双方の合意により延長可能な、最大60日以内の最終合意を交渉し、達成することを確約する」。この交渉期限について、トランプ大統領は柔軟な姿勢を見せていて17日には「イランがおとなしくしている限り、(期限は)それほど重要ではない」と話している。
注目のホルムズ海峡の開放については「アメリカは、海上封鎖を30日以内に完全に終了」「イランは、商船の安全な通航を60日間に限り無料で確保。30日以内に通航を正常な状態に戻す」
一方、核開発について結論は最終合意に先送りになった。また、ミサイルやヒズボラを含む親イラン武装組織の扱いについてはそれぞれ言及がなかった。
制裁解除で流れる巨額資金
そして、覚書の効力が発生したことで、イランには巨額の資金が流れるとみられている。
まず、イランの主要産業である石油輸出の制裁解除によるものがある。
14項目の7と10に書かれていて、ウォール・ストリート・ジャーナルが伝えたアメリカの元制裁担当官の試算によると、イランは制裁解除によって年間600億ドル、日本円で約9兆6000億円以上の収益が今後見込まれるという。
また、項目11では、イランの資金の凍結を解除するとしている。これは石油の販売代金など、各国の銀行口座に入っているイランの資金を使えるようにするというものだ。ウォール・ストリート・ジャーナルが伝えたところ、その額はイラン政府の主張では最低1000億ドル=約16兆円に上るという。
得られた資金をイランはどう使うのか?ウォール・ストリート・ジャーナルによると、イラン革命防衛隊のバヒディ最高司令官は、「解除される凍結資金を軍事費に充てることを禁止するべきではない」と主張したという。
またアメリカの戦争研究所は、イラン外務省のバガイ報道官が先月「ミサイルやドローン計画を含む防衛・軍事部門の発展に利用する」と発言したと伝えている。
基金 日本企業も拠出
48兆円に上る復興支援を巡っては、日本の企業も資金を拠出するという。
アメリカ軍は、攻撃開始から約6週間でイラン国内の1万3000カ所以上を攻撃したと発表した。アメリカとイスラエルの攻撃目標の中には、地図にあるように、空港、製鉄所、石油関連施設など民間インフラも含まれていた。
こうした状況の中、ロイター通信によると、イラン政府は当初、4000億ドル(約64兆円)の賠償金を要求していた。アメリカ側はこれを認めず、覚書には「アメリカは地域のパートナー諸国と協力し、イランの復興と経済発展のための3000億ドル(約48兆円)規模の計画を策定する」として、基金の創設が盛り込まれた。
その中身はロイター通信によると、アメリカ政府の資金や援助を含まない純粋な民間投資によるもので、アメリカや湾岸諸国など各国の企業が投資を確約している。その中には、日本企業も含まれるという。融資や直接的な資金提供などを通して、攻撃で被害を受けたインフラ全般の復旧を支援していくとしている。
そんな中、復興需要への期待感が背景にあるのか、すでに日本の建設会社の株価の上昇が目立っているという。
共和党内からも批判の声
ただ、こうした合意に対し、トランプ大統領の過去の“オバマ批判”がブーメランとなって跳ね返ってきている。
トランプ大統領は、オバマ政権が2015年にイランと結んだ核合意を批判し、1期目在任時一方的に離脱をした。この時にやり玉に挙げていたのが、合意によりイランに資金が流れ込むことだった。
核開発制限の見返りとして、推計約500億ドル、現在のレートで約8兆円の凍結資金の解除を認める内容だった。数字の根拠は不明だが、トランプ大統領は新聞への投稿で、「イランは1500億ドル、約24兆円の“棚ぼた”を手に入れ、それは間違いなくテロ活動の資金になる」と主張していた。
こうした背景もあるからか、今回の覚書の合意には共和党内からも批判の声が上がっている。
テッド・クルーズ上院議員は自身のSNSで、イランへの3000億ドルの支援は、「信じられないほど愚かなアイデアであり、到底容認できない」と述べている。
(2026年6月19日放送分より)
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