
19日午前11時ごろ、東京・北区の滝野川第三小学校で火事が発生しました。

逃げ場を失った児童や教員たちが、一時、校舎のひさしに身を寄せ、救助を待つ事態となりました。ひさしの上に取り残された子どもたちは、一人ずつ、消防隊に付き添われ、はしごを降りていきます。

火元は、4階の音楽準備室でした。
通報から3時間ほど経った午後1時45分、火は完全に消し止められました。

当時、小学校には、330人ほどの児童がいたといいます。
これまでに児童8人と教員ら大人3人の、合わせて11人がけがをしたり、煙を吸ったりして搬送されました。10歳の男子児童2人が、腕やひじの骨を折る重傷です。40代の女性教員は、骨盤を折りました。
上履きで避難 水着姿の児童も
児童らは、出火から10分もしないうちに、校庭や、すぐそばの飛鳥山公園に避難しました。
子どもたちは、ハンカチで口を覆って、ほとんどが防災頭巾をかぶっています。足元を見てみると、上履きのまま避難したようです。

学校に戻ってきた児童のなかには、水着姿の子もいました。水泳の授業中に火事が起きたそうです。
火が出た4階にいた児童が話を聞かせてくれました。
4階にいた児童
「(Q.どこを通って避難した)僕は、いつも使っている階段から駆け足で下りました。音楽準備室は炎が出ていて、音楽の先生が小さい消火器で消火していった」
4階から出火 ひさしに一時避難も
学校の4階にある音楽室では、当時、5年生が授業中でした。そこに、火災報知器が鳴り響きます。同じ4階にいた担任教師が駆けつけ、隣の音楽準備室の中を見ると、煙と火が出ているのを確認したそうです。

音楽室のすぐそばには階段がありましたが、その時点で、もう避難は困難だったのか。多くの児童が窓から外に出て、ひさしの上で救助を待っていました。

ひさしの上に避難した児童は、当時の状況について、こう話します。

ひさしの上にいた児童
「(Q.みんなの様子は)ざわついていて、死ぬのかという状況。本当に命がけでした。(Q.慌てていた)だいぶ慌てていまして、泣いている子もいました。もう音楽室は煙で満タンでした」
当時、音楽室にいた別の児童です。
音楽室にいた児童
「(Q.先生は何て)『みんなしゃがめ、大丈夫だよ』と。(Qなぜ、ひさしにいた)先生に指示された。(Q.廊下に出るのが危なかったから)危ないし、反対側にも行けなかった。(Q.爆発は何回あった)1~2回。(Q.どんなけがをした)飛び降りて骨折したり。4階から3階に『痛い、痛い』と」
教員らも必死だったようです。

5年生の保護者
「子どもの話だと、最後まで1人の先生が、ずっと学校に残って、走り回って確認して下さっていたそう。そういうこともあったから、多分、早く避難が完了したのでは」
ストーブ?出火原因を捜査中
普段、火の気がないはずの、音楽準備室が燃えたことに情報が錯そうしました。
警視庁によりますと、当初、音楽準備室では、ストーブの点検中だったとの話もありましたが、その情報も違っていたそうです。ただ、使われていなかったストーブから、突然、火が出た可能性があるといいます。
製品の安全をチェックするNITEに聞きました。

NITE製品安全広報課
「石油ストーブが火種のないなか、突然、発火するとは考えにくく、過去にそういった事例もありません。電気ストーブだと、電源プラグにほこりが溜まったり、電源コードが損傷したりして、発火する場合があります」
ただ、この季節、ストーブの電源を指しっぱなしにしていた可能性は低いはずです。
19日夜、学校が会見を開きました。
滝野川第三小学校 高草木政浩校長
「子どもたちも避難した後、テントのところに集めた。かなりショックで、涙をこぼしている子も多かった。本当に厳しいつらい状態だっただろうなと感じている。生きて命を守って、ちゃんと降りて来られたこと。本当にありがたく、うれしく、校長として思った」
ストーブについては、音楽準備室に置いてあったかどうか、まだ確認できていないということです。
音楽準備室から出火 なぜ拡大?
小学校で何が起きていたのでしょうか。

◆いくつもの消火活動にあたってきた元東京消防庁警防部長・佐藤康雄さんに聞きます。
(Q.今回の火事の特徴についてですが、映像を見て、火や煙の勢いをどう見ますか)
元東京消防庁警防部長 佐藤康雄さん
「窓を見ていただくと、アルミの窓が溶けているんです。これは、600度以上の熱にさらされたという証です。普通の鉄ですと、1400~1500度で溶けるのですが、アルミは、その半分、600度で溶けます。相当な火力。しかも、200平米くらいほどが燃えているということですが、普通のマンション一室、平均80平米ですから、2個分くらい。それくらい大きく燃えたということで、昼火事としては、非常に珍しいと思います」
(Q.火元は音楽準備室ということで、普段、火を使う場所ではないですが、これだけ激しい火事になったのはどういうことでしょうか)
元東京消防庁警防部長 佐藤康雄さん
「準備室ということで、いろいろな物が置いてあると思います。音楽室の準備ということですので、音響のために、部屋そのものが木質のもので覆われている。それから、音を良くするために厚いカーテン。こういったものがあった。特に立ち上がり火災というのは、延焼しやすいんですけれど、そういったことに影響するようなものが、たくさん置いてあったのではないかと思われます」

(Q.焼けた部分が4階の部分。最上階ということになります。ここからうかがえる特徴は)
元東京消防庁警防部長 佐藤康雄さん
「最上階ということですので、煙というのは、上に上がるんです。これが、最上階ということですから、周りのところに炎も煙も広がりやすい、溜まって広がりやすい。これが高層階の中階でしたら、煙と炎は上に逃げてくれるのですが、上が塞がれているので横に広がるから、非常に命の危険があったと思います。病院とか学校というのは通路階段が広いというのが特徴ですので、燃えると延焼しやすいという特徴があります」
(Q.廊下や階段を使うことができず、児童は逃げ場を失って、窓から避難するしかなかったというような状況でしたが、その行動は、どのように見ますか)
元東京消防庁警防部長 佐藤康雄さん
「私も、ビデオを見て初めて知ったんですけれど、音楽室と準備室の位置。入り口のところにある準備室が燃えましたので、逃げ場所がなくて、袋小路で火に焼かれたというような状況ですので、まさに、今回は、先生の適切な指示で、よく逃げられたなと。本当に運がよかったと思います」
(Q.窓から生徒たちを出したというのは、急な判断としては妥当であったと)
元東京消防庁警防部長 佐藤康雄さん
「窓というのは、人が倒れないように、おへそに大体、人間、重心があるので、それよりも高くできている。そこを乗り越えると、重心が不安定で、落ちる可能性もあります。そういったことも含めて、先生が適切に臨機の処置で、とっさに判断して、逃がした。だからこそ、子どもたちの命が助かった。これは素晴らしい判断だろうと思います」

(Q.家庭科室や給食室、火を扱う場所を火元にした避難通路というのは想定していたが、音楽室の付近というのは訓練の対象にしていなかったといいます。学校側の対応も変えていくべきなのでしょうか)
元東京消防庁警防部長 佐藤康雄さん
「校長先生が言われているように、音楽室の、しかも準備室から出火というのは、プロの消防官でもなかなか考えられないので、しょうがないとは思いますが、やはり災害というのは、想定していないところから起こるということを、常に念頭においていただいた方がいいと思います」
(Q.スプリンクラーの設置という話は出てこないのですが)
元東京消防庁警防部長 佐藤康雄さん
「消防的に、スプリンクラーというのは、学校の場合、11階以上はつけなくてはいけない。普通は、面積と高さで規制されていますが、学校の場合は、11階以上、面積の規制はないんです。これは4階ですから、スプリンクラーをつける基準はなかったです」
(Q.指導する先生たちは、いろんなことを想定して、順応、対応できるようにしておくことが必要になりますね)
元東京消防庁警防部長 佐藤康雄さん
「まさにおっしゃるとおりですね。頭で考えてもなかなか動けないので、動いて訓練をするというのは大事ですけれども、お子さんは動く、だけど、先生は、今おっしゃられたように、それに加えて、“こういう場合どうだろう”という頭の中でのシミュレーション、脳に汗をかく。そういう訓練も、ぜひ、していただきたいと思います」
