■周辺住民の反対と「迷惑施設」視される火葬場新設の壁
火葬場の不足を解消するために新設や増設を進めるべきだという意見もあるが、現実には地域住民の強い反対運動に直面することが多く、容易ではない。鳥居氏は行政が設けている法的ルールの厳しさが新設を阻む最大の障壁になっていると指摘した。
「東京の場合、火葬場は近隣の建物から250メートル離さなければいけないルールがある。ただこれは、火葬すると煙が出て、近隣の方の迷惑になるかもしれないという公衆衛生上の問題だった。ただ今の火葬炉は、煙が全く出ない。こういうルールをなくしていかないと、小規模でも新たな火葬場の整備は難しい」。
ただ鵜飼氏は、墓じまいなどが進み、墓じまいなどでスペースが生まれつつある寺の敷地内に火葬場を設ける案について、檀家らの感情的な抵抗感を指摘。「昔は田舎の方では『火葬寺』といって、ご遺体を焼いていた。それがどんどん火葬場に集約され、大規模化したため、火葬寺が消えた。そのため逆に死に対する忌避感がすごく高まった」と、寺であっても反発が起きる背景を語った。
施設不足だけでなく、現場を支える人材不足も深刻である。鳥居氏は業界のなり手不足について次のように語った。
「残念ながら、子どもが大人になった時になりたい職業のトップテンに『火葬場』が入ることはまずない。我々、葬儀業界や火葬場で働きたい人はどんどん少なくなっている。今後、火葬場で働く人をどれだけ維持できるのか、民間の火葬場が今の稼働率を維持できるのか。また、人件費を確保するために給料を上げようとなると、火葬料金を上げなければいけなくなる」。
また、鵜飼氏は「これから火葬場のパンクに気を付けるべきは大規模災害。首都直下地震、あるいは富士山の噴火。特に富士山の噴火となれば遺体を動かせないため、阿鼻叫喚の世界になる。遺体が搬出できない、火葬場も機能しない。こういう議論がなされていない」と、将来的な大規模災害発生時におけるリスク管理の不備を指摘した。
最後に、これからの社会における弔いの受け皿について、鳥居氏は行政が果たすべき本来の役割を強く訴えた。
「当組合では、身寄りがなくお亡くなりになった方を受け入れられるように納骨堂を設けているが、本来であれば、これは行政がやるべきこと。社会がこういった方を受け入れられる器を作るということは非常に大事」。
一方、鵜飼氏は、形骸化する死後の儀礼よりも、生前の人間関係の本質に向き合うべきであるという見解を示し、議論を締めくくった。
「お坊さんらしいことを言うのであれば、最後のお別れにこだわるのではなく、生きている間にしっかりコミュニケーションを取っておきましょうということ。最後は別に簡素でもいいと思う。生きている間に、生きている人を大事にした方がいい」。
(『ABEMA Prime』より)

