ロシアのスパイは「新しい貴族」か「弱点」か? プーチン大統領と情報機関の蜜月

ABEMA GLOBE
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「お宅の回線は特殊なので、ADSLを繋ぐことはできません」

 こうした不気味な情報機関の影は、現地で活動する外国人記者や外交官の日常にも、ごく当たり前に潜んでいる。駒木記者自身も、初めてモスクワ特派員として赴任した2006年に、その監視網の存在を肌で実感する奇妙な体験をしたという。当時、現地ではADSL方式によるインターネットの高速接続サービスが始まったばかりだった。「これはいいものができた」と喜んだ駒木記者は、さっそく自宅に回線を引くよう地元の電話会社に依頼した。ところが、電話会社から戻ってきたのは「お宅の回線は特殊なので、ADSLを繋ぐことはできません」という不可解な拒否回答だった。実は駒木記者が暮らしていたのは、ソ連時代から外国人が住むことを強制されていた、ロシア外務省の関連組織「ウポデカ」が管理するアパートだった。かつては外交官もジャーナリストも全員がこのアパートに隔離されるように住まわされており、彼らが使う電話回線は、外部から容易に傍受できるよう、はじめから盗聴用のシステムに直結していたのである。

 ロシアのスパイ活動は機密情報の収集にとどまらず、「積極工作」、つまりは実際に現地で「情勢や物理的環境を変える」点に大きな特徴があると駒木記者は指摘する。ニューヨーク・タイムズが報じたところでは、ウクライナ侵攻後に欧米から追放された多数のロシア工作員が日本を新たな拠点とし、兵器に転用できる電子部品を第三国経由で密輸している実態が明らかになっている。しかし、駒木記者はこのように強力かつ秘密に包まれたスパイ機関の存在こそが、皮肉にも現在のロシアにとって最大の「弱点」を形成していると分析する。ウクライナ戦争の決断において、プーチン氏は完全に情報機関の「ウクライナはすぐに打倒でき、国民はロシアを歓迎する」という偏った報告を盲信し、外務省など他の専門家の批判を一切許さない独裁構造ゆえに致命的な判断ミスを犯したのだ。法の枠外で非合法な工作を行う組織が批判から守られ、その闇を誇る国となったことの危険性は、日本のスパイ対策や「スパイ防止法」の議論においても、民主主義の弾圧リスクという観点から忘れてはならない教訓を示している。

(朝日新聞/ABEMA

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