■新人獣医師の不足、さらに離職も
熊本県にある龍之介動物病院の院長、徳田竜之介氏は「動物病院は圧倒的な人手不足だ」と訴える。獣医師として毎年新たに輩出されるのは全国でわずか1000人。そのうち半数は大動物や公務員の分野に進むため、小動物を診る動物病院に来るのは500人にすぎない。一方、人間の医師は毎年約1万人が新たに誕生する。
徳田氏の病院では獣医師はわずか2人、動物看護スタッフは21人体制で、朝7時から夜9時まで毎日診察を行っている。かつては24時間対応していたが、人手不足により断念せざるを得なかった。看護師は「動物の管理から飼い主さんのメンタルケア、清掃まで、何でもしなければいけない。人がいないから大変だ」と吐露する。
さらに、この病院では事故に遭ったカラスや高速道路で保護されたクジャク、野生の猿など、行き場のない動物の保護活動も行っている。徳田氏は「助けてくださいと言われたら助けなければいけないが、それができないというのが本当に葛藤だ」と述べる。
小学生のなりたい職業ランキングに入るほど人気の高い獣医師だが、離職率の高さが深刻な問題となっている。徳田氏は「入ってはくるけど辞める人が圧倒的に多い。自分が思い描いていた職業と違う。動物に噛まれるし、引っかかれるし、逃げるし危険」と説明する。
精神的な負担も大きい。「動物の命を低く見ている人と、家族以上に大切にしている人とのバランスが非常に難しい」という。同じ手術で10万円と伝えると「10万円も掛かるんですか」と驚く人がいる一方、「1万円でいいんですか」という人もいる。人間の場合、健康保険が適用されるため患者の自己負担は3割だが、動物病院は自由診療のため全額が飼い主の負担となる。
また、「足が折れているのに、犬だから死にはしないでしょ」と言い放つ飼い主もいると明かし、「治せばちゃんと歩くのにと思うが、そういう人もいる。動物病院や獣医師を目指した人たちが、人の命と動物の命のギャップにくじけてしまう」と語る。
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