
ロシアによるウクライナへの侵攻開始から、間もなく4年半を迎える。双方がミサイルやドローンによる攻撃を激化させるなど、泥沼の戦闘が続いている。
ウクライナがドローン攻撃を激化させる背景には、冬の厳しい寒さへの懸念があるという。一方、北方領土を訪問したプーチン大統領。その行動には、国内外に向けた“あるアピール”があるという。
ロシアの物流施設を標的に
ウクライナはドローン攻撃で、ある場所を標的にした。
今月15~16日、ウクライナは今年最大規模のドローン攻撃を実施した。標的の1つが「ロシア版Amazon」とも言われている通販大手「ワイルドベリーズ」のモスクワ州にある倉庫だ。
AP通信によると、先月18日以降、約1カ月間で「ワイルドベリーズ」の倉庫約20カ所を攻撃した。倉庫の収容能力の最大20%を破壊したという。一番遠い所で、ウクライナ国境から2000キロ以上離れた物流施設まで攻撃した。
フォーブス・ロシア版は調査会社の試算として、「出店者側の損害額は、推計で日本円にして約9400億円に上る」としている。物流施設などの再建には最大で約5200億円かかると報じた。
ウクライナにはどのような狙いがあるのか。AP通信によると、こうした民間の物流拠点への攻撃について、ウクライナ当局は「ワイルドベリーズはドローンを含む装備や技術部品を軍に販売している」と主張している。一方のロシア政府は、軍への供給を否定している。
また、アルジャジーラのインタビューで、ウクライナのポドリャク大統領府顧問は「これらの攻撃は政治とは無縁を装い、戦争は自分たちとは無関係だと主張する多くのロシア国民に大きな衝撃を与えることが目的だ」と語ったといい、ロシア国民の心理を揺さぶる狙いがあるとみられている。
14日、ロシア国防省はSNSにドローンの画像を投稿。その下に、ウクライナ国民へ「冬にあなた(ウクライナ)は“凍結”に見舞われる」と脅しともとれるメッセージが書かれていた。
こうした中、ウクライナによるドローン攻撃激化の狙いについて、元テレビ朝日モスクワ支局長・武隈喜一氏は「要因の一つは冬になる前に、せめてエネルギーインフラへの相互の攻撃停止の合意を実現する狙いもある」と指摘している。
数年以内にNATO攻撃?
数年以内にNATO(北大西洋条約機構)加盟国をロシアが攻撃する可能性があるとの指摘もある。
ウォール・ストリート・ジャーナルによると、アメリカの情報機関は報告書の中で、ロシアのプーチン大統領が今年の秋から2029年にかけて、NATO加盟国に限定的な攻撃を仕掛け、結束を試す可能性があると分析している。
また、CNNは情報筋の話として、バルト3国やポーランドを狙う可能性が高いと報じている。
この前兆なのか、イギリスのテレグラフによると、ロシアがウクライナ、ベラルーシとの国境周辺に、航続距離の長い自爆ドローンの発射台を備えた基地を10カ所設置した。バルト3国などのNATO加盟国が含まれている。
こうした中、ドイツのメディア、ビルトによると、NATOはロシアがバルト3国にミサイルとドローンで攻撃、さらに戦車で侵攻することを想定した対応策を検討しているという。
その計画では、まず戦闘機、ミサイル、ドローンでロシアのミサイル攻撃を阻止。次に国境沿いにドローンや無人車両を置くが、兵士は駐留させない。また、ロシア国内で特殊部隊が軍事拠点や補給網などを破壊するとしている。
支持率低下への焦り?
プーチン大統領が北方領土を訪問した狙いの1つが、ロシア国民に向けた“アピール”だという。
ロシアでは下院選挙が来月18~20日の3日間の日程で行われる。これは5年に1度行われるもので、今回はウクライナ侵攻が始まって以降、初めての下院選となる。
ロシアの政府系機関「世論基金」が行った世論調査によると、プーチン大統領の支持率は先月12日、66%に下落。ロシア独立系メディアによると、2022年のウクライナ侵攻以降、最低水準を記録したという。
こうした状況を受け、来月に下院選を控えるプーチン大統領は、北方領土の訪問によって領土に関して妥協しない強い指導者として国内向けにアピールする思惑もあると、朝日新聞は報じている。
そしてもう1つ、国外へ向けたアピールもあるという。
プーチン大統領は、北方領土訪問の前日今月12日、太平洋艦隊の艦上で「NATOがこの地域に進出してきた。新たな紛争の潜在的可能性が作られている」と異例の発言を行った。
この言葉の裏には何があるのか。去年8月、イギリス空母の「プリンス・オブ・ウェールズ」が日本に初めて寄港し、NATO加盟国であるイギリスと日本が防衛協力の強化をアピールした。
さらに6月、防衛省はNATO対ウクライナ安全保障支援・訓練組織「NSATU」に4人の自衛官を派遣した。これはドイツのアメリカ軍基地の中での活動となり、日本とNATOとの関係をより強化するものだ。
そして、防衛省が今月4日に発表した防衛白書2026年版によると、力による一方的な現状変更を許容しないために「同盟国のみならず、1カ国でも多くの国々と連携を強化することが極めて重要」と明記されている。
対抗措置が定まらない理由
プーチン大統領の北方領土訪問を受け、政府は難しい対応を迫られている。その背景にあるのが「サハリン2」の存在だ。
ロイター通信によると、ロシアのプーチン大統領による北方領土訪問を受け、外務省幹部は日本政府の対抗措置について、「日本の国益と国際情勢を見極めて適切に対応する」としている。
ただ、現時点で対応が明確に定まっているわけではない。その背景には、ロシア極東サハリン沖の石油・天然ガス開発事業「サハリン2」の存在があるという。
日本はLNG(液化天然ガス)の輸入量のうち、ロシアからの輸入量は全体の1割程度を占めていて、そのほとんどが「サハリン2」からの供給に依存しているという。
(2026年8月20日放送分より)
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