
10月1日から、従業員保護を目的として、社内に相談窓口を設け、“カスハラ”=カスタマーハラスメント対策の体制を整備するなど、企業側に対策措置を講じることが義務化されます。
【画像】企業が進める対策“正当な要求”との線引きは?“カスハラ対策”来月1日から義務化
厚生労働省は、カスハラに該当する例として、社会通念上、許容される範囲を超えた言動などの指針を示しています。しかし、企業側が頭を悩ませているのは、カスハラとクレームの境界線です。
千葉県浦安市で行われたセミナー。
不動産業や宿泊業など、中小企業の関係者が集まりました。
不動産業
「(客が)無意識に1時間しゃべっちゃう。これはカスハラだというのも、悪気がなくて。その辺の判断も、自分たちにも、いまいちよくわからない。だから、なおさら周知が難しい」
団体職員
「マニュアルやルールづくりをする部署にいる。実際、(対応)マニュアルを運用していく、会社として従業員含め、実際に運用していくのは、一番、難しい」

厚労省によりますと、仕事上のストレスなどによる精神疾患で、昨年度、1086人が労災認定されています。このうち、カスハラは、パワハラに次いで数が多く、深刻な問題になっています。
企業側の取り組みも進んでいます。

ソフトバンクと東京大学は、AIを活用して客が怒っている声を穏やかなトーンに変える技術を実用化。電話を受けた人が、6種類のAI音声に切り替えることができ、抑揚も変えることができます。
価格は10台の端末で、月5万円。
金融や保険業のコールセンターや、北海道帯広市や福井県坂井市などの行政の現場にも導入されています。

◆今回、カスハラ対策として義務化される主な取り組みとして、働き手を守る方針を明確化し、対処内容を周知すること。特に、悪質な事例は、警察への通報など対処方針を定め、対処できるよう体制を整備することなどが挙げられます。
来月の義務化に先駆け、対策を進めている企業もあります。

小田急電鉄は、今年4月から小田急線の全70駅で、ウェアラブルカメラを導入。トラブルが発生した際などにカメラを装着し、現場に向かいます。航空会社のスカイマークは、個人を特定されるリスクを避けるため、客室乗務員らの名札で、イニシャル表記を選択できる制度を導入しています。

カスハラの定義ですが、厚労省によりますと、顧客等の言動で、社会通念上、許容される範囲を超えたものにより、労働者の就業環境が害されるものをいいます。

“許容される範囲を超えたもの”とは何か。ポイントは“不当な要求”か“度を越した態度”かということです。

度を越した態度として、暴行・暴言・長時間の居座りなどが挙げられています。
正当な指摘なのか、カスハラとみなされるのか見極めが難しい事例について、カスハラ対策に詳しい香川希理弁護士に話を聞きました。
例えば、タクシー運転手が道を間違え、一本裏の通りを通ったら、普段よりも料金が300円増えました。客が「道を間違えたから、その分、増えた300円まけてほしい」と運転手さんにお願いします。この事例は、正当な要求か、カスハラなのか。

香川弁護士は「静かな口調で『300円まけて』と発言したら、内容も正当であり、態度も正当で、カスハラにあたらない可能性が高い。

ただ、静かな口調で『道を間違えたから全額無料にして』と言った場合、言い方は静かでも“不当な要求”になるのでカスハラの可能性がある」といいます。

大声で『300円まけて』と言い、要求が通らず、長々、居座ると、要求は正しいとしても、度を越した態度なので、カスハラとなる可能性があるということです。
◆今回の義務化で、カスハラ対策は進むのでしょうか。厚生労働省の委員会の座長を務めた成蹊大学法学部の原昌登教授に聞きました。

原教授は「これまでカスハラは、企業の責任ではなく、現場の問題や、個人の問題と捉える企業も多かったが、これからは“経営全体の問題”と、考えを変える必要がある。一方で、今回の義務化は、企業などの事業主に従業員を守ることを求めるもので、個人事業主は、十分にカバーされていない面もあり、今後の課題になる」と指摘します。
