
不正アクセスによって顧客の証券口座で売買されていた問題です。証券会社などへの取材で、これまでのような“口座乗っ取り”ではない方法で“勝手に売買されていた”ことが分かりました。相次ぐサイバー攻撃。その手口は新たな局面に入ったようです。
【画像や動画】急増するサイバー攻撃 情報漏洩相次ぐ 不正アクセスの情報まとめ
金融関係者「会社を揺るがす」
金融関係者
「会社を揺るがすような事件。メールは開くなとか逐一細かい指示が来ている」
「自分は営業だが、どう気をつけていいか分からない。明日は我が身と思いつつも不安だなと」

狙われたのは、岩井コスモ証券がインターネット取引のシステム運用などを委託している外部企業。今回は、顧客のパスワードなどのログイン情報を盗んだ“口座乗っ取り”の手口ではなく、直接、売買管理システムに対して不正アクセスを行ったもの。7つの口座のうち、5つで売買が行われましたが、取引前の状態に戻す措置が完了しています。
日本証券業協会 日比野隆司会長
「本当に連日、証券会社に限らず、内外における様々な企業団体等に不正アクセスが展開されていると。多発していると。証券界だけというよりは社会全体の課題になっている」

大手証券会社はシステムの総点検を始めました。
中国開発のAI 国内で悪用か
急増しているのはAIを使った手口。国内で相次ぐ不正アクセスの一部で、中国で開発されたAIが使われていることを確認したという調査結果が発表されました。『GMOインターネットグループ』傘下のセキュリティ会社は、日本企業を狙った不正アクセスの一部について、攻撃元を調査したところ、中国のエンジニアが開発した自律型AIツール『ARTEX』が使われていることを確認しました。
自民党の国家サイバーセキュリティ戦略本部の会合でも…。

自民党 国家サイバーセキュリティ戦略本部 平将明本部長
「中国製のAIの話は出た。私の認識ですが、中国製のAIはオープンウェイト(学習済みAI)。中国系ハッカーのみならず、世界中の犯罪者やハッカーがオープンウェイトを使っているということで、中国製のAIが広く使われているという認識は、我々は持っています」
「隙だらけの環境」どう防ぐ?
あらゆる企業がセキュリティに細心の注意を払う時代。日本最大級をうたう、ITなどの総合展覧会が21日から始まりました。会場には「隙だらけの環境」の文字も。セキュリティ関連だけでも約120の企業が出展しています。その中に、新しい対策技術がありました。
AppGuard 星野貴章さん
「侵入というのは今、色々な手段があるので、そこを全て防ぎきるのは難しいのが現状。そのため、その後に行動させない、動けない環境を作るのが、我々の製品の特徴」
この技術は元々、アメリカの政府機関向けに開発されたものだといいます。AIによる攻撃には脅威を感じています。

AppGuard 星野貴章さん
「変わったのはスピード。そして攻撃者側の狡猾(こうかつ)なやり方。守り方が間に合っていないのが、現実の課題ではないかと感じている」
証券会社の関係者は危機感を募らせています。
証券会社関係者
「今までにはない爆弾だから、それに対しては対応の仕様が難しいよなと。従来の攻撃より何段階もレベルアップした攻撃」

取引システム“乗っ取り”手口

これまであった不正取引の手口は、顧客のIDやパスワードを盗み、顧客になりすまして不正売買するというものでした。ただ今回、岩井コスモ証券では、顧客個人ではなく、インターネット取引を委託されている会社が狙われました。株などの売買を管理するシステムに第三者が直接侵入し、そこから顧客の7つの口座が不正売買の被害に遭いました。
こうした手口について、インターネットでの金融取引の犯罪対策に詳しい、ラックの小森美武さんは「取引システム自体が乗っ取られた、前例のないケース」と指摘しています。

取引システムには“顧客の口座を閲覧できる部屋”や“株を売り買いする部屋”、“取引を承認する部屋”など複数の部屋があり、権限を分けて乗っ取りの防止策を取っています。しかし今回は、全ての部屋を出入りできる管理者の“マスターキー”のようなものが奪われ、不正売買が行われた可能性があります。
取引システム なぜ今標的に?
なぜ今、取引システムが狙われたのでしょうか。

ラック 小森美武さん
「“顧客のなりすまし”が難しくなったことが背景にある」
パスワード入力に加えて、顔・指紋認証など本人確認が厳格化されたことで、犯罪者側が取引システムの乗っ取りに目を向けた可能性を挙げています。
今回の狙いは何だったのでしょうか。

ラック 小森美武さん
「恐らく狙いは、株価を意図的に動かして利益を得ること」
他人の口座を使って特定の株を大量購入して株価をつり上げ、自分の株を高値で売り抜ける計画だったのではないかということです。
ラック 小森美武さん
「本当は何百という口座で不正売買したかったはず。ただ、会社側が対応措置を取ったため、被害は7口座にとどまった可能性がある」
