
再開発で変わり続ける渋谷にも、昭和から残る味わい深いビルがあります。そんな渋いビルを愛する方と一緒に、ノスタルジーを感じてきました。
【画像】道玄坂センタービルにある無限に続いているように見える階段
70年代の時代背景が分かるビル
佐々木若葉アナウンサー
「きょうは渋いビルを案内してくださるとのことですが、一体どんなビルなんですか?」
雑誌「東京人」元副編集長 鈴木伸子さん
「1960年代から70年代、日本の高度経済成長期に建てられ、築50年くらいの年数が経ったからこそ、味わいが増したビルのことを呼んでいます」
若者の街・渋谷を案内してくれるのは、雑誌「東京人」の元副編集長、鈴木伸子さんです。建築や街歩きに関する書籍を多数執筆し、東京に現存する古いビルの特集本を作るほどの「シブビル」マニアです。気持ちの良い秋空の下、シブビルの楽しみ方を教わりながら歩きます。道玄坂沿いにも渋いビルがいくつか残っているといいます。
佐々木アナ
「このビルですか!これは私でも知っている有名なビルですね。これも渋いビルなんですか」
鈴木さん
「私のようなマニアが見れば、渋いビルなんですね」
スクランブル交差点から歩いて3分の道玄坂センタービル。飲食店が多く入る若者にも親しまれているビルですが、1970年代当時の時代背景を感じられるといいます。
鈴木さん
「まず、外側にエスカレーターがついているのが見えますよね。あと、外階段があって、2階にも地下にもアクセスしやすい。エスカレーターが今ほど設置率が高くなかったので、エスカレーターがあること自体がウリです。だから見せたかった。60年代、70年代は外部から内部に階段・エスカレーターで入れるって、ナウい感じだったらしいです。今は普通ですけれども、それだけでお客さんが入っちゃうみたいな。2階はバルコニーになっていますね。それによって2階にも、ちょっと行ってみよう、あそこの回廊を歩いてみようみたいな、人を誘い込むようなデザインになっている。今もありますけれども、70年代においてはすごく先進的だったんじゃないかなと思います」
道玄坂センタービルに潜む「無限階段」
さらに、細かな部分にも、シブビルの見どころがあります。1階のエレベーターは新しく改装されがちですが、2階や3階には当時の状態が残っているところもあるそうです。
鈴木さん
「2階、3階へ行ってみると、以前のままのオリジナルのままの状態は残っていたり、細かい照明が天井にたくさんついていたりするのは70年代の商業ビルの特徴だと思います」
鈴木さんのいちおしは、奥にある豪華な階段です。
鈴木さん
「推しのポイントなんですが、この階段のデザイン!階段って建築家・デザイナーにとってデザインのしがいがある空間なんですよね。変化がつけられるじゃないですか。見上げると…」
佐々木アナ
「すごーい!全部上まですごい!」
鈴木さん
「無限に続いているように見えるんですよね。無限階段。インフィニティー階段と個人的に命名しております。これはバックヤードにある階段なんですけれど、いろいろと工夫してデザインしているところに、ビルへの愛を感じます」
佐々木アナ
「確かに外からは見られないですもんね。次、仙台の両親が東京に遊びにきたら見せたいです」
鈴木さん
「結構今も残っているシブビルというのは立地がいい場所にあるので、チェーンの飲食店が入っていることが多いんですよね」
佐々木アナ
「そういうことなんですね!」
閉店を前に、渋谷ハンズの構造を見学
シブビルの豆知識を聞きながら歩くこと6分。宇田川町にある渋谷ハンズに到着しました。11月15日に閉店する渋谷のランドマークも、築48年のシブビルです。見た目には特別古い印象を受けませんが、中に入ると1970年代にできた商業ビルならではの特徴があります。
鈴木さん
「渋谷ハンズってワンフロアが3つの段差のある空間に分けられていまして。これがワンフロアの段差ではなく、半フロア。普段なら踊り場の部分が1Bフロアになっていますよね」
渋谷ハンズは、フロアが半階ごとに設けられ、1A・1B・1Cというように階段を上りながら巡れる、ダンジョンのような造りが特徴です。
鈴木さん
「ハンズのどこがシブビルなのかといいますと、こういうふうに空間に変化が続いて区分けされているのがスキップフロアという作りで、60年代、70年代に商業空間などでとてもはやった造りなんですね」
佐々木アナ
「そうなんですね。私はてっきりハンズといったらというイメージがあったので」
鈴木さん
「私が子どものころはスキップフロアもあちこちにあって思い出があるんですけれども、今残っているのはラフォーレとハンズくらいかなって。私は本当にこのお店ができた70年代の終わり、中学生だったと思うんですけど、その時からこのお店に来ていた思い出があるので、このハンズも来月閉店してしまうというのがすごい寂しく、パルコも建て替わり、ハンズもなくなってしまうなんてという時代の変遷を感じますよね」
窓やドアハンドルにも残る、時代ごとの意匠
再び道玄坂に戻ると、窓の形がユニークなシブビルが続けて見つかりました。
鈴木さん
「あの白い大きなビル」
佐々木アナ
「かわいいですね。丸みを帯びた長方形というのが温かみがありますね」
鈴木さん
「そうですね。60年代、70年代のビルにはとても多い『カド丸』のデザイン」
佐々木アナ
「カド丸というのがあるんですね」
鈴木さん
「私が勝手に呼んでいるんですけど。こっちもこんな窓が」
佐々木アナ
「すごーい!渋いですね。茶色もいいですね、渋みがあって」
鈴木さん
「年月を経てきている感じがして。あとは窓の形もね、六角形だとか今時ないですよね。どうやって開けるのかなとかね」
ここで鈴木さんから、シブビルを観察する際のチェックポイントを教わります。
鈴木さん
「ディテールを見ていただきたい。例えばですね、入り口に書いてあるビル名のフォント、書体とか何でできているか、陶器でできているか、金属でできているか。あとは入り口のドア。今時の大きなビルはだいたい自動ドアですよね。60年代、70年代は今ほど自動ドアが普及してなかったらしいんですね。ですので、押しドアのビルがとても多い。そこでチェックしていただきたいのが、押すところがありますよね。ドアハンドルというんですけれども、結構いろんなデザインがあります。丸いの、四角いの、木製だったり、プラスチックだったり、石だったり」
佐々木アナ
「ドアハンドルに注目したことなかったです」
鈴木さん
「普通しないでしょうね」
“メタボリズム”建築?
渋谷駅から約4分、ヒカリエの先で出会ったのは、1961年にできた岡崎ビルです。今回訪ねた中で最も古いビルで、東京オリンピックより前に建てられました。2階以上の外壁や窓の下側には、その時代ならではの装飾が見られます。
佐々木アナ
「渋いですね」
鈴木さん
「岡崎ビルという名前がついているんですけど、あのビルの一番上にも公団渋谷2丁目住宅と書いてあります。もともとは集合住宅として建てられたみたいですね。入り口周りはすごく今風にリノベーションされているので、やっぱり上を向いて歩いていないとシブビルだと気が付きません」
さらに約7分歩き、閑静な住宅街の常盤松エリアへ。鈴木さんが案内したのは、でこぼこしたデザインが特徴のビルです。
鈴木さん
「これはゴリゴリのシブビルですね」
佐々木アナ
「ゴリゴリの!?」
鈴木さん
「でこぼこしたデザイン。70年代ならではの造りですね。2階部分ですか。宇宙船みたいに」
佐々木アナ
「すごい不思議な感じですね」
鈴木さん
「60年代、70年代って『メタボリズム建築』というでこぼこしたビルディングがすごくもてはやされた時代だったんですね。黒川紀章さんとか菊竹清訓さんとかですね、のちに大先生になる方々が世界に発信したら世界から評価された」
佐々木アナ
「すごくかっこいいデザインですね」
鈴木さん
「取り壊されてしまったんですけれども、カプセルを組み合わせてマンションにしたものとか、丹下健三さんという代々木体育館の作品なんかもある日本を代表する大建築家の方の作品なんですが、これもメタボリズム建築ということで、隣にもこういうものを建ててつなぎ合わせたりとか、増やしたりしていけるというメタボリズム建築の考え方。ここはメタボリズム建築ではないんですよ、ないんですけど、形だけそういうでこぼこしたものをとり入れているのかなって。ここのビルは低層部が商業スペースで、上がマンションになっていると思うんですけど、こういうふうに複合した要素は70年代ぐらいになって出てくるパターンですね。このお店をこういう形で…」
佐々木アナ
「なるほど!ここがこうなっていたんですね。円形!」
鈴木さん
「ここで何屋さんやったらいいですかね」
渋谷の街を歩くと、見慣れたビルにも、築年数を重ねたからこそ味わえるデザインが残っています。
(「グッド!モーニング」2026年10月27日放送分より)
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