各党の指名候補を確定したアメリカ大統領戦、民主党候補となったヒラリー・クリントンを盛り立てようとレイチェル・プラッテンの「ファイト・ソング」という曲が今話題になっている。
元々ヒラリーが、指名選挙中に「不屈の精神」をアピールするために引き合いに出したこの曲は、遅咲きのプラッテンをドサ周りからスターダムに押し上げた美談と共に選挙のスローガンとなっているが、歌詞に出てくる「自分にはまだ頑張れる力が残っているはず」というフレーズを聴くとある男の姿が頭をよぎる、UFCウェルター級王者、ロビー・ローラー。
容赦無いそのファイトスタイルから「ルースレス」の異名でも知られるファイターだが、チャンピオンとなって2度の防衛戦でのぐちゃぐちゃになるまで殴り合い、不利な状況をヒックリ返すその精神力の強さは「UFC史上最も不器用でドラマティックな王者」という表現が相応しい。そんなローラーが約7ヶ月振りにリングに復帰、タイトルをかけタイロン・ウッドリー(ランキング4位)を迎え打つ。
今や恐れ知らずのファイトスタイルから、王者に君臨するロビー・ローラーだが、実は1度UFCをクビになった経歴がある。
19歳だった2002年のUFC初挑戦は、同門のマット・ヒューズとの階級被りを避けミドル級に階級を上げたこともあり、2004年のニック・ディアス、エヴァン・タナー戦の2連敗からケガでの戦線離脱を余儀なくされあえなくUFCをリリースされることとなる。
その後ハワイのローカル格闘団体「SuperBrawl」から再起し日本の「PRIDE」などから這い上がるも、王者となった「EliteXC」が破産、流れついた第2のMMA団体「Strikeforce」での成績は8戦で3勝5敗と芳しくなかったものの、運命のイタズラかUFCとStrikeforceの合併により再びオクタゴンのリングへと舞い戻ることとなった。
実はこの2013年のUFCへの再挑戦はローラーにとって最高のタイミングだった。すでに同門の元王者ヒューズはリングを去り、当時の絶対王者だったジョルジュ・サンピエールが、長期休業を発表する1ヶ月前という絶妙のタイミング。本来のウェルターで復帰すると3連勝で、2014年当時の王者ジョニー・ヘンドリックスに0-3の判定で敗れるものの、この年の年末2度目の挑戦となる12月の「UFC181」でジョニー・ヘンドリックスを下し32歳で遅すぎる初戴冠を果たすこととなる。
王者になったローラーは、その少な過ぎる試合数よりも、格闘ファンの脳裏に刻まれる2度のタイトル戦を行なうこととなる。
初防衛となった2015年のローリー・マクドナルド戦は、序盤から壮絶な打撃合戦となり互いに「顔面崩壊」フルラウンドまで身の毛もよだつ殴り合いの末5Rに左ストレートからのパウンドでローリーが勝利。
2016年1月の2度目の防衛戦で、カーロス・コンデットでは、1Rに相手に嵐のような打撃を貰いつつも、2R以降の逆襲が実り2-1の判定勝利。この2試合はその内容の凄まじさから「ファイト・オブ・ザ・ナイト」を獲得し、「全てを出し切る男」「名勝負量産マシーン」としてのローラーの名を印象づけた。
3度めの対戦相手、タイロン・ウッドリーはアメリカン・トップチーム所属の同門対決、元Strikeforce出身、そして同じ34歳、コンディットやコスチェックなどこれまでなぎ倒してきた対戦相手も共通点が多い。ローリー本人は3度めの正直で「スカッと早く勝ちたい」と発言しているが、手の内を知り合う相手、今回も彼の真骨頂ともいえる泥臭くエネルギーを使い切るような試合が予想される。
先週の「ファイトナイト」の興奮も覚め寄らない中、今月2度めとなるUFCのナンバー大会『UFC201』の舞台はジョージア州アトランタのフィリップス・アリーナ、なおこの大会の模様は7月31日(日)7時30分より「AbemaTV」で生中継されることが決定している。