オーストリアの小さなクラブ「SVホルン」が日本で注目を浴びたのは昨年6月、ACミランの本田圭佑のマネジメント「HONDA ESTILO」が経営に参加し、実質的オーナーとなってからだろう。昨年からチームの試合をネット中継して来たが、2部に昇格した今シーズンからはAbemaTVでの全試合の中継が決定、新たに加入した6人の日本人選手の活躍も注目される。
その名の通り首都ウィーンから約1時間半に位置するニーダーエスターライヒ州ホルンに本拠地を置くSVホルンは1922年創立。昨年オーストリア3部(レギオナル)で優勝、7月中旬からスタートした16/17シーズンは2部(エアステ)を戦っている。
「HONDA ESTILO」の参入以降クラブは大改革を行って来た。これまでクラブを支えてきた地元スポンサーに加え、日本の大手スポンサーを獲得。数年後を見据えてスタジアムを1部リーグの仕様に拡充、本田圭佑が主催したトライアウトや、移籍やレンタルという形での日本人選手の獲得での補強を推し進めた。
そしてシーズン半ばにリーグ首位をキープしていたヨハン・クレア前監督を解任し日本人指導者である濱吉正則監督への交代。当初地元では賛否両論だったのも事実だが、クラブの成長戦略として本田と旧知でありUEFAのライセンスを持つ数少ない日本人である濱吉監督の起用もチーム1年目に掲げた有言実行により沈静化したが、本当の意味で「本田体制」の真価が問われるのが、より競争力の高い2部リーグで戦う今シーズンとなる。
現在所属している日本人選手たちも注目だ。将来の日本代表候補のポテンシャルを十分に持ち合わせている元名古屋のDFハーフナー・ニッキは、あのハーフナー・マイクの弟、約一年間のオーストリアでの試合経験を積み重ね評価も上場だ。コンサドーレ札幌からトライアルを経て移籍した榊翔太はスピードが持ち味のFW、浦和ユース出身のFV新井瑞樹とMF矢島倫太郎、アマチュアから入団テストを経て加わった川中健太と、伸び盛りの選手が名を連ねる。また日本代表GKのFC東京から期限付き移籍した権田修一の存在も大きい。昨年オーバートレーニング症候群と診断された権田は現在病から復活の途上だが、本田圭佑曰く「彼のピッチ外でのリーダーシップは、このチームに大きな影響を及ぼしてい」と全幅の信頼をよせる。現在試合出場に恵まれていない権田だが、彼もまたオーストリアの地で新たな経験を重ねているのだ。
5カ年計画のスローガンは「ネバーギブアップ」。1年で2部昇格、3年以内に1部への昇格する、そして5年後にはチャンピオンズリーグ進出を掲げるSVホルンは、あのサッカークラブ育成ゲーム「プロサッカークラブをつくろう! 」を地で行く「リアルサカつく」だ。
ネットでの全試合中継が決定し、日本人にとって未知のオーストリアの下部リーグの世界を覗き込み、SVホルンの発展と伸び盛り選手たちを応援する。強いチームを見るのも面白いが、発展途上のチームが成長していく姿を楽しむのもサッカーの醍醐味といえるだろう。