8月21日、アメリカ・ネバダ州ラスベガスのT-Mobileアリーナで開催された総合格闘技「UFC 202」のメインカード、ネイト・ディアス対コナー・マクレガーの再戦は、5R判定2-0でマクレガーが勝利し、前回の敗戦の雪辱を晴らした。
3月に急遽組まれた第1戦で、ディアスの逆転のチョークに沈み5年続いたMMAでの連勝がストップしたマクレガー。元々は組まれていたライト級王者、ドスアンジョスとの階級を超えたカードが中止になり組まれた、急場凌ぎのカードだった。
そもそも2階級上、ウェルター級のネイト・ディアスを、フェザー級のマクレガーに当てる自体に無理があるのだが、この2人はリング内外で大いに罵り合い、試合でも壮絶に殴りあうことで、予想外のライバル関係いわゆる化学反応が起きることとなる。
競技化が進むMMAの中で失われつつあった闘争本能むき出しのケンカは、結果的にファンにも熱烈に受け入れられ、UFCにとって「怪我の功名」が産んだゴールデンカードとなった。
今回、マクレガーは体重もウェルター級に増量しハンデを克服。5ヶ月の準備期間を経て、再び相まみえた「世紀のケンカマッチ」第2戦に向けての舞台が整った。リングイン早々、今にも殴りかかりそうな2人に屈強なガードマンが付き静止するというピリピリ感を煽る演出も含め、凄まじい緊張感を放つこの試合の特殊性は闘う前から明らかだった。
静かなスタンドでの探りあいで幕を開けた試合は、前回と同じく1Rから攻めるマクレガーの打撃をディアスが受ける展開。マクレガーの左アッパーがクリーンヒットし最初のノックダウンを奪うと、強烈なローキックでディアスの動きを止める。ダメージの大きいディアスは下がりながら、のらりくらりとかわしつつも、後半には相手を挑発しながら前に出て闘志をむき出しにしてラウンドを凌いだ。
2Rもマクレガーが優勢に試合を進める。開始早々ローキックから左フックのコンビネーションでダウンを奪い、立ち上がったところを更にストレートでこの日3度目のダウン。
絶体絶命と思われたディアスだが、鼻血を出しフラフラになってからが彼の真骨頂だ。ここからゾンビのように蘇生し始め、威力の無いパンチを打ち続ける。圧倒的に不利な状態でも前に出続けるディアスの打撃には徐々に力が蘇り、マクレガーがプレッシャーで下がりぎみになると、ラウンド終了1分前には、ディアスがケージ際で嵐のようなパンチを繰り出し逆襲を始める。
3Rに入ると、目に見えてスタミナが切れ始めたマクレガーに対し、ディアスは笑みを浮かべながらさらにプレッシャーをかけ始めた。組み合いから、テイクダウンを試みるディアスとこらえるマクレガー。共にふらつきながらも、ケージで潰しあい、意地で手を出し続ける攻防が続く。
遂に疲労が蓄積したマクレガーが背中を見せ始めるが、ディアスの手は止まらない。このラウンドのマクレガーが24に対し、ディアスは58と倍の有効打数からもその差は明らかだ。
4Rに入ると互いに息が切れながらも壮絶な打ち合いに。マクレガーが有効的なボディーへの蹴りを決め、一方のディアスもテイクダウンを狙い組み合いから膝を打ち込むも、互いにトドメを刺す最後の一撃が出ない。両者スタミナが限界に達していながらも、本能で血まみれになりながら殴りあう状況は、もはや単なる悪童同士のケンカである。
5Rは両者が残り少ないエネルギーを出し尽くす消耗戦。距離を置くマクレガーに対しひたすら前に出続け打撃、テイクダウンと一気呵成に攻め込むディアス。
完全に憔悴しきったマクレガーが時計をチラリと見ると、ディアスが指を立て挑発し殴りあうよう促すという痺れる展開から、試合は遂に佳境に入る。やや心が折れ始めたマクレガーに対して、ディアスはしつこく食い下がりテイクダウンに成功、パウンドでパンチを打ち込むがここで試合終了のブザー。
ジャッジの判定は、48-47、47-47、48-47の2-0(1ドロー)で、コナー・マクレガーの判定勝ちとなり前回の雪辱を晴らすこととなった。
試合全体で考えると1人のジャッジがドローに採点したことからも判るようにほぼ互角の内容。1ポイント差を付けた2人のジャッジに関しては、前半のマクレガーの3つのダウンが差となったと考えると妥当な試合裁定といえる。
振り返ると、もはや結果よりも「5Rフルで相手をボコボコに殴るのが目的だったのでは?」と勘ぐりたくなるような試合内容だった。
マクレガーに前半早々TKOを奪うチャンスが3度訪れたが、その度にスタンドでの打撃戦を要求。対するディアスも3R以降のガス欠気味の相手をテイクダウンで仕留める機会はあった筈だが、互いに立って殴りあうことだけにしか興味の無いかのように拳を交え続けた。
結果的にこの試合で両者は対戦成績を1対1のタイに持ち込んだが、試合後には互いに再戦を要求。今後、マクレガーは本来のフェザー級戦線に復帰する予定だが、近い将来「ディアスvsマクレガー3」が実現することは確実だろう。