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12月29日の「RIZIN 無差別級トーナメント2回戦」で、ミルコ・クロコップとヴァンダレイ・シウバの10年ぶり3度目の対戦が決定した。

9月25日に開催された「RIZIN」で、勝利後のミルコに、リング上でシウバが対戦を要求。本来抽選で決定する組み合わせを、高田延彦統括本部長の立ち会いのもと、観客に問うというプロレス的なアングルも含みつつも半ば強引にカードが決定した。

ミルコは「同じトーナメントに出るのであれば尊敬するヴァンダレイ・シウバと対戦したい。自分もベストな状態で戦いに臨むし彼もそうしてくるだろう」一方のシウバも「最高の格闘家であるミルコと対戦したい」とお互いがトーナメントの結果以上にプライオリティを置いている。この2人の過去の対戦歴史、そして総合格闘家としてのキャリアを辿ると「ミルコvsシウバ3」は、日本の格闘ファンにとっても10年前に置き忘れて来た夢の決着戦であり、現在「RIZIN」が組むことの出来るベストカードの一つといえるだろう。

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格闘ファンの夢、10年ぶり再戦「ミルコvsシウバ」 必然といえるその対戦の歴史

2002年4月に行われた「PRIDE.20」が、ミルコとシウバの最初の対戦だ。当時K-1とPRIDEの両方に参戦していたミルコは、前年のMMAデビューで藤田和之を撃破、高田延彦とのドローを挟み、新日本プロレスの永田裕志を大晦日の「INOKI BOM-BA-YE 2001」で倒すなど総合格闘技のリングでも自身の立ち技の利を活かしながら勝ち星を重ねていった。

一方のシウバも「PRIDE」で桜庭和志をサッカーボールキックで沈めたセンセーショナルな勝利でスターダムに上り詰めた。大山峻護、桜庭との再戦、続くアレクサンダー大塚、田村潔司と日本を代表する格闘家を完膚なきまでに叩き潰し、シウバが最も怖かった時期だ。

そんな2人の初の頂上決戦となった対決は3分5R判定は無し、よってフルラウンドの場合は「ドロー」という、MMA経験の浅いミルコへの考慮ともいえる特別ルールを設け争われた。試合は蓋を開けると、ゴング開始とともに殴りかかるアグレッシブなシウバの戦術は、なりをひそめ慎重な立ち上がりに。しかし2Rに入ると状況は一変、ミルコの高速ミドルがシウバの胸に直撃しはじめる。シウバもテイクダウンを仕掛けパウンド攻撃で追い込む。3Rになるとスタンドでの激し過ぎる蹴りと打撃の攻防。シウバはガードから何発もミルコの強烈なミドルを受け腕や胸が紫色に腫れ上がった。

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結果はルールに乗っ取りドローとなったが、得てしてエキシビジョンマッチ的になりがちな特別ルール戦の中でも、両選手の凄みが十分に伝わる内容だった。4年後の2戦目は、ミルコ最強時代を象徴する2006年の「PRIDE 無差別級グランプリ 準決勝」。前半からミルコが蹴りパンチで圧倒。テイクダウンからパウンドを打ち下ろしこの頃には完璧に「PRIDE」のファイトスタイルにも対応。ラウンド前半に左フックでシウバを沈め、執拗なパウンド嵐で徐々にシウバの顔面が変形し長いドクターチェックによる中断を挟む凄惨な試合に。目が塞がれた状態のシウバも試合再開後スタンドで応戦するも、1R 5分22秒左ハイキックでKOされ失神。

ベスト体重を上回る102.3キロと大幅に増量し「無差別級対応」で臨んだシウバのコンディションの問題なども後に検証されたが、全盛期のヴァンダレイ・シウバが完膚無きまで倒された試合として今でも語り草になっている。

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この試合の後2007年からUFCに参戦することになる2人だが、MMAファイターとしては厳しい現実に直面することとなる。

2006年の「PRIDE王者」となったミルコは、参戦2戦目でガブリエル・ゴンザーガに自らのトレードマークともいえるハイキックを貰い衝撃のKO負け。その後もオクタゴンでのファイトスタイルに馴染めず、タイトル戦線に絡むこともなく11戦5勝6敗と負け越し。さらに2015年には禁止薬物の使用で2年間の出場停止処分(肩の治療のために成長ホルモンを注射した為といわれている)になり引退を宣言。

シウバも鳴り物入りでUFC入りしたものの9戦して4勝5敗。特にビックマッチでの敗戦が目だち2013年以降はリリース状態だった。

そんな2人だからこそ、紆余曲折を経て再びキャリアの黄金時代を過ごした日本のリングでベストな試合をーという思いは強いだろう。

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引退を撤回し約1年半振りのリングに立った「RIZIN」のミルコはとても42歳とは思えない肉体に仕上がっている印象だった。190センチの長身ファイター、ミョン・ヒョウンマン戦での落ち着いた試合運びや、組み合いでの圧倒的な強さ、寝技への対応などからも、復帰への本気度は窺えた。

蹴りを一発も放たずに勝利したことにより、10年ぶりのシウバ戦で「伝説のハイキックが解禁」という、なんともロマンを感じる展開ももれなく付いて来た。あの試合を見て、3年間のブランクのあるヴァンダレイ・シウバも本気にならざろう得ないだろう。

過去の対戦成績からみると「ミルコvsシウバ3」は、厳密にはラバーマッチではないが、「真の決着戦」になるだろうと確信している。

ミルコ42歳、シウバ40歳とお互い年を取ったとはいえ、同じ時代を生き、似たようなキャリア半ばの挫折も経験した2人が最後の輝きを放つ、そんな有終の美に相応しい試合を期待したいところである。

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