元ドイツ代表ゴールキーパーでブンデス・リーガ、ブレーメン、ホッフェンハイムなどでも活躍したティム・ヴェーゼのプロレス・デビューが正式に11月3日のミュンヘン大会に決定した。
「鍛え過ぎてクビになったゴールキーパー」と世界中で話題になったヴィーゼだが、2014年のWWE練習生から2年「プロレス修行」を経ての大舞台デビューとなる。
そもそもブンデスリーガ出場194戦、A代表6戦の一流ゴールキーパーがプロレスラーに転身せさろう得なかった背景には「しくじり」を繰り返し行き着いた複雑な事情がある。
2005年から7年間在籍し、第1のキーパーとして活躍したブレーメンでの能力を認められ2012年に移籍したホッフェンハイムで彼のキーパーとしてのキャリアをより一層輝くものになる筈だった。
加入早々にキャプテンに任命され本人もやる気満々で臨んだシーズンだったがチームの守備は崩壊、さらに自身のヒザの故障で戦線離脱。復帰後の翌シーズン再び正GKに復帰するが再びチームの守備が崩壊。2013年以降のヴェーゼの話題といえば、高額年俸で4年契約を結んだ故の嫌味や批判、やさぐれてカーニバルで喧嘩騒ぎで逮捕、ハンドボール観戦中に騒ぎを起こし謹慎処分に。その後もチームやコーチの和解など繰り返すものの、キーパーとしては4番手まで落ち完全に干された状態に。
そこで彼が手を染めたのがボディービルだった。ケガや謹慎時間の合間にボディービルで上半身を鍛え上げた結果体重は115キロに、ムキムキの肉体で写真をSNSにアップしつつも本人は「あくまで現役サッカー選手」を主張し続けたがチームからはNGが出て2014年の1月に遂に契約解除。引き取り手もなく強制的に引退を余儀なくされた。
しかし世間での話題に目を付けたのが世界最大のプロレス団体WWEだった。冗談のようなオファーから2014年の秋にトライアウトを受け、ゲストとしてこの年のドイツ大会のリングにも姿を見せている。
その後トリプルHの門下として「WWEのパフォーマンスセンター」でプロレス修行を開始するが、驚きなのは肉体美を強調し完全にプロレスラーを名乗り始めたにも関わらず、ホッフェンハイムが今年の6月までヴェーゼとの契約を全うしなければならなかったことだ。
4年間の出場は僅か10試合・・・ドイツ・サッカー界に悪い爪痕だけを残しプロレスラー、ティム・ヴェーゼは誕生した。なおデビュー戦は、サッカー出身のヴェーゼと、ラグビー出身のセザーロ、サッカー好きレスラー、シェイマスと組む3人タッグマッチ。WWEも彼の数奇な人生を汲み取った絶妙なパートナーを用意している印象だ。
別業種からのプロレス転身はどこの国でも話題になる。ましてや元ドイツ代表キーパーがプロレス転身というのは、スキャンダルといえる部類の衝撃を持って迎えられた。
一番気がかりなのは「ヴェーゼはどれほど強いのか?」という事。数年間、このスキャンダルを追い続けているドイツのメディア「BILD」が公開した8月のヴィーゼの練習シーン。鍛えられた肉体は相変わらずだが、筋肉量が増えたせいで俊敏さは感じられない。
ただ34歳という年齢はプロレスラーにとっては程よい年齢でもあるし、ヨーロッパ市場での「元サッカー選手のプロレスラー」という肩書はなかなか魅力的ともいえる。かつての「給料泥棒」の汚名もプロレスのリングではキャラクターを活かすスパイスになるだろう。様々な思惑と共に神輿に担がれている感はあるが、ヴェーゼのセカンドキャリアに対して多くの人々が注目している。