長谷部誠は、キャプテンではない。もちろん日本代表においてではなく、所属先のアイントラハト・フランクフルトにおいてのことだ。フランクフルトの主将はアレックス•マイヤー。“フットボールの神”の異名を持つ33歳のベテランFWが腕章を巻く。

 だからなのか、“フランクフルトの長谷部”には、どこか自由な雰囲気が漂う。昨年10月のバイエルン戦からリベロを務め始めた長谷部。主将を後方から支援する姿に、日本代表のキャプテンとしての責任はのしかかっていないように見える。

 それはもちろん、長谷部がフランクフルトで無責任にプレーしている、ということではない。8年に渡るブンデスリーガの戦いでは、ボルフスブルク時代に優勝も経験し、通算228試合に出場している。昨年12月にはチームとの契約も18年6月30日まで延長した。戦績は到底ベテランの一言で片付けられるものでもなく、日本代表と同様に、フランクフルトにおいても頼れる存在だ。

 そんな長谷部をニコ・コバチ監督はリベロのポジションに起用した。守備の手綱を引き締め、パスを散らして攻撃を組み立てる。瞬時に状況を見極め、早めに危機の芽を摘みに行く。「このチームはどちらかというと相手によってやり方を変える」と長谷部が語るように、対戦相手や試合の状況によって布変更するフランクフルトのサッカーで、最後尾の柔軟な戦術理解力は、まさにチームの心臓だ。

 昨年11月に行われたアジア最終予選、サウジアラビア戦の直後の試合となったブレーメン戦の後で「今回は日曜日の試合でしたし、全く問題なかったですね」と軽快に語るなど、日本代表戦からフランクフルトの試合への切り替えもお手のもの。日本代表での戦いも10年以上に渡る長谷部。104試合に出場している。日の丸を背負う経験が血となり肉となり、引いてはフランクフルトのサッカーの一助となっていることは間違いない。

 それでもフランクフルトで戦う長谷部は、国を背負う重圧から解き放たれ、練習と試合のサイクルの中、ただ何かを追求し続ける1人のサッカー選手のようである。試合の後で繰り返される「修正」という言葉。ちなみにリベロとは、イタリア語で「自由な」という意味だ。

 リベロから本職のボランチに戻った試合では、球離れが少し遅くボールを失うこともあるなど、ちょっとした戸惑いもありながら、表情は充実している。もちろんチームとしての結果が付いてきているからこそだが、それも長谷部という心臓が脈打つことから始まっている。

「こういう厳しいゲームをアウェーで勝てたってことは、また上の順位を狙えるのかな、という感覚はあります」

 2-1で逆転勝ちしたブレーメン戦の後で感じた手応え。長谷部が後ろにいるフランクフルトは、前半戦を4位で終えている。

取材・文/本田千尋

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