「"障害者"と呼ばれる人たちとあまり接点が多くなかった人たちにとっては、"乙武さん"っていう存在は"入り口"として丁度いいんだと思う。知らないと、"どう接したらいいんだろ"、"失礼があったらいけないな"とか、"どんなお手伝いして差し上げたらいいんだろう"って無駄に気を使うし、腫れ物に触るようになっちゃう。それって別に悪いことでもなくて、知らなければ当然のことだと思う」。
「でも僕の場合、何を言われてもそんなに傷ついたりするタマでもない。そこまで多くの手伝いを必要としているわけでもないので"意外と普通なんだね"で、終わるんですよ。まずは触れてみないと見てみないと、判断すらしようがない。だから僕と触れ合ってみて"いや俺、乙武嫌いだわ"でも全然いいと思う」。
5人の女性との不倫が発覚、およそ9ヶ月間謹慎していた乙武洋匡氏が、AbemaTV「AbemaPrime」に出演、世の中から差別や偏見をなくすための情報発信について語った。
「友人が"ひとり親"支援のキャンペーンを始めたんです。ひとり親家庭はデータ上、経済的に非常に苦しい。もうちょっと公的な手当というものがあって然るべきだというキャンペーンです。そこに噛み付いてきたのが、当時の大阪市長だった橋下さんでした。橋下さんは、ひとり親かどうかで線引きをするんじゃなくて、両親が揃っている場合でも、収入が低ければそこで線引きをするべきじゃないかという考えだったんです」。
それに対し乙武氏は「橋下さんの指摘ももっともで、正論だと思う。ただ、それは何も政治的な権力のない民間人である僕らからしたら、まずはひとり親家庭の貧困を改善していこうということなんです」と伝えたという。すると橋下さんも理解してくれ、「"お互い目指すところは一緒、これからも頑張りましょう"ということでうまく着地できた」という。
「"なんであんな弱者だけが優遇されるんだ、逆差別だ"っていう論調がある。あれはすごいバカげた意見。優遇とは、もともとフラットなところに、ある特定の人々にだけプラスを与えること。正直、"お前ら、全然わかってねえな"と思っている。もともと他の人に比べてマイナスの状況にある人にプラスを足すことで、プラスマイナスゼロにすることは優遇でもなんでもなく"是正"。是正と優遇の違いすらわかんないのかって言いたい」。
乙武氏は、差別の元凶について「根深いなと思うのは、人間の本質みたいなところがあって"違いがあるものは排除していい"みたいな意識が働いちゃうのかな」と指摘する。
「無差別殺人とか黒子のバスケ脅迫事件などの加害者の供述を読むと、幼少期に"排除"されていた過去を持つ方が多い。思いが鬱積して、恨みを晴らしてやると犯行につながる。"根本的に違いのある人って当たり前だよね、その違いってむしろ財産じゃないの?"って、僕ら一人一人が思えるような社会にならない限り、今度は異なる違いを理由にまた差別が起こるだけ」。
「教育もそうだし、僕はやっぱりメディアが大事だと思う。諦めないことはスラムダンクから学んだり、今の世代は友情をワンピースから学んだりしている。特にマスコミは、正しいことは正しいってきちんと言っていくことが大事。もっと大事なのは、"俺はそうは思わない"という声も認めて、きちんと出すことです」。
今後の政界進出については「全然考えてない」という乙武氏。
「正直、アプローチはなんでもいいと思っているんですよ。要は何を成したいのかっていうことが大事。僕は数が少ない方が辛い思いをするのは、やっぱり世の中としておかしいと思っているんです。どんな境遇に生まれようが、どれだけ数が少ない側になろうが、ちゃんと同じだけの選択肢が与えられて、どれが自分にとっての幸せかなって選ぶことができること。僕はそれが一人一人の"幸せの保障"だと思っている。一人一人が息苦しくなく、同調圧力に屈することなく自分の幸せを追求できる社会、それを実現したい」。
「そのためには、まだ俺やれることが残っているんじゃないかなと思っている。それに建前を言う必要もなくなったので生きたいように生きます。言いたいこと言うし生きたいように生きるし、迷惑かけるはずの家族もいなくなったし、もう自由にやります」。