今月1日、フィンランドでベーシックインカムの実験が開始された。無作為で選ばれた2000人の失業者に対し、毎月560ユーロ(約6万8千円)を2年間支給するというもの。国家レベルでは初となるこの取り組みで、ベーシックインカムの導入が失業率の低下にどんな影響をもたらすのかを調査する。
明治大学政治経済学部の飯田泰之准教授は「働き方にも大きな影響を与えると思う。最低限の生活がある程度成立している状態だと、きつい・給料が安い・人間関係もひどい、というような"ザ・ブラック職場"で働く人はいなくなる」と話す。
Yahoo!ニュースによる意識調査では、「ベーシックインカム、日本での導入に賛成?反対?」という質問に対し賛成が42.6%、反対が48.9%という結果となった。やや反対が多いものの、大きな差はつかない結果となった。
慶應義塾大学特任講師で「NEET株式会社」創設者の若新雄純氏は「ベーシックインカムを導入するには、年金や保険など、様々な問題を統合する必要がある。しかし日本の場合、公的機関が非常に多いため、すべてを統一するのは簡単ではない」と指摘する。
その財源をどう確保するかという問題もある。平成25年の日本の社会保障費は110兆円にものぼる。ここから医療費の36兆円を差し引いた74兆円をベーシックインカムの財源とした場合、国民一人あたり毎月4万8千円が支給可能になるという試算がある。この試算は、今までの社会保障を無くす代わりにベーシックインカムを導入するというもので、いわば「自分で自分を助ける制度」ということになる。
東京大学名誉教授の神野直彦氏は「社会保障というのは、何年間もかけないと改革できない。現行の制度をどのように廃止するかも議論しなければならない。また、4万8千円では、生活保護や年金以下の水準となるので、生活できなくなる人もいる」と話す。
果たしてベーシックインカムは働き方を変えるのか。また働く意欲を向上させるのか。
古山教育研究所所長の古山明男氏は「ベーシックインカムによって、自分がこの社会で生きている、人とつながることができるという感覚をもつことが大事」と話し、ベーシックインカムを肯定する。働く意欲のないニートの人々への影響については「希望のないことが一番の理由」であり、ベーシックインカムはそれを解決する施策となりうる可能性がある、とした。
一方、体罰を肯定する教育者として知られる戸塚ヨットスクール校長の戸塚宏氏は「ベーシックインカムではニートは救われない(労働意欲の向上には繋がらない)。希望をもつ能力がない彼らを作ったのは教育だ」とバッサリ。
また、神野氏は「生活が困難になるのは、所得だけの問題ではない」と指摘。「所得が低く、生活が困難な国民に対しての保障という目的だけでなく、身体障害や、精神的な病など、それぞれの人に合わせるような形で手を差し伸べるのが公共サービス。お金だけではないサポートが必要」とも話した。
フィンランドでの実験の行く末に注目が集まる。(AbemaTV/AbemaPrimeより)