AK-69が11月23日にニューアルバム「DAWN」を発表する。これに合わせて11月21日夜11時からAbemaTVのAbemaSPECIAL2チャンネルで放送される「BPM~BEST PEOPLE's MUSIC~」に出演。AbemaTIMESでは、初のメジャー作品となる「DAWN」や番組、さらにはAbemaTVについて話を訊いた。

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運命的なアルバム

ーーAK-69さんが今回メジャーから作品を発表されたのはなぜですか? AKさんはこれまでインディで活動されていて、しかもすごい量のCDを売り上げていたので、あえてメジャーに行く必要性もないと思ったのですが。

別にメジャーデビューしたかったわけじゃないんですよ。アルバムでも歌ってるけど、メジャーとインディの壁は俺がとうにぶち壊してますから。だけど俺にとってDef Jam Recordingsというのは特別でした。アウトローの成り上がりストーリーは前作「THE THRONE」までで言い尽くしちゃってたところがあって。しかも俺が王座に就いてるとか、誰にもできないやり方で勝ち上がってるのは周知の事実でしょ? じゃあ俺が新章で何をするかってなった時、Def JamというのはB-BOYである俺にとっては特別な金看板でした。

ーーDef Jamは2000年にDef Jam Japanとしてローンチしましたが、2000年代半ば以降はシュリンクしてしまいましたね。

かつてDef Jam Japanには盟友のTOKONA-Xが所属していたんですよ。地方の、名古屋のラッパーが、メジャーで、しかもDef Jamと契約したというニュースをあいつから聞いた時は俺もすごい嬉しかった。契約した当時、あいつといろんな話をしたし、夢も語り合いました。だけどあいつは志半ばで契約解除になり、そのすぐ後に他界してしまった。

ーーAKさんはTOKONA-Xの1stシングル「Let me know ya…」にkalassy Nikoff名義で参加していますね。

はい。あの頃から随分時間が経って状況は進んだけど、思いは当時のままですね。しかも「DAWN」の発売日が、偶然TOKONA-Xの命日の翌日・11月23日になったんです。これは意図的にこの日にしたわけじゃ全然なくて。ツアーが終わった直後のヘロヘロになってる時にレーベルから提案されたんですよ(笑)。正直スケジュール的にはかなり厳しかったんだけど、その日がベストだってレーベルが決めたのならそれに答えるのがアーティストの器量だと思って作りました。そんな日に、あいつの思いと、Def Jamの看板を背負って俺の新章が夜明ける(DAWN)っていう。自然にそういうストーリーになったので、個人的には運命的なアルバムになったと感じています。

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成し得ないことを成し得る

ーー「Flying B」という事務所も設立しました。

はい。俺たちは前のレーベルにいた時から業界との横のつながりを何も持ってなくて。業界人ですら「あそこってどうやってんの?」って言うくらい(笑)。本当のノーコネクション。そんなとこから俺が旗振り役になってここまで頑張ってきました。でもそのレーベルは音楽事業だけをやってる会社じゃなかったこともあって、あれ以上のことは会社としてやれなくて。でも俺はもっと先に進みたかった。だからそのレーベルにいた奴と3人で「Flying B」を立ち上げたんです。

ーー3人で、ですか!?

そうですね。みんなは今回俺がこうやって独立したのを見て、儲かってると勝手に思ってるみたいなんだけど、全然逆。もうリスクしかない。

ーーリスクとは?

さっきも言ったけど、まずコネクションがない。大きい芸能事務所はコネを代々培ってきてるし、ノウハウも、さらに資金力もある。俺らなんて、今回のアルバムが売れなかったら一瞬で潰れちゃいます(笑)。だって俺は新人とかじゃなくて、武道館クラスのライブをするプロジェクトをやってるから。しかもそれを3人で進めるとか、もはやギャグの領域なんですよね。

ーー(笑)。

普通に考えれば大きい事務所に入りなよって話だし、実際にオファーもありました。でも成し得ないことを成し得るのがAK-69だから、さらなる高みを目指して玉砕覚悟で攻めるんです。それが信条。今は逆にワクワクしてますよ。

俺の生き様が言霊に乗ってる

ーー「Flying B ~DAWN ver.~」に「散々B級扱い / 泣き腫らす目」というリリックがありますが、これはどういう意味ですか?

今でもそうですけど、俺は正当に取り扱ってもらえない存在なんですよ。俺より売り上げがなくて、ダサいライブしかできないような奴が、メディアに近いというだけで雑誌に取り上げられたりするのを見るのは屈辱的でした。でもオリンピックで大活躍した内村航平くんは試合前に毎回俺の曲を聴いてくれてるし、野球選手の入場曲で一番使用されているのは俺の曲なんです。

ーー芸能事務所が大好きなパブリシティ用のネタですね。

でもそういう事実があったって、いろんなメディアが俺を取り上げてくれるわけじゃない。つまり俺は世間にいる「作られた」アーティストと同じことをしてちゃダメなんですよ。そいつらをブチ抜く圧倒的なものがないと、同等に扱ってもらえないんです。「大きい事務所じゃないから」みたいな負け惜しみは絶対に言いたくない。だから「取り上げさせてみせる」っていう。それが昔から俺の原動力になっています。

ーーメディアには載らないけど、AKさんは確かに日本中から支持されていて、音源の売り上げでも圧倒的な実績を持っています。それはなぜだと思いますか?

俺には特別な音楽的才能があるわけじゃないから、リアルなメッセージを放つというのがAK-69の音楽の主たる魅力だと思っています。俺は本当にリアルなことしか歌ってませんから。アスリートたちが異常なほど俺の曲を支持してくれるのは、俺が彼らと仲が良いからとかそんなんじゃなくて、常に自分をギリギリ状況に置いているという俺の生き様が言霊に乗ってるからだと思う。

ーーまさにB-BOYスタンスですね。

ヒップホップは生き様だと思うんで。曲調やファッションみたいに作れるものじゃないんですよ。ロックでも同じことが言えると思うけど、「あいつは超ヒップホップだよね」ってやつがやるからヒップホップなんですよ。それは誰にも文句を言わせない自信があります。

生き様やメッセージが詰まった音源こそ本当の試合

ーー「Streets」では2WIN(T-PABLOW & YZERR)をフィーチャーしていますね。

2WINの2人を見ていると、若い頃の自分たちを見てるような感じになる。本当のストリート上がりって、今の若手には少ない気がして。俺たちの時代には、ヒップホップはワルしかやってなかった(笑)。2WINの1stアルバムを聴いてると彼らが泣けてくるほどかわいそうな環境で育ってきたことや、川崎という地方都市で仲間たちと音楽に救われて活動してるというのがすごく伝わってきた。でも決め手になったのは、俺の音楽を聴いて育ってきたということ。今日本には才能あふれるラッパーはいっぱいいるけど、今回のアルバムには俺の音楽の根底にある音楽+生き様っていう雰囲気を纏ってるやつをフックアップしたかった。

ーー「もう1ミリ」に参加している般若さんもまさにそういうアーティストですね。今、そんな彼らが出演している「フリースタイル・ダンジョン」に端を発して、フリースタイルバトルがブームになっています。NHKではかなり頻繁に取り上げられています。AKさんはそういう状況をどう見ていますか?

素晴らしい、素敵なことですよ。ヒップホップという音楽は、例えいじめられっこでも声という楽器さえあればできる。その素晴らしさがあるからこそNHKとかも取り上げてくれるんだと思います。今まではちょっとギャグっぽいというか、イロモノ的な扱いだったけど、どんどん中心に寄ってきてますよね。だけどフリースタイルはヒップホップの一要素でしかない。俺はバトルを観ているとたまに競技を観ているような気分になるんです。ヒップホップのドラマを感じづらいというか。俺はヒップホップにおける本当の試合は、その人の生き様やメッセージが詰まった音源だと思う。だから俺はそこにもっと注目が集まるような仕組みを作りたいと思っています。

ーー間違いないです。

これがただのブームで終わってしまったら、本当にもったいないですよ。

ーー音源の売り上げでヒップホップゲームを競ったほうがシーンも盛り上がりますよね。

そうですね。「売れなくていい」と思うんだったらCDは配って歩けばいい。もちろん、シーンにいろんな人がいるのは良いことだと思う。みんな違ってて当たり前だから。俺のことをダサいと思うやつだって当然いる。だけど、俺は本当は売れたいのに、売れてない負け惜しみで「売れなくていい」と言ってるような天の邪鬼な人は嫌いですね。

ーーなるほど。

もちろん売れるために作品を作るんじゃない。自分たちがかっこいいと信じることをやり続けなくてはいけない。そしてそれを世の中に広めるためにできることを、みんなもっと真剣に考えるべきだと思います。今はテレビやラジオ、雑誌でイメージを統率できるような世の中じゃないから、方法は絶対にたくさんあるはずなんです。「やるからには結果を出す」ということをみんながもっと自然に考えられたら、俺はヒップホップシーンがもっと盛り上がると思っているんです。


SUGIZOさんとコラボに期待

ーー最後の質問です。AK-69さんはAbemaTVの「BPM~BEST PEOPLE's MUSIC~」に出演されるそうですね。

今回SUGIZOさんとコラボができると聞いてて。俺はSUGIZOさんのマニアとかではないけど、彼がLUNA SEAやX JAPANのメンバーとして活躍してるレジェンドの1人だということはもちろん知ってる。しかも俺の曲でスペシャルセッションできるということなんで、すごく楽しみにしてますよ。

ーー「BPM」ではEXILEやEXILE THE SECONDのメンバーである黒木啓司さんがMCを務めています。ブラックミュージックをベースにしたポップスでLDH勢が人気を博している状況を、AKさんはどのように見ていますか?

俺たちのやってることとは全然違うんですけど、クラブミュージックの良いところを取り入れてお茶の間に飛び出すっていうのは単純にすごいですよね。そういうのって、今まではジャニーズとかばっかりだったでしょ? アイドル的な活動をしている人が俺たちみたいな服を着て、俺たちのやってる音楽っぽいことを取り入れて、これだけ世の中を圧巻できるっていうのは素晴らしいことだと思います。

ーーAKさんはAbemaTVにどんな印象を持っていますか?

めっちゃめちゃ新しいですよね。こんな時代になるんだなっていう。何よりもヒップホップのような地上波では扱われないコミュニティやジャンルがクローズアップされてて、しかもそれが手軽に楽しめるっていう。本当にすごいシステムだと思います。これからも本当に楽しみにしています。

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