制作の遅れから放送の延期が相次いだり、意図しない総集編が放送されたりするなど、トラブルが続く日本のテレビアニメシーン。アニメーターの労働環境問題などもクローズアップされるようになり、『君の名は。』や『この世界の片隅に』といった大作アニメ映画がヒットを飛ばす一方で、テレビアニメ業界はその過酷な制作環境により危機に瀕していると噂されることもある。

 そんな中、2016年に大躍進を遂げたのが「日中合作アニメ」だ。古くは2010年に日本でも放送された『最強武将伝 三国演義』など、これまでも日中合作アニメは存在していたが、2016年に入りその数は一挙に増大。アニメファンの間でも「意外に面白い」と話題を集めている。

(日中合作アニメ『霊剣山』公式サイトのスクリーンショットより/ (C)霊剣山製作委員会)

■中国のアニメ事情に詳しい関係者の話

中国のアニメ事情に詳しい関係者はこう語る。

 「一番大きな理由は、日本のアニメに投資したがっている中国の投資家が増えているということですね。少ない投資で大きなリターンが期待できますし、日本のアニメに投資することは、投資家の間でステータスにもなっています。彼らが潤沢な資産を投入することで高いクオリティのアニメが制作できるので、完成度の高い作品が生まれ、結果として中国はもちろん日本でも支持されるようになっているのではないでしょうか」

 一方で、中国の国内事情も日中合作アニメの増加に影響していると言う。

 「2006年から中国ではゴールデンタイムに海外のアニメを流すことが禁止されています。これは自国のアニメを保護し、発展させることを目的に行われた措置ですが、これにより国産アニメのクオリティや人気が高まる一方で、日本のアニメが依然として中国国内のアニメファンに高い人気を博しているのも事実です。そこで、日中合作アニメを作りながら日本のアニメ制作に関するノウハウを学びつつ、企画や設定などを日本に外注することで日本のアニメが持つテイストを取り入れた国産アニメの制作も続いています」

■日本のアニメファンも評価する「日中合作アニメ」

 潤沢な予算を使い、日本のアニメを嗜好する中国国内のアニメファンを意識して作られた日中合作アニメ。2016年に日本で放送された日中合作アニメは日本のアニメファンにも評価されている。

 中国のWeb小説から生まれたコミックを原作とする日中合作アニメ『霊剣山』は、中国の古代をイメージした世界を舞台に仙人という中国古来のモチーフを扱った作品。高いクオリティの作画と、シリアスな展開とコミカルな展開を織り交ぜたストーリーにより、日本でも受け入れられている。2016年1月から日本で放送された第1期『霊剣山 星屑たちの宴』に続き、2017年1月からは第2期となる『霊剣山 叡智への資格』も放送されるなど、日中両国での人気のほどがうかがえる。

 中国古来のモチーフを扱った作品では、2016年10月から日本で放送された『侍霊演武:将星乱』(ソウルバスター しょうせいらん)も話題となった。日本でも人気の高い『三国志』をモチーフに、現代の中国で高校に通う主人公の男子高校生が、カードを使って『三国志』の英雄を召喚して戦うというストーリー展開。日本でも受け入れられやすい設定であり、さらに主人公のパートナーとなる『三国志』の英雄・周瑜を女性にすることで日本の男性アニメファンから支持された。高い作画クオリティに加え、漫画の効果線を思わせる演出や、画面に墨汁が飛び散るような演出も斬新で、『霊剣山』と同様に第2期の制作が期待されている。

 男性のアニメファンに支持された作品という意味では、『アイドルマスター』や『ラブライブ!』といったアイドルアニメの台頭を意識して制作されたであろう『アイドルメモリーズ』も話題を集めた。中国のゲーム会社Happy Elementsが日本で制作した『アイドルメモリーズ』は、近未来を舞台に「バーチャル空間で活動するアイドル」という設定と、個性豊かなヒロインたちの存在で人気を集めた一方で、30分枠の半分をアニメパート、残りの半分を出演声優によるバラエティ番組パートに分けて放送したことでも大きな反響を呼んだ。

 出演声優のバラエティ番組パートが作られた背景には、中国における日本の声優人気も影響していると見られており、実際に日本の出演声優が中国で単独ライブを成功させている。バラエティ番組パートでの中国語講座は、日本のアニメファンには賛否両論であったものの、作品そのものや出演声優によるアイドル活動は支持され、一定の成功を収めた。

 他にも日本の人気ソーシャルゲームを日中合作でアニメ化した『聖戦ケルベロス 竜刻のファタリテ』など、2016年は日中合作アニメ躍進の年だった。

 2017年の展開について前述のアニメ関係者は「中国では女性アニメファンの購買力が高まっています。2017年から2018年にかけて、すでに女性向けの日中合作アニメがいくつか企画されているようですので、今後は女性向けが増えていくのではないでしょうか。また、純国産の中国アニメのクオリティもかなりハイレベルなものになってきています。今後は、日中合作ではなく、純国産の中国アニメが次々と日本に上陸してくると思います」と語る。

 すでにアニメファンの間では一定の評価を得つつある日中合作アニメ。「意外に面白い」と話題の作品をチェックしつつ、今後、日本で放送されるであろう新たな作品にも注目してほしい。

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