今年も2017年1月4日開催される、新日本プロレス『戦国炎舞 -KIZNA- Presents WRESTLE KINGDOM 11 in 東京ドーム』大会。殆どの試合がタイトルマッチという気合の入りように加え第0試合も含め計11試合のカードからは、昨年繰り広げられた激戦の成果が透けて見えるが、それ以上に来年に向けたグローバル戦略が透けてみえる。
昨年の1.4は主力大量離脱からの復活の物語だった。もはや繰り返すまでもないが、中邑真輔やAJスタイルズらメイン級の選手たちがスッポリ抜けた後、新日本の未来を測るベンチマークといえる重要な大会のなかで、救世主と言っていいだろう内藤哲也が大ブレイクしたのはご存知の通り。では今年の1.4の大義名分は?というとスバリ「世界戦略へのリスタート」だろう。そしてその主語となるのはケニー・オメガの存在だ。
数年前から新日本プロレスは世界マーケットを意識してきた。オンデマンドサービスである「新日本プロレスワールド」は日本語と英語中継の2言語となり海外のプロレスファンにもよりアクセスしやすいコンテンツとなり、オンラインだけでなく恒例となった台湾大会も成功し着実に歩みを続けてきた。
ネットや海外での大会開催など座組み的な意味での材料は揃っているがコンテンツについてはどうだろう?という疑問に応えたのが、今回のメインの昨年のG1覇者、ケニー・オメガと王者オカダ・カズチカのカードだ。
現在の新日のベスト・オブ・ベスト、恐れずいえば日本のプロレスが現在世界に発信できる最高のカードである。さらに加えるともはやこの2人に関しては、日本人対外国人の対立軸では無く、どちらも日本マットをホームに持つトップレスラーの対決ともいえる。
ケニーに関しては「他団体からのオファーを蹴った」との日本のファンにとっての美談から始まり、外国人エースという枠にはまらない活躍を見せた。G1に関しては「初の外国人G1覇者」といった言葉が優勝直後並んだが、もはや外様やアウェイを超越した日本マット界の至宝と言っても過言ではない。ケニーが今回のドームでIWGP戴冠なるかは判らないが、いずれ彼の黄金時代はすでにG1制覇とともに訪れているし、彼が英語圏に向けての、日本マットの魅力や成熟ぶりをプレゼンテーションするスポークスマン的な役割はすでに始まっている。
ケニーの躍進は、実績ある選手の日本マットへの逆流が発化するフラグにもなるのではないだろうかという期待も膨らむ。例えば先日、BULLET CLUB加入を発表した、元WWEスーパースター、コーディ・ローデス改め、”The American Nightmare” Codyの参戦が大きな話題となった。
彼のようにネームバリューがあるレスラーが日本マットに挑戦する時代となり、それを迎え撃つのが、一足先に日本のリングで実績を固めつつあるジュース・ロビンソンという構図は海外のプロレスファンにも伝わりやすい。他国のリングでリリースされた選手が日本マットで開花もしくは再ブレイクする可能性なども含め、Codyの再デビュー戦は要注目のカードだ。
昨年の今頃は、主力の日本人と日本マットが育てたと言っても過言ではない外国人選手が日本マットを次々と離れ「今後空洞化が加速するとのでは?」という不安が少なからずあったが一年たってみると、日本流のプロレスは他の世界のどのリングとも違う個性と共に新たなステージを踏み出しつつある。今年の1.4を通過した時、新日本プロレスがどのようなネクストステージに到達するか、今から楽しみである。