Lick-Gの最新アルバム「Trainspotting」が好評だ。よく言われるのは「圧倒的なラップスキル」云々かんぬん。実際ちょっと聴けば、ヒップホップのことをよく知らない人でも彼のラップがすごいのはわかるはず。なので、今回はLick-Gのラップのどこがどうすごいのかを具体的に解説してみよう。
「Trainspotting」では現行USヒップホップのトレンドになっているトラップが全面的に導入されている。トラップは皆さんが普通に想像するヒップホップよりも遅いビートを使っているのが特徴だ。もともとはアメリカ南部のヒップホップ、サウスが発展したもの。90年代~00年代初期のいわゆる王道なNYヒップホップがBPM90だとしたら、トラップは60くらい。BPM60で普通にビートを作ると遅すぎて間延びしてしまうので、ハイハットをキックの倍のBPM120にしたりと工夫して曲に抑揚をつけている。アメリカ南部といえば、ブルースやロックンロール発祥の地なので、彼らにはあの重く遅いビート感が身体に染み付いているのかもしれない。