国際テロ組織・アルカイダが電池に爆弾を隠す技術を完成させているとの見方が出ていることから、アメリカ政府は特定の国からの乗客に対し、パソコンなど電子機器類の持ち込みを禁止すると発表した。
対象となったのは、サウジアラビアやエジプトなど、8か国10の空港からの直行便。携帯電話よりも大きいノートパソコンやタブレット端末などの電子機器だ。カメラやポータブルDVDなども対象となる。これらを乗客が機内に持ち込むことを禁止し、預け入れ荷物にすることを義務付けた。
アメリカ国土安全保障省は「航空機を標的とするテロリストグループによる攻撃を懸念している」とテロ対策であることを強調。便を乗り換えてアメリカに入国する場合は、経由地で信頼性の高い保安検査を受けることから、アメリカに危険が及ぶ事態は回避できるとして禁止対象から除外するという。
2001年の米同時多発テロ事件以降、最大規模ともいえる今回の規制。アメリカに続いて、イギリスでも同様の措置が実施される見込みで、対象は中東や北アフリカの6か国からの旅客機になるとみられる。日本にとっても無関係な問題ではないが、一部の国だけをターゲットにした規制であるだけに、どのくらいの効果が挙げられるのだろうか。
軍事評論家の黒井文太郎氏は今回の措置について「具体的な情報が入ってきたため、今回の措置を取ったのだろう」と推測。「10年くらい前から、大きなデジカメについては空港に入る時に"スイッチを入れて使えるか見せてみろ"と相手を見てやっていた。不便だが、今のところ仕方がない」とした上で、「対象の便が限られているため、テロ対策としては不十分」との認識を示す。
新聞記者時代、オサマ・ビンラディン暗殺の際に現地取材に行ったというBuzzFeed Japan編集長の古田大輔氏は「空港によってセキュリティチェックの厳しさはまったく違う。印象的だったのが、イスラマバードからタイに帰ってくる時、空港に入ってから出るまでに10か所くらいチェックポイントがあった。ただ、ひとつひとつは緩く、爆弾を持ち込めるような印象だった」と当時を振り返った。
これまでの爆弾テロ事件としては、2001年の"靴"爆弾、2009年の"下着"爆弾、2010年の"インクカートリッジ"爆弾などがあった。そして、2015年には清涼飲料水の缶に見せかけた"ジュース"爆弾によってロシア機が墜落し、多くの犠牲者が出た。
国際ジャーナリストの高橋浩祐氏は「トランプ政権が中東の専門家を集めて、(中東発のテロ対策に)注力している。テロリスト側は"窮鼠猫を噛む"といった感じで、ラジカルにやろうとしているように思える」とコメント。
黒井氏も「テロリスト側の技術力が上がっている」と指摘、「名前が挙がっているアルカイダにはイブラヒム・アシリという爆弾製造に長けた人物のグループがある。空港のセキュリティチェックを突破するような爆弾を作っており、警備当局が以前からマークしている」とした。中には体内に仕込む爆弾もあり空港の全身スキャナーでも見つけることができないのだという。
「100パーセント止めるというのは不可能。対策を緩めるとやられてしまう。しかしきつくし過ぎると自由が制限されてしまう。それぞれの国、状況で"この辺りにしましょうか"というグレーな感じでやるしかない」と話した。
(AbemaTV/AbemaPrimeより)
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