4月2日の後楽園ホール大会で、Krushに新チャンピオンが誕生した。
この日、ダブルメインイベント第2試合として行なわれたのは、-65kg王座決定戦。トーナメントを勝ち上がってこの闘いに駒を進めたのは、小宮由紀博と中澤純というベテラン2人だった。
ともにキャリアがあるだけに、なかなか隙が見当たらない。中澤は圧力をかけるが攻略の糸口を掴めない。一方の小宮は、コツコツとローキックを当てていくのだが決定打を放つことができない。
いわゆる神経戦、頭脳戦の様相だ。中澤は試合後「体のダメージはないんですけど、頭が疲れてますね」と語った。試合終盤には偶然のバッティングにより中澤が出血。苦しい闘いを強いられることになった。
際どい内容だけに、ジャッジの採点も僅差に。2-1のスプリット・デシジョンで中澤が勝利し、キャリア31戦目で悲願のKrush王座獲得を果たした。中澤はリング上で号泣。ベルトへの強い思いを感じさせる場面だった。
そこに現れたのが、左右田泰臣だ。K-1を主戦場にする左右田は、この大会で初めてKrushに出場。松下大紀に格の違いを見せつけるような1ラウンドKO勝利を収めている。
左右田の狙いはあくまでK-1のタイトル。しかし、そのためのステップとして「まずは」Krushのベルトを獲りにいくという。プロレスファンとして知られ、試合中以外、公の場では常にマスク着用の左右田。「まずは」発言も内藤哲也オマージュだが、チャンピオンの中澤は気づかなかった模様。
「このベルトが僕をもっと強くしてくれる」とコメントした中澤は、大会翌日の記者会見でも「組まれた相手と闘うだけ。強い選手と闘うのが一番楽しい」と左右田の挑戦を受けて立つ構えだ。
一夜明け会見にもマスク姿で登場した左右田は「自分がKrushに初めて出た日のメインで、同じ-65kgのタイトルマッチがあった。運命的なものを感じますね」と言う。しかし同時に、自分の挑戦表明に対して「他の選手が出てこないのはどうしてなのか。Krushはこんなもんじゃないはず」という不満も。
「KrushはK-1とはまた違った刺激があった」という左右田。Krushのベルトを引っさげてのK-1再登場を目論む。対する中澤も、新たな目標としてK-1を挙げており、2人の思惑は絡み合った状態。左右田のKrush王座戦線加入は、他の選手の反応も含めて“制御不能”な状態をもたらすかもしれない。
文・橋本宗洋