ここ数年一度対戦した相手との遺恨にクローズアップしビッグマッチ化する手法がMMA界隈でも人気だ。
埋め合わせのカードだったにも関わらず余りにもお互いのリング外での舌戦が凄すぎて全米のペイパービューの売上げを更新した「コナー・マクレガー対ネイト・ディアス」、拮抗した試合の末ドローになった試合を引きずる形で実現した「タイロン・ウッドリー対スティーブン・トンプソン」戦然り。最近では「ホイス・グレイシー対マット・ヒューズ」のレジェンド・ファイトの噂まで…そんな中「ベラトール」のリングでかつて繰り広げられたクイントン・ランペイジ・ジャクソン対キング・モーは、かつての対戦をみた人たちのモヤモヤとした気持ちを晴らすという意味でも再戦が待ち望まれたカードだった。
両選手ともPRIDE~RIZINの流れから日本ゆかりのファイターであり、モーは元Strikeforce、ランペイジは元UFCのライトヘビー級タイトル・ホルダーという観点もさることながら、2014年5月17日に開催された「ベラトール120」での対戦での、ジャッジを巡り敗れたキング・モーが試合後数年に渡り不満を表明し、ランペイジも再戦を望むという最高に熱い状態で3年間放置されたままだったのである。
かくして3月31日(金・現地時間)アメリカ・イリノイ州ローズモント・オールステイトアリーナで開催された「ベラトール175」のメインカードで実現した「ランペイジ対モー2」だが、計量の段階で大きな問題があったことを触れなければならない、前日計量の段階でランペイジは253ポンド(114.76キロ)に対して、モーが212ポンド(96.16キロ)と18.6キロもの体重差で臨んだ試合だったことだ。当初は最大266ポンドまでをランペイジ側が要求したという情報も流れていたが、いずれにもしても18.6キロ差というのは、UFCのフライ級王者、デメトリアス・ジョンソンがライト級のコナー・マクレガーやウェルター級のタイロン・ウッドリーなどと対戦することをイメージしたらいかに難しい試合か想像できるだろうか。
試合は1R序盤、モーが軽快に細かいパンチを当て、引き気味で静観する展開も、ケージ際に追い込みモーがテイクダウンに成功。前回の対戦同様モーのレスリング技術がランペイジを圧倒する。回り込みバックを取る場面でもモーが冷静に手首を掴み、ランペイジの腕の動きを奪いながらヒザや下からのパンチを叩き込み、片足タックルから再びテイクダウン、このラウンドをコントロールしラウンドを終える。
2Rに入ると、パワーで勝るランペイジが攻勢をかける。威力のある左右のフックを突破口に、強烈なパンチに対し、スピードを活かし小さなパンチで手数を稼ぐも「約19キロ差」の威力の差は大きい。打撃戦が不利とみるや堪らずテイクダウンを選択、このラウンドでも2度のテイクダウンに成功する辺りはさすがオールアメリカンだが、さすがにスタミナが切れはじめ、ラウンド後半は防戦一方になる場面が目立つようになる。
最終3R、前回最終ラウンドの差がものを言う展開に。ここでも両者の体格差が明確で、組合いでもパワーで振り切られ差し替えされるようになるモー。ややジャクソンに余裕が見え始め、戦術的にもテイクダウンするしか選択肢がなくなる。逆にランペイジにタックルを仕掛けられる圧倒的に不利な場面を乗り切ると、最後はモーが力を振り絞るように至近距離での打撃戦でもラッシュを見せ根性と気迫を見せたままラウンドを締めくくった。
壮絶な体重差のある試合に、最後まで果敢に打ち合いに挑んだモーの試合後リングに座り込む姿も印象的だったが、判定は29-28で、キング・モーの勝利でリベンジ成功を果たした。
日本の「RIZIN」のように無差別級という概念があまり無いアメリカのリングでこれだけのウェイトハンデの試合が敢行される試合は珍しく馴染みがない。一つ釈然としないのが、言動からヒールという位置づけのキング・モーに対して勝利後も容赦なくブーイングが浴びせられたことだ。
昨年末の「ベラトール」石井慧戦の僅か13日後にミルコ・クロコップと対戦を強行にも、敗れたとはいえ称賛の声がたえなかったことを考えると、今回の勝利の価値への理解が全く足りないことが残念でならない。
そんなキング・モーだが、「ベラトール」の勝負イベントともいえる6月のニューヨーク大会で、ライトヘビー級の元UFCファイター、ライアン・ベイダーとの対戦が決定した。33歳まだこれからというタイミングで自らUFCを去ったベイダーと、円熟期を迎えたキング・モーの対戦も要注目である!