1.5東京ドーム大会でNEVER無差別級6人タッグ王座を奪取して以来、いつの間にか田口隆祐率いる、正規軍や外国人選手のゆるやかな連携によって体をなしてきたタグチジャパン。

ここ一年、ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポン、CHAOS、BULLET CLUBなどに比べると棚橋弘至のトップ戦線離脱を筆頭に、徐々にユニット内抗争で後手を踏んできた正規軍の中で「選手の育成と再生」という、これまでのプロレスユニットの中にはないアプローチで拡大を試みている。

最近では4月4日の後楽園ホールで田口、棚橋、リコシェ組がSANADA、EVIL、BUSHIのロス・インゴベルナブレス・デ・ハポン勢を打ち破り第12代王者になり、4月9日の「戦国炎舞-KIZNA- Presents SAKURA GENESIS 2017」でも、田口、棚橋、リコシェ、ジュース・ロビンソンがBUSH、EVIL、SNADA、内藤哲也の8人タッグ戦に圧勝し、いつの間にか乗りに乗っているユニットとして認知されるようになった。

NEVERに挑戦する際も、田口と棚橋、中西学というテーマなき急ごしらえのタッグチームがロス・インゴベルナブレス・デ・ハポンのチームを撃破。その後ロスインゴとの抗争を軸に田口監督、A代表、強化指定などサッカー風に招集メンバーを入れ替えるというユニット制度を導入して来た。

結局のところタグチジャパンの特徴、過去のプロレスユニット史の中から似たようなものがなかなか見当たらないのは、新日本プロレスの本流である「正規軍」が対抗馬こそあれど、ここまで「冬の時代」を迎えたことが過去の歴史で無かったのも理由であろう。

乱暴な言い方をするとタグチジャパンは単なる「正規軍の寄せ集め」であり、ユニット派閥から漏れた外国人選手の「駆け込み寺」であるが、かつての全日本プロレスが標榜したような「明るく楽しく激しいプロレス」を実践している。

田口の「尻」を強調した攻撃と受け、監督キャラから繰り出すコミカルな連携、チープな対戦相手のものまねコスチュームといった「おちゃらけ感」は、カッコよさとは縁遠いが、不思議なことに正規軍内の選手の育成と再生を行う装置として徐々に機能しはじめている。

育成という観点でいうと、ジュース・ロビンソンがこのユニットに加わってから徐々に個性を発揮、遂に内藤哲也のIWGPインターコンチネンタルのタイトルに標準に合わせるまでに成長を見せている。かつて新日参戦直前にタッグパートナーとして一瞬組んでいた内藤の「塩対応」に1年半以上虎視眈々と機会をうかがってきたジュースは、メキメキと力を着け、今後のシリーズから夏にかけての台風の目になりそうだ。もしかしたら数年後に外国人エースの筆頭候補に上がっている可能性も十分に考えられる。

またKUSHIDAが2連敗でタイトル戦線から一歩後退し入れ替わる形でリコシェが打倒高橋ヒロムに名乗りを挙げた。長年新日ジュニアの中で実力を発揮して来た選手ではあるが、ここで再びタイトル挑戦への切符を掴むのは時間の問題だろう。

ユニット内の一つのテーマといえば「再生」という言葉も浮かぶ、トップ戦線から外れ小休止中の棚橋弘至。エースらしい元気な姿は相変わらずだが、オカダの安定政権を揺るがすという意味でも、やはり強い棚橋の復活を待っているファンは多い。

そしてもう一人高橋ヒロムとの2度のタイトル戦に敗れ、特に両国大会では「116秒瞬殺」というショッキングな負けを喫したKUSHIDA。5月の「レスリングどんたく 2017」まで試合にはでない模様だが、復活にはなんらかのカンフル剤が必要なのは確かだ。その意味では「かつての絶対王者」のレストア工場としてタグチジャパンがどのように機能していくのか気になるところである。

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