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 北朝鮮情勢をめぐって緊張が高まる中、アメリカ軍が海軍の空母打撃群を朝鮮半島近海に向かわせている。トランプ大統領はメディアに対し「我々はとても強力な艦隊を派遣している」と話しており、到着はあす、故・金日成首席の生誕105周年記念日になるとみられている。

 アメリカ軍は横須賀に原子力空母「ロナルド・レーガン」を配備しているほか、複数の関係者によると、11日夜、沖縄県の普天間基地と嘉手納基地に、ミサイルを迎撃するための「PAC3」部隊を展開したという。

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 自衛艦隊司令官、国家安全保障局顧問を務めた香田洋二・元海将の推定によれば、アメリカ軍は空母打撃群として駆逐艦(トマホーク約30発搭載可)や、巡洋艦が少なくとも5隻を朝鮮半島近海に派遣、そして合流の可能性があるものとして、西太平洋に展開中の駆逐艦、原子力潜水艦(トマホーク154発搭載可)などが考えられるという。アメリカがこれだけの軍事力を具体的に配備する背景には、やはり"最後のチャンス"だという認識があるからだという。

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 さらに、アメリカは横田基地に無人偵察機「グローバルホーク」を配備する。「今あるもとしてはこれ以上のものはない」(香田氏)というその偵察能力で北朝鮮の正確な情報を得ることができれば、外交交渉で戦争を防ぐことにもつながるという。「北朝鮮もこれで見られているということはわかっている。アメリカも北も戦争はしたくない。できるだけ戦争をしないで、どこで妥協点を見出しうるか」(香田氏)。

■「間違いなく日を追って強まっている。限りなく本気に近づいている」

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 核開発を急ぐ北朝鮮では、6回目の核実験の兆候が見られている。香田は「これから実験をするということであれば、大陸間弾道弾(ISBM)、あるいは中距離弾道弾に実際に搭載できるほどの核の小型化には成功していないとの見方もできる」と指摘する。

 しかし、北朝鮮の核開発完了はもはや時間の問題だ。

 「これまでアメリカは、北朝鮮がミサイルを発射する度に"技術の向上がみられる。しかし現在のところ本土には届かない、したがって国民の脅威にはならない"との認識を示していた。ところが去年の秋頃から、近いうちに本土に届く、しかもそれに核が載るという可能性が出てきて、国民が直接の脅威に晒される時がまもなく来るという認識に変わった。それをいかに阻止するか、今が最後のチャンスではないか、ということで軍事力を展開している」(香田氏)。

 「口にするのは心地いいことではないし、聞きたくない話だが、日本ではコントロールできない、厳しい軍事的対立が起きている。アメリカのこれまで約25年間にわたる外交努力、軍事的圧力で止められなかった。ここまで来てしまった」とし、情勢の緊迫度について「間違いなく日を追って強まっている。限りなく本気に近づいている」「核という最大の破壊兵器を北が持つ時、人類はどう向き合うのか。外交手段という、ある意味"綺麗ごと"だけで止めるのが望ましいと言うのは簡単だが、これこまで力を見せて、それでも止められなければ…」とコメントした。

■金正恩政権転覆の可能性は?

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 「シリアに対しての攻撃は、あくまでも毒ガスに対するもので、アサド政権の転覆は図っていない。北朝鮮に対しても、核とその運搬手段を中心に攻撃すると思われる。今の北朝鮮の体制が生き残ってくれれば、アメリカとしても道義が立つし、中国としても現状が維持できる。あくまでも金正恩の抹殺ではなく、人類の共通の敵である核兵器と毒ガスに絞ってと言われれば、中国も反論しづらくなる」(香田氏)。

 今後を占う上で、そんな中国と北朝鮮の関係に目を向けることも必要不可欠だ。香田氏は「北朝鮮に対する中国の影響力は明確に落ちているものの、アメリカとしては"北朝鮮の後見人は中国"という認識は持っており、"できなければ私が出ますよ"というスタンス」と話す。

 一方、アメリカによるシリアへのミサイル攻撃を一番深刻に受け止めたのは、中国の人民解放軍だという。

 「オバマ政権の末期から、人民解放軍の内部文書がいくつか出てきているが、それを読むと、アメリカは軍事行動に出ないという楽観論が支配的だった。ところが今回のミサイル攻撃は、その楽観論を覆すことになった。戦争をしないことが経済発展の大前提、という立場の中国としては、アメリカとの戦争をさせないよう、北朝鮮に対する圧力をより強めるのではないか」と推測した。

■自衛隊にできるのは警戒態勢を最大限にすること

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 朝鮮半島有事で懸念されるのは日本への影響だ。

 香田氏は「自らの体制を保障するという意味で北が一番意識すべきはアメリカ。確かに日本はアメリカの同盟国で、米軍に基地を提供し、支援をしているが、日本にあまりエネルギーを注入しすぎると、アメリカに本来投入すべき力が削がれる。私がもし金正恩のスタッフだとしたら、常識的に考えて8割以上の力はアメリカに対応する。残りの2割程度をいかに日韓に投入するか。これが軍事。冷静に見積もることが大切」と指摘。

 「とはいえ、ミサイルなど、ある程度のものが来る可能性がある。弾道弾に対応できる能力は、イスラエルが多少持っているが、基本的にはアメリカと日本しか持たない能力。自衛隊が今できるのは、日本の周りの海、空の最大限の警戒態勢を敷くこと。過去には工作船事案などもあったので、ひょっとしたら特殊部隊等を送り込んでくる可能性もある。警察も含め、警戒監視のレベルを最高にし、不測の事態に備える。今の法制度下で自衛隊ができる任務は、当面ここまで」とした。(AbemaTV/AbemaPrimeより)

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