羽生善治三冠(46)が、史上最年少棋士の藤井聡太四段(14)について「研究量を感じる」と評価した。4月23日にAbemaTV将棋チャンネルで放送された「藤井聡太四段 炎の七番勝負~New Generation Story~」の最終、第7局で対戦。111手で敗れた棋譜を見ながら、公式戦でもデビュー以来無傷の13連勝している藤井四段が繰り出した好手を振り返った。
図は26手目△3三銀と上がった局面です。
ここから藤井さんは▲4五桂といきなり跳ねてきました。現代風のスピード感あふれる一着です。最近は隙あらば桂を跳んでくる将棋が多くなりました。指し手に迷いがありませんでしたし、気楽に跳んでいる感じがしましたね(笑)。指し慣れている、経験値がある格好に進んでいるんだろうと思いました。どの形なら桂跳ねが利き、どの形なら桂跳ねが利かないかということがはっきり分かっているのでしょう。この辺りは藤井さんの研究量を感じます。
▲4五桂以下は△2二銀▲2四歩△同歩▲同飛△4二角▲3四飛△2三銀▲3五飛△4四歩と進んで36手目の局面です。
ここから▲7一角△7二飛▲5三桂成△同金▲同角成△同角▲8五飛△8二歩▲2五飛と進みました。駒割りは角桂と金の交換で後手が大きな駒得をしています。しかしこれほどまでに駒損しているものの先手が指せている、という感覚が私にはなかったので新鮮だったですね。後手は歩切れ、一方の先手はたくさん歩を取っているのが大きいです。現代将棋では本譜のような筋を警戒しておかないといけないと勉強になりました。
進んで図は52手目に玉を4一から3二に上がって陣形を整えたところです。
ここで私は▲5六銀のようなゆっくりとした手を予想していたのですが、いきなり▲3五金と打たれた手には意表を突かれました。ゆっくりしていると後手に歩切れを解消されてしまい、そうなると駒得が徐々に生きてくる展開を嫌ったものでしょう。▲3五金以下は△7五歩▲同歩△同飛▲2四歩△1二銀▲5六銀△5四銀▲6六銀△7三飛▲7七歩と進んで63手目の局面です。7七や3三の地点に歩を埋めて自玉を固めるのは深浦戦でも見られた手で、藤井さんの好みだと思います。ここで私の次の一手が敗着級の悪手でした。
図では△3四歩▲2五金△6五歩▲5五銀左△同銀▲同銀△6三桂という順をずいぶんと読んでいました。これで良ければいいのですが▲6四銀打で後手が困ります。以下△5五桂▲7三銀成△同桂▲5一飛は後手が悪い。そこで図から△8三飛と寄って攻めのポイントを変えたのですが▲4五歩△9五桂▲8六歩△4五歩▲4四歩と進められてはっきり悪くなり、以下はどうしようもなくなってしまいました。
局後に気がついたのですが、図から△3四歩▲2五金△6五歩▲5五銀左のときに△6四桂という勝負手がありました。以下▲5四銀△5六桂▲同歩△5四角ならまだ勝負できる形で難しかったと思います。
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