中学生棋士・藤井聡太四段(14)がデビュー以来、無傷の19連勝を達成した直後、先輩棋士の1人がつぶやいた。「実力に段位が追いついていない」。AbemaTV将棋チャンネルで解説していた、佐藤慎一五段(34)の言葉だ。その圧倒的な強さながら、規定に沿えば藤井四段はプロとして最低段位の四段。まさに“規格外”の実力だ。既に将棋界の数々の常識を打ち破っている藤井四段と、将棋界のシステムを改めて確認した。

 将棋界は奨励会と呼ばれる6級から三段までの棋士が戦う場があり、三段リーグを勝ち抜いた2人のみが、四段になり晴れて「プロ棋士」になる。そこから先は、通算の勝利数やタイトル獲得・挑戦などにより昇段する。最高段位は九段で、一度昇段すれば降段することはない。竜王戦の本戦出場を決めた藤井四段だが、仮に挑戦権を獲得すれば、一気に七段、竜王になれば八段まで昇段する。実質的なデビュー1年目にして、段位の上でもトップクラス入りすることは可能だ。

 先輩棋士たちの想像を超えているのは、段位とのギャップだけではない。底が見えない強さに驚いている。当初、詰将棋回答選手権の優勝者ということもあり、もっぱら終盤の強さが注目されていたが、今では序盤・中盤を含め、トータルでの強さが評価されている。先輩棋士たちが「今回ばかりは藤井さんも苦戦するのでは」「中盤が勝負の分かれ目」など予想をするものを、ことごとく上回り、まさに解説泣かせの強さを誇っている。

 無類の強さを誇る天才棋士に、先輩棋士もプレッシャーを感じ始めている。将棋界の中では「どこまで連勝が伸びるのか」という視点から、徐々に「誰が連勝を止めるのか」という視点にシフトし始めている。この雰囲気を感じてか、対戦者にいつもと違う感情が生まれていると指摘する棋士もいる。「力が入りすぎるというか、止めようというか。そういう感じの人もいるようです」。対戦者にとっても、多く報道が詰め掛ける対局は、未体験であることも多い。普段どおりに指せていないのは、むしろ先輩棋士の方である場合もある。

 いい意味で予想を裏切り続ける藤井四段と、次戦で対決するのは王位戦の挑戦者決定戦にまで勝ち残っている実力者、澤田真吾六段(25)。澤田六段もまた、段位を超える力の持ち主だ。タイトル挑戦へと続く予選の一局ではあるが、現在の将棋界においてトップクラスの対局として、注目を集めることは間違いなさそうだ。

(C)AbemaTV

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