この記事の写真をみる(14枚)

■球団に足を運んでいる客層を徹底調査

 満員の観客が興奮に包まれる横浜スタジアム。DeNAが球団を買収して以来、観客数は一気に増加、2016年には総観客動員数が球団史上最高の約194万人と、2011年の実に1.7倍にまでなった。球団の経営も、赤字から黒字へと回復を果たした。その背景には、これまでにない発想で仕掛けられた数々のアイデアがあった。

拡大する

 その立役者の一人が、横浜DeNAの経営・IT戦略部長、木村洋太氏。木村氏は2012年に元外資系コンサルティング会社から球団に転職した当初、「370万人という、全国でも有数の人口を抱えている都市なのに、プロ野球の動員数は最下位。おかしいなと思った」と振り返る。

拡大する

 木村氏がまず取り組んだのは、球場に来ている客層について徹底的に調べ上げることだった。

 その結果、30代男性を中心とする層が多いことがわかったため、彼らを「アクティブサラリーマン」=「仕事が終わってから飲みに出かけたり、土日もアウトドアやスポーツを楽しんだりする層」と位置付け、メインターゲットに設定した。

 「一つ一つのプレイを細かく見るというよりは、友達と居酒屋に行く代わりにライブやフェスに行く感覚で、屋外でビールを飲むことを楽しむ、という方が多いことがわかったんです。また、彼らは周りにいるアクティブな女友達や家族も巻き込んでいくような特徴を持っています」。

■「アクティブサラリーマン」のために用意した工夫の数々

 そんな「アクティブサラリーマン」のために用意した、とっておきの観戦席が「BOXシート」だ。特に最上段にあるBOXシート「スカイバーカウンター」(1人6500円)には、専用のビールサーバーが付いている。さらに家族でゆったりくつろげるBOXシート(1人5500円)も作った。

拡大する
拡大する
拡大する

 また、「イニング間イベント」では、バズーカでスタンドに向かってゴムボールやTシャツなどのプレゼントを発射。スタンドでのダンスコンテストでは、優勝すればペアシートがプレゼントするなど、試合の合間にも様々な工夫を凝らした。

■球団と球場の経営が一体になり、飲食メニューの開発も可能に

 動員数増加の要因はそれだけにとどまらない。横浜スタジアム買収の結果、球団と球場の経営が一体となったことで、それまで球場が決めていたフード・ドリンクメニューの商品開発も同時に行えるようになった。

 試飲しながら作ったという、プロ野球球団として初めてのオリジナルビール、若手選手の寮で長年愛されてきた「青星寮カレー」、メンチカツ「ベイメンチ」など、地元企業と連携し、地域の食材も取り入れたメニューを次々と打ち出した。

拡大する
拡大する

 近年では、球団のグループ企業が球場を所有・運営する例を含めて、球団と球場の一体的な運営が浸透してきている。広島、ロッテ楽天は球団が指定管理者として運営にあたっている。一方、日本ハム、巨人、ヤクルトは所有、運営が別の企業で球団が球場使用料を払っている。日本ハムは札幌ドーム側に年間およそ13億円の使用料を支払っている。

拡大する

  スポーツ経営学者の小林至氏によると、「テレビ中継の放映権頼みという状態から脱皮し、球場収入が収益の多くを占めるようにならなければ、球団の経営は安定しない」と指摘する。

拡大する

 「株式公開買い付けによる球場の買収は勝負でした。賛同を得られなければ失敗ですから、公開買付けしている間も地元の方々へのお願い、ご相談をしながら、ご協力を頂きました。今までは"球場にとって一番いいテナントを選ぶ"という発想でした。2者で合計の利益が最大になるという形を取れるようになったのが大きな変化です。経営が一つになったことで、ターゲット層に向けた商品開発ができるようになりました」(木村氏)

拡大する

 新興企業だったDeNAによる球団買収には、当初疑問の声もあった。木村氏も「私も最初は色々な意見を頂いたが、最近では入ってきてくれてありがとうと言っていただけるようになりました」と振り返る。

 「野球なので、当然スター選手の存在やチームの強さは重要な要素だと思いますが、それだけじゃないよねというところで取り組んだ5年間でした。当時の中畑清監督が一緒に盛り上げていただいたおかげで、話題にもなりました。野球人としても素晴らしいという方ですし、我々ビジネスサイドにも協力してくださる方です」(木村氏)。

 以前は他球団のファンの方が多いということもあった横浜スタジアムだが、最近ではスタンドがベイスターズカラーに染まることも増えた。DeNAの選手たちもそれを実感しているといい、梶谷隆幸選手は「お客さんがよく入るようになりましたね。やりがいありますし、パワーをもらえます」と話す。

■「一種のテーマパークのようにしていきたい」

 去年10月から球団の舵取りを任された岡村信悟社長も「横浜の町を俯瞰して見た時に、みなとみらいから山下公園に向かう港に沿った"横軸"は発展しているが、一方、日本大通りから横浜スタジアムに向かう"縦軸"は比較的未発展なところも多い」と指摘、「横浜スポーツタウン構想」を掲げ、スポーツを中心とした街づくりに取り組む。

拡大する

 岡村社長は「スタジアムを閉じた空間にしない」として、今シーズンから試合のある日は外周エリアも「場内」と位置付け、来場者が快適に移動できるよう、混雑の緩和に取り組んでいる。さらに場外にはパブリックビューイングも設け、球場周辺にも賑わいのスペースを作っている。また、今年3月には球場外にカフェやオリジナルグッズを販売する新しい拠点「THE BAYS」を開業させた。

拡大する
拡大する

 球団は、さらに2020年の東京オリンピックで野球・ソフトボールの会場となる横浜スタジアムの大改築プランも打ち出している。

 木村氏は「お金では決して買うことのできない横浜の歴史にも重なっていけるようにしたいですね。世界の方々をお迎えするのに恥ずかしくない球場にして、周辺を含め、一種のテーマパークのようにしていきたいです」と力を込めた。(AbemaTV/AbemaPrimeより)

AbemaPrime スナック菓子「カール」東日本から撤退!カールおじさんの苦難 | AbemaTV
AbemaPrime スナック菓子「カール」東日本から撤退!カールおじさんの苦難 | AbemaTV
オトナの事情をスルーするニュース番組
【無料】AbemaPrime - Abemaビデオ | AbemaTV
【無料】AbemaPrime - Abemaビデオ | AbemaTV
見逃したAbemaPrimeを好きな時に何度でもお楽しみいただけます。今ならプレミアムプラン1ヶ月無料体験を実施しています。
AbemaNewsチャンネル | AbemaTV
AbemaNewsチャンネル | AbemaTV
AbemaTVは無料でテレビ番組が見れるインターネットテレビ局です!
【プロ野球】横浜DeNAベイスターズvs福岡ソフトバンク | AbemaTV
【プロ野球】横浜DeNAベイスターズvs福岡ソフトバンク | AbemaTV
横浜DeNA vs 福岡ソフトバンク
この記事の写真をみる(14枚)