『BEST OF THE SUPER Jr.』リーグ戦では優勝を逃したものの、IWGP Jr.ヘビー級王者として確固たる地位を築いているのが高橋ヒロムだ。新日本マットを席巻するロス・インゴベルナブレス・デ・ハポンの最新メンバーでもあり、内藤哲也と並んでいま最もその動向から目が離せない選手と言ってもいいだろう。
その活躍ぶりは、目覚しいとしか言いようがない。海外から帰国したのが昨年11月のこと。12月にロスインゴ入りし、今年1月4日にKUSHIDAが持つIWGP王座に挑戦すると、一発で獲得に成功してしまう。
その後もヒロムの存在感は増すばかり。2月11日、大阪大会でのドラゴン・リー戦(リートは海外でもライバルだった)、4月9日の両国大会でKUSHIDAと再戦すると必殺技の連発で衝撃の短時間決着(1分56秒)、4月29日にはリコシェとも激闘を展開している。いずれの試合も、インパクト絶大だった。
しかも、ヒロムは試合が面白いだけではなく、バックステージでもファンの目を釘付けにしてみせる。チャンピオンベルトを「ベルトさん」と呼んで会話したかと思えば、インタビュー中に完全に猫と化して「フシャー!」と息を荒げつつ人形を戯れる。まさに、時として内藤をも超えるほどの“制御不能”な奇行ぶりなのである。Jr.の地位向上を掲げ、ヘビー級に負けないカテゴリーにしようと目論むヒロム。確かに、その存在感は新日本でもトップクラスだ。
実力と個性を兼ね備えた高橋ヒロムという存在は、一朝一夕にでき上がったわけではない。デビュー戦は2010年。層の厚い新日本プロレスの中で、若手として苦しい闘いを味わってきた。『SUPER Jr.』に抜擢出場したものの、全敗で終わったこともある。
そんな「高橋広夢」は、イギリス、メキシコ、アメリカと長期にわたる海外遠征で実力を蓄えていった。プロレスは国によって、団体によってさまざまなスタイルがあり、それに順応して生き抜いていくだけでもかなりタフになるのだろう。メキシコではマスクマン・カマイタチとしても活躍した。
日本に一時帰国してメキシコCMLLの王座戦を行なったこともあるが、そのまま日本に戻ったわけではなく、再び海外へ。新日本Jr.のトップとなる自信をつけるまで帰らないつもりだったようだ。
つまり、昨年11月に戻ってきた時点で、トップ獲りを確信していたということ。そこには海外でのキャリアという裏付けがある。それを踏まえて今年に入ってからの名勝負の数々を見てみると、さらに味わいが増すのではないだろうか。
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