5月4日のWRESTLE-1後楽園大会で、征矢学を相手にW-1チャンピオンシップ2度目の防衛を果たした芦野祥太郎は、キャリア2年、27歳の若き王者だが、見た目や実績、刺激的な言動で物議を醸すなど、もはや若手とは呼べない存在感を見せている。
日本体育大学レスリング部出身の芦野は、2014年8月、馳浩の推薦によりWRESTLE-1に入門。2015年2月13日、後楽園ホール大会で熊ゴローを相手にデビュー戦を勝利で飾る。バックボーンであるレスリングを活かしたファイトで頭角を現すと、近藤修司、河野真幸、村瀬広樹と共に「トリガー」を結成し、2016年6月にはデビューから1年4か月で当時KAIが持っていたWRESTLE-1チャンピオンシップに初挑戦するも敗北。2017年3月20日の後楽園ホール大会で、同じユニットの河野真幸の持つWRESTLE-1チャンピオンシップに再び挑戦した芦野は、必殺技のアンクルロックで勝利して悲願のタイトル獲得を果たした。
その試合後、同じトリガーの近藤修司に祝福されたが、「次はテメエだ」と次期挑戦者に指名。タイトルマッチ前の大会では近藤を襲撃、バックステージで大の字にさせるなど、近藤の本気を引き出すべく挑発行為を続けてきた。そして迎えた4月19日の後楽園ホール大会の防衛戦は、感情をぶつけ合うような激しい試合となったが、アンクルロックで近藤からタップを奪い初防衛に成功。試合後、芦野は「これでトリガーのリーダーはオレですね。まあ、もういいでしょ、ボクは抜けるんで」と脱退を表明し、エプロンでうずくまる近藤をセコンドの河野のもとへ蹴落とした。
そして、征矢を下して2度目の防衛に成功した芦野は、世代交代を謳う若手軍・NEW ERA(ニューエラ)を挑発。タッグベルトから陥落したばかりの土肥孝司に「シングルプレイヤーやればいいじゃないですか? そのきっかけ与えてあげましょうか?」とベルトへの挑戦権をちらつかせ、6月6日の後楽園ホール大会でベルトを賭けて闘う事が決定した。その先にある芦野の目的は、WRESTLE-1の全ユニット解散で、「ユニットとかしょうもないんですよ。一つずつ解体していきます。それでWRESTLE-1を土台からつくり直す」と豪語。言いたい放題で賛否両論渦巻く若き王者の勢いは、しばらく止まりそうにない。
■「DNAが生んだ怪物」と呼ばれる樋口和貞
DDTプロレスリングの若手主体プロジェクト・DNAに所属し、「DNAが生んだ怪物」と呼ばれる樋口和貞は元大相撲力士で、キャリアは2年半ながら185cm・113kgの堂々たる肉体を誇っている。2014年に力士を廃業し、DDTの練習生となった樋口は、同年11月28日、北沢タウンホールで行われたDNA旗揚げ戦での梅田公太戦でデビュー。この試合に勝利し、デビュー戦を飾ったあとボーナストラック的に組まれたタッグマッチで先輩の勝俣瞬馬をオリジナル技である轟天(カナディアン・バックブリーカーからのノド輪落とし)で叩きつけ、完勝をあげて大物ぶりを見せつけた。
2015年5月24日の札幌大会では、「いつでもどこでも挑戦権」を行使して当時HARASHIMAが保持していたKO-D無差別級王座に挑戦するも敗北。デビュー以来初の直接の負けとなった。2016年10月21日に新宿FACEで行われた、「DNA-Grand Prix 2016」優勝決定戦でマイク・ベイリーと激突した樋口は、ベイリーのシューティングスター・ダブルニードロップで敗北。2017年5月10日のDNA初の後楽園ホール大会の「DNA最強決定戦」と題したメインイベントで、ベイリーと再戦した樋口は、ベイリーの得意のキックや空中殺法で翻ろうされるが、最後は必殺の轟天でベイリーに雪辱を果たした。
試合後、高木三四郎大社長から、DNAを卒業し、DDT所属となることを告げられた樋口は、「DNA所属として精一杯戦って7月4日の後楽園を満員にしたい」と直訴し、高木も次回大会で卒業記念試合を行うことを受諾した。樋口は4月29日に行われたDDT後楽園ホール大会で、タッグマッチながらHARASHIMAからピンフォールを奪取。さらにDDTの最高峰ベルトであるKO-D無差別級王座に挑戦できる「いつでもどこでも挑戦権」も再び獲得し、一気にDDTのトップの座も射程圏内に収める位置まで登りつめている。
■新日本プロレスの“スーパールーキー”
新日本プロレスの“スーパールーキー”は、今年デビューしたばかりの岡倫之と北村克哉だ。共にアマチュアレスリングでの輝かしい実績を持ち、岡は185cm・115kg、北村は183cm・120kgの筋骨隆々の肉体を誇り、“マッスル若獅子”とも呼ばれている。2016年1月3日、ディファ有明で開催された「大プロレス祭り」にて、岡と北村の新日本プロレス入団が発表され、公開記者会見が行われた。デビュー前の新人の入団が発表されるのは近年の新日本プロレスでは異例であり、それほど新日本プロレスが期待している新人であるというのが分かる。
約1年間の厳しい練習期間を経て、岡は2017年1月3日、ディファ有明にて開催された大プロレス祭りにて永田裕志を相手にデビュー。北村は同年3月13日、福井県産業会館・1号館展示場大会にて岡とのタッグでタマ・トンガ & タンガ・ロアを相手にデビューを果たした。共にまだ自力での白星は無いが、若手育成を前提とするライオンズゲート・5月9日 新宿FACE大会では、他団体の選手が多く出場するなか、岡と北村はヤングライオンという概念をぶち破るような強烈なインパクトを見せつけた。
今回、紹介した芦野、樋口、岡、北村は全員、アマチュアレスリングや相撲などのバックボーンがあり、デビュー時には既にプロレスラーとしての体も出来上がっていた。キャリアや格などの順列を破壊してプロレス界の新しい主役に躍り出るのは誰か? 規格外の若手レスラーたちの今後の活躍に期待したい。
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