新生K-1の第1回大会でトーナメント優勝、それ以降スーパー・ライト級王座を守り続けてきたゲーオ・ウィラサクレックがついに敗れた。
(ボディを効かせた感触もあったという野杁。ギリギリの勝負を制してみせた)
6月18日のさいたまスーパーアリーナ・コミュニティアリーナ大会でゲーオに挑戦したのは野杁正明。壁の向こうにあるメインアリーナで行なわれた旧体制のK-1甲子園で優勝して以来、卓越したテクニックで“怪物”とも呼ばれた選手だ。
昨年の世界トーナメントではゲーオに敗れている野杁。今回は必勝を期し、徹底的にリスクを避けてローキックから三日月蹴りで足とボディを攻めるのが狙いだったという。確かに、強引にパンチを振り回してもゲーオには当たらないだろう。
しかし、その蹴りもはっきりとダメージが分かるほどにはヒットさせてくれないのがゲーオのうまさ。逆に要所でパンチをまとめ、K-1らしいアグレッシブさも見せる。両者とも決定打がなく、クリンチも多い展開で本戦の判定はドロー。ゲーオ優勢にも見えたが、野杁も「勝ったと思った」と語っているからリングでの実感は違ったということか。
そして延長も決め手がなかったが、2-1のスプリット・デシジョンで野杁が勝利。ゲーオを陥落させ、ついに新王者の誕生となった。「つまらない試合になってしまったけど、とにかく今日は勝ちたかった。泥試合でもなんでもいいから。結果が出せてよかったです」試合後、野杁はそう語っている。
難攻不落のゲーオに勝つことと誰が見ても面白い試合をすることの両立はそう簡単ではない。この日の野杁は、勝つことを最優先させた。判定が微妙だっただけに物議を醸してもいるが、野杁としては完璧ではないにしてもやるべきことをやったという感覚なのだろう。それをジャッジも見ていた、ということか。
もちろん、これからはチャンピオンとして観客を納得させる試合をしていくことが重要だ。野杁自信「絶対王者になりたい」とコメント。ゲーオが希望するリマッチを受ける必要もあるだろう。ともあれ、王座は動いた。この日のきわどい勝利への見方も、野杁のチャンピオンとしての闘いぶりで変化するのではないか。
文・橋本宗洋