東京都議選の告示まで3日というタイミングで、築地・豊洲問題で小池都知事が会見を開き「築地は守る、豊洲は生かす」「豊洲市場は冷凍冷蔵・加工等の機能を強化し、ITを活用した総合物流拠点とする」「東京都は事業者の皆様、都民の皆様の信頼回復に徹底的に取り組む」という3つの方針を示した。
それによると、築地市場跡地を5年後を目途に再開発、"新たな築地"として再生させる一方、豊洲市場については「冷凍冷蔵加工などの機能を一層強化して、ITを活用するユビキタス(常にコンピューターにアクセス可能な)社会の物流、総合物流拠点となる中央卸売市場に」「湾岸地域の物流センターとしても有効な立地。配送機能、市場外流通機能を維持、発展させることによって、新たなビジネスチャンスが出てくると考えている」としている。
この「ITを活用した総合物流センター」という言葉に、ネット上では「豊洲をAmazonの倉庫みたいにするってことだよね」「築地復帰後の豊洲のITを活用した総合物流センターって、それまんまAmazonですね」「Amazonにでも売っぱらうんですかね」など、にわかに"豊洲Amazon倉庫説"が囁かれ始めた。
当のAmazonは生鮮食品にも力を入れはじめており、日本でも4月から野菜、果物、肉、鮮魚などを注文できる「Amazonフレッシュ」のサービスを東京の一部地域で開始した。16日には自然・有機食品の米小売大手ホールフーズ・マーケットの買収を発表。新鮮さを売りにする超速便サービスの展開に、まさに豊洲はうってつけのようにも見える。
豊洲Amazon説は、果たして現実のものとなるのだろうか。
慶應義塾大学の若新雄純・特任教授は「役所では"ITを活用した"という言葉をよく使う。今回も単なる"物流センター"ではなく、ITという言葉を付けておくことで、何か新しいことをするかのようになんとか見せようとしているのでは」と指摘。流通経済大学の矢野裕児教授も「ITという言葉が出た途端にネット通販、そしてアマゾンを連想してしまっているが、今の物流センターはどこもITを駆使している。そういう意味ではITを活用=アマゾンというのは短絡的だと思う」と苦笑する。
ただ、矢野氏は地価が高いことを除けば、豊洲は物流拠点としては利便性の高い場所だと指摘、「Amazonは他の通販会社と比較しても、物流拠点の整備にお金をかけてきた企業。今後も事業は成長していくはずなので、将来的には物流センターも足りなくなると思うが、郊外では働く人がなかなか集まらないという課題もある」と、Amazonの拠点がより都心に近い場所に作られることもありえない話ではないとした。
実際に「Amazonフレッシュ」の倉庫なども取材している東洋経済新報社の長瀧菜摘記者は「世界戦略の中で倉庫を作っているので、『ここが空いたからラッキー』ということで安易に移る会社ではないと思う」と話す。その一方、「Amazonプライム会員は都内に住む人が圧倒的に多い。小規模だがすでに都心に近い所に拠点を作り、地域の業者と配送網を構築、1時間以内に届く体制を作っている」と話し、豊洲に生鮮食品用の拠点を設置、それらをすぐに配送できるサービスの需要が出て来る可能性を示唆した。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)