麻雀漫画家歴36年目を迎えた男がいる。片山まさゆき氏(56)だ。「本当に麻雀が好きなんですよ。だって毎日のように打っているんですから」と、連日打ち続けても増すばかりの麻雀熱が、そのまま作品に反映されている。女流プロの成長を描いた「打姫オバカミーコ」は、実際の女流プロにも影響を与え、ファンにとっては入門書としても愛読されている。長年、麻雀を描き続けてきた片山氏に、麻雀との関わり、ストーリーの構築について聞いた。
人が生きていく中で無視できない見えない力「運」には、積極的に関わっている1人だ。「麻雀でも人生でも“運”が一番大事。僕は本気で運を信じているんですが、頼ってはダメなんです。もちろん技術も鍛えなければならないけど、鍛えた技術に運量をプラスしていかないと麻雀でもなかなか勝てません」。プレイヤーとしても、重要な対局な前には好きな酒を断つなど、運が高まるように願掛けをする。「阿佐田哲也さんの小説でも、運について書かれているので、そこから影響を受けているのかもしれませんね」と、日々の生活から運量アップを意識して過ごしているという。
「ぎゅわんぶらあ自己中心派」「ノーマーク爆牌党」など、数々の片山作品の中で、特に運について意識した作品が「牌賊!オカルティ」だ。「麻雀でよく話題になるオカルトシステムに頼って打ってみたらどうなるのかなと思い、実験的な意味合いで描いた作品です」と振り返った。牌効率をはじめ、デジタル(確率)論が若手雀士を中心に叫ばれる中、あえてオカルトをぶつけた。「オカルトってタブー視される面もあるけれど、実際、オカルトでいうところの流れ論を信じている人は多くいます。僕も本気で流れ論を信じています。強硬に押しつける人は嫌いですが」と付け加えた。アマチュアも運の流れをエッセンスとして取り入れた方が、麻雀は楽しくなるというのが持論だ。
麻雀漫画家・片山として、作品に登場するアガリのシーンは、自らの実戦譜がモデルになっていることが多いという。「自分の実戦譜で、印象に残った牌譜をメモして、漫画に投影していることが多いですね。実際、漫画に出てくるアガリの半分以上は僕の実戦譜です。ストーリー構成の観点で言えば、最終的なアガリの形がおもしろいわけではなく、そこに至る道中で生まれるピンポイントなアガリこそ芸術作品だと思っています」と、アガリに到達する過程を重視している。自身の麻雀ライフが作品とシンクロしているだけに、打つことも仕事の一部だが「僕の場合は、もう少し麻雀を控えた方がいいのかもしれませんね。麻雀と漫画、どっち取る?って聞かれたら、結構迷わないんですから」と笑った。
プレイヤーとしても数々の対局番組に登場してきた片山氏は、7月1日からAbemaTV麻雀チャンネルでスタートした「麻雀駅伝2017」にアマチュア連合のメンバーとして出場する。「今回はチーム戦なので勝負にこだわってガチガチに打ちます。派手さを封印した地味な麻雀も、よく見ると面白い部分がいっぱいあるんですよ。そこを拾ってもらえるかどうかは、解説者次第でもありますが」とエンターテインメント要素を抑え、チームのために身を捧げることを宣言した。チーム戦ならではの打ち筋が、後の作品に登場するかもしれない。【福山純生】
◆片山まさゆき 1959年4月20日、千葉県出身。1981年にプロデビューし、以降麻雀漫画で多数のヒット作を輩出した、麻雀漫画家の第一人者。「ぎゅわんぶらあ自己中心派」「スーパーヅガン」「打姫オバカミーコ」など後にゲーム、アニメ、ドラマなどになった作品も多い。プレイヤーとしては、竹書房・近代麻雀主催の日本最大級の麻雀大会「麻雀最強戦」で第1回大会の優勝者となっている。
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