脅威的なスピードで進む北朝鮮の核・ミサイル開発。新型弾道ミサイル「北極星2」は、迎撃をかわすための軌道修正能力を備えている上、固体燃料を使うことで発射準備にかかる時間はわずか数分とされ、探知して破壊するのは極めて困難だという。さらに北朝鮮は複数の弾道ミサイルの同時発射実験も行なっているが、一隻のイージス艦が同時に迎撃できるミサイルは2発までとされているため、撃ち漏らしの可能性もある。
そして北朝鮮の脅威は、ついに"レッドライン"を越えようとしている。朝鮮中央テレビは4日、「新たに開発した大陸間弾道ミサイル『火星14』の試験発射に成功した」と報道した。飛行中に弾頭部分を切り離す2段階式の新型ミサイルで、通常の軌道よりもはるかに高い「ロフテッド軌道」で打ち上げられ最高高度は2500km以上、ハワイやアラスカが射程に入るとみられ、落下速度が非常に早く、迎撃は困難だという。
自民党の佐藤正久参院議員は5月、「ロフテッド軌道に対しては限界があるというのも周知の事実です。やはり自民党が提言したように、『敵基地反撃能力』を持つ検討も進めないと」と発言している。
防衛大臣も務めた石破茂衆院議員が8日、AbemaTV『みのもんたの夜バズ!』に出演。「日本人が今までほとんど正面から考えてこなかった核抑止力とは何だ、ミサイル防衛の確実性とは何だ、国民避難とは何だということを政府として考え、国民に向かって語らなければいけない」と訴えた。
石破氏は敵基地攻撃能力について「"座して死を待つのが憲法の予定するところではない"というのが、昭和30~40年代に確立した国会での答弁。そしてそれは自衛権の行使」と説明。北朝鮮が弾道ミサイル4発の同時発射実験を行ったことを念頭に「何発いっぺんに降ってくるかわかりません、日本のミサイル迎撃能力を超えたものが降ってきますとなったら、もうすでに"急迫不正の武力攻撃"があるわけだから、これは反撃でしょ。自衛権の行使ができる状況になってるわけで、反撃をするというのは当然のこと」との認識を示した。
一方、「問題は、それをいつ行使するか。"わが国に対する急迫不正の武力攻撃"の"おそれがある段階"では早過ぎ、被害が発生してからでは遅すぎる。じゃあどこなんだというと、"着手した時"だということになっている。この"着手"とは、ミサイルが直立した時点だと思っています。しかし、今から十数年前は燃料が液体だったので、燃料を注入するのに2~3時間かかったので、その間に叩くことも考えられたが、今は固体燃料になったので、すぐに発射できる。そして移動式の発射台だからどこから撃つかも分からない」と、実際の運用の難しさを説明した。
また、具体的な敵基地攻撃の能力については、「日本は1機100億円のF-15を200機持っている。1機120億円のF-2もある。これで空爆すべきだろうと言ったひとがいたので、そんなことできませんと、国会で答弁したことがある。だって、どこにミサイル発射台があるか正確に把握する能力を日本は持っていない。仮に命令が下ったとしても、向こうには迎撃ミサイルもある、迎撃戦闘機もある。そうなると、燃料を食うかなり難しい飛び方を続けなければならないし、その能力は乏しい。それでも行けというのは、戦時中の特攻隊と何が違うんですか、そんな命令できませんと言いました」と話す。
さらに自衛隊への導入が検討されていると報じられる巡航ミサイル「トマホーク」についても、「アメリカとイギリスしか持っていないが、アメリカはかなりの信頼関係の下にイギリスに供与している。アメリカ合衆国にその技術を供与してくれますか、そしてどこにあるかという情報がきちんと提供されますかという話から始めしないといけない。そして、日本独自の判断で撃ったとして、その後どういう景色が展開しますか、ということまで詰めて考えないと、持てばいいじゃないかという簡単な話ではない。日本のイージス艦に積むことも可能だが、どこに基地があるのかわからないのにトマホーク撃っても仕方がないし、抑止力にはなり難い」とコメントした。
その上で石破氏は核抑止力の問題にも言及。「憲法上核保有は禁じられていないというのが政府としての立場です、しかしいわゆる有名な非核三原則が国是になっているので、核保有論が出てくると、じゃあNPT体制を日本から壊すのということになるし、核燃料は供給してもらえなくなります。そこで、NATOのニュークリア・シェアリング(核の共有)という考え方がある。ドイツだってオランダだってベルギーだって持っていないが、ニュークリア・シェアリングをすることによって、自国の抑止力を高めている。そういう話を私たちは国民に向けてしなきゃいけない。ただ、すぐにお前は核兵器を持つのかという話になってくるが…」と話した。(AbemaTV/『みのもんたのよるバズ!』より)
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