6月某日、我々「Abema格闘TIMES」編集部は後楽園ホールでプロレスを観戦。技をかけあったりジャレながら帰社・・・するはずだった。
編集部のケータイにはおびただしい数の着信履歴が残っていた。あの伝説のラッパー、D.O氏からの電話であった。電話に出ると、怒れるラッパーは後楽園ホール近くの居酒屋へ緊急招集を発令したのだった。
■後楽園ホールの階段は“刃牙の家”
D.O:お前ら、後楽園ホールの階段を降りてきたか?って話。
編集部:は、はい・・・
D.O:まさか、あの階段、普通に降りてないよね?あの階段は、後楽園の歴史が刻み込まれまくってるって話。
色んな団体と絡んでるんですけど、やっぱメジャーの団体というか、新日ってルーツの一個なんですよね、日本のプロレス界の。
僕はアントニオ猪木会長と懇意にさせていただいてるんですけど、その猪木会長の根っこというかルーツでもあり、日本のプロレス界の根っこでもあるわけです、新日本プロレスは。
最近改装されたんですけど、新日の練習場っていうか寮とか会社が全部入ってる建物、あれはもともと猪木会長の自宅で、今も変わってないです。その自宅の中をくり抜いて、リングをブチ込んで、デスク並べて、ほんでもってそこに宿泊施設的な、若い人たちから看板選手までがそこで共同生活するような・・・その根っこを作っておっぱじめたのも、猪木会長ってわけよ。
で、もっと遡ったら力道山先生の話。あの方から、日本のプロレスのシーンはすげーデカくなったと思うんですよ。力道山先生もリスペクトするお師匠さんがいるので、そこからすべてが始まったという話ではないんですけど。かといって、今の歴史に直結する根っことして、やっぱり力道山から、アントニオ猪木とジャイアント馬場。そんで、今のプロレスシーンに繋がるんじゃねえかな、みたいな。
そういうの感じながら階段を下りたのか、お前らは?って話だメーン?
D.O:馬場のヴァイブスと猪木のヴァイブスがずっと、あの階段はあの時のまんま止まってるんですよ。
三沢(光晴)と(ジャンボ)鶴田と、田上(明)の悪口が書いてあるんです。あの時、間違いなく全日としてムーブしてて、NOAになる前なんじゃない? 馬場さんの名前も乱立してて。かと思ったらパンクラスのことだったり、亡きK-1のことだったり、
格闘技のすべてが……なんかもう“刃牙の家”みたいなことになってるんだって話だメーン?
血と汗と、“どっちが強えんだよ!?”みたいなもの、その全部があそこに詰まってるんだよ!その興奮をずっと生んできた、あの後楽園ホールが、じゃあどういうところなのか? と。
後楽園でファイトする意味とか、興行を転がすとか、やっぱり歴史から学んでて。他のインディーズ団体から地下格闘技の団体まで、ヒップホップ業界もそこは勉強させてもらってきてますよね、完全に!
そんな新日ならではの興行だったってことを、分かってんの!? と(笑)。あの伝説を今日フツーに観てしまってるけど。もっと言えば、あそこに俺が座ってて、多少なりとも結構なレスラーが意識してましたね(笑)
プロレスにはプロレスの筋があって、ヒップホップにはヒップホップの筋とヒストリーがあって。つまり、カブるところがメチャクチャあるってワケよ。
■ヒップホップとプロレスが根っこで認め合ってる革命的な時代
D.O:オレはいま<WREP>ってジブさんのラジオに出てるんだけど、そこでプロレス情報を挟ませてもらってるんですけど・・・
編集部:<WREP>でプロレスですか!?
D.O:何が悪いんだメーン?当たり前だろって話。「今週これあるからみんな行けよ!」みたいな。それで、もちろん色んな団体とか、今イケてるところの話をしてて。
それをプロレス業界も聴いてくれたりしてるんでしょうね。ヒップホップを少なからず無視してない選手がいる。プロレス界にもヒップホップに興味を持ってるファイターがいて、僕らみたいな業界でもプロレスを昔から愛してる人間が沢山いて。
こないだDRAGON GATE(ドラゴンゲート)行ったんですけど、看板選手3~4人が必殺技を決める前に“練馬マーク”出してくれるんだよ。“来てくれてありがとう”みたいな。
編集部:す、すげえッす!
D.O:ヒップホップなんて、「チェケラッチョでしょ?」「アメリカの真似して」みたいにバカにされてたような所から、限りなく上手に抜け出そうと俺らのムーブはアートであり生き様であり、揺るぎない/譲れないところなんだっていうのを提示してきた。
ヒップホップの根っこがあるんですけど。その根っことプロレスの根っこが認め合える瞬間というか、お互いにリスペクトがあるんだよ、っていうのが暗黙で分かる今っていうのは、革命的な時代だなとオレは思ってるって話。
編集部:急に良い話じゃないですか・・・
D.O:プロレス業界もインディーズが盛り上がってるけど、ヒップホップにも幾つかあるね。
「メジャーを超えてやってやるよ!」っていう。<9sari group>もそのつもりでやらせてもらってるんですけど。
下剋上だったり、今までアリだナシだって散々言われてたことを、ホント180度変えられるようなウソみたいな技で、もう1~2ステージ上れるのも、ヒップホップとプロレスはすごく似てるんじゃないかな、と。
プロレスのタフな概念というか、それはヒップホップと限りなく近いなあ、と。“ムチャクチャなその先に見えるもの”というか“破壊のための再生”みたいなものがアリだな、と。
プロレス界でアリかナシかは計り知れないですけど、少なくともオレがお世話になっているアントニオ猪木ワールドじゃ“アリ”。逆にムチャクチャで行け!っていう、その精神みたいなものを、すごく受け取れたような気がして。プロレスの何たるか?みたいなものは俺 、アントニオ猪木イズムからすげー見せてもらった。
プロレスってそういうものだろ?ドリームディールだろ?と。俺らが言うヒップホップも常に夢ばら撒いて、そんでもってビジネスに繋げて、それは限りなく責任があるひとつのアートだろ、と。そこを分かってる人たちが確実に生き残って、もしくは形を変えに変えて今にずっと根付きながらデカくなっていってる。
編集部:プロレスから学ぶ事が多すぎですね・・・
D.O:例えば僕は、今のプロレスのシーンで血が一番流れて、一番過激に、当時の大仁田厚さんみたいな世界を繰り広げてるのは、大日本プロレスだと思ってて。その大日の何がスゲーかって言ったら、もちろん興行は一番振り切る。で、レスラーたちに一番ケガさせる。と言っても致命的なケガじゃなくて、血しぶきが飛ぶとか。蛍光灯ファイトなんて今、大日が特許取っちゃうくらいスゴいやり方するんですけど、それでお客さんは血だらけのレスラーを観て盛り上がる。
なんでそんなに血だらけになるかっていうと、色んなものが刺さりまくって切れまくって、ギチャギチャの真っ赤に、ホラー映画みたいになるんですよ。そしたらそのまま物販に来て、蛍光灯サックサク刺さりまくってる血だらけの状態で「Tシャツ、あざっすー!!」ってやるんすよ(笑)
みんなもう泣きながら買いに行くじゃないけど、そこにはすげーリスペクトがあって。責任を果たしてる人たちと向き合ったときってどんな気持ちになんのか?「マジだなこいつらは」みたいな。そんな奴らのカッコいい部分とか、俺らがやってることひとつも間違ってねえ! っていう、胸の張り方がカッコいいと思うとか。