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 東日本大震災や熊本地震に関する報道で度々目にする「災害関連死(震災関連死)」。実は、被災し亡くなった方の遺族に対する「災害弔慰金」の支給を自治体が決定したときに初めて、公的に「災害関連死」と認められることになっている。

 今月、九州を襲った豪雨も支給の対象となる「災害弔慰金」だが、その支給基準は曖昧で、明確に理由を示されないまま不支給の判定が下る場合もり、被災地でしばしば問題となっているという。

 17日放送のAbemaTV『AbemaPrime』では、実際に自治体で審査に当たった経験や、反対に遺族側の立場から自治体に改善を要求した経験を持つ在間文康弁護士に話を聞いた。

■因果関係があると言えるかどうかの判断が難しい

 在間弁護士によると、災害弔慰金の費用負担は国が2分の1、都道府県・市町村が4分の1ずつとなっている。

 「もともと被災された方々に国費を投入することに対しては非常に根強い反対論もあった。ただ、"お見舞金"という名目であれば比較的出しやすいということで生まれた側面がある」。

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 災害弔慰金の支給が決定されるまでのプロセスはどのようなものなのだろうか。一つの市町村において5世帯以上の住居が失われるような災害が起きた場合や、同じ県内に災害救助法による救助が行われた市町村があった自然災害での被災者が対象となる。

 そのうち「災害関連死」の疑いがある人について自治体が設置した審査会で判定が行われ、支給が決定した場合、生計を維持していた人で500万円、その他は250万円が遺族に支給される。ここでの「遺族」は亡くなった人の配偶者、子、父母などを指す。

 在間弁護士は「審査会の中には医師や弁護士であったり、研究者など専門家が入って、一件一件を具体的に見ながら、全員が納得するまで徹底的に話す」という。しかし、審査会で意見が割れてしまうこともしばしばだという。「被災との関係との明確な線引きがなく、人によっていろいろな要素が出てくる。その中で因果関係があると言えるかどうか、なかなか難しい」。"1市町村において5世帯以上の住居が失われるような災害"という基準が本当に妥当なのかどうかも、議論の余地があるようだ。

■具体的理由なく不支給も…文書通知に納得できない遺族たち

 また、遺族への通知のあり方も課題とされている。

 去年4月の熊本地震でのケースを見てみる。ある男性(当時70歳)は、一度目の地震(前震)で自宅が半壊状態になったため、農作業場で寝泊まりすることを余儀なくされた。本震で自宅が倒壊するのを目の当たりにした男性は日に日に衰弱、およそ1カ月後に帰らぬ人となった。死因は肝硬変。もともと男性はC型肝炎と肺炎を患っていたが、余命について医師からはあと1、2年は大丈夫だろうと聞かされていたという。

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 「地震後、父は急速に弱っていった。傍にいて、地震の影響は明らかだと思った」と話す男性の長男は災害弔慰金の受給を申請。しかし、熊本市は死亡と震災の因果関係が認められなかったとして「不支給」と判断。通知に明確な理由は書かれていなかったという。

 「どのような通知をするかも自治体に委ねられていて、"関連性が無いから"といった非常に抽象的な理由だけ書かれた文書で通知をしているところもある。自治体としては、決定理由を細かく伝えることで遺族を傷つけてしまうのではないかと、過剰な配慮をしてしまっているようだ。ただ、遺族の気持ちとしては"なぜダメだったかを知りたい"という率直な思いもあり、ズレがある」。

 こうした実態を受け、日本弁護士連合会は今年3月、熊本県、宮城県、福島県、岩手県内の市町村に「具体的な理由を示すべき」とする意見書を提出している。

■再申請や不服申立てによって覆るケースも

 一方、再申請や不服申立てによって、自治体の判断が覆った事例もある。

 2011年の東日本大震災で、経営していた店舗を津波で失い、その年の12月に心筋梗塞で亡くなった陸前高田市の男性(当時56)の場合、震災前から高血圧を患っていたとして、申請は認められなかった。しかし裁判の結果、盛岡地裁は4年後の2015年3月にストレスによる持病の悪化が死因と認定。遺族は弔慰金を受けることができたのだという。

 「精神的なストレスが震災前から抱えている疾病の悪化につながったというようなケースで認められたものが数多くある。やはり裁判で新しい事実関係が出たのだと思う。医師の診断や、どういう生活をしていたかというところも細かく裁判の中で主張されたということだろう」。

■亡くなった方に向き合って判断できるような仕組み作りを

 東日本大震災や熊本地震の被災地を取材してきたジャーナリストの堀潤氏は「長引く避難生活で命を落とすケースは、時間が立てば立つほど見えにくくなる。被災者たちのニーズも支援する側に見えにくくなっていく。また、被災自治体の場合、職員も被災者で、県や国が支えてあげることも重要ではないか」と指摘する。

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 在間弁護士も「十分に審査をするだけの体制がちゃんと整えられていないことはある。時間の制限なんか設けずに、徹底的にやるべき話だと思う。審査会がその日は何時から何時までにやらなきゃいけない、その時間帯に何十件も審査しなければいけないとなってくると、そこまで徹底的に出来ない」と厳しい審査現場の実態を明かす。

 さらに在間弁護士は「基準を細かく作っていくと硬直化してしまって、かえって柔軟に対応できなくなる。できるだけ判断の余地を残すような基準はあり得ると思います。一件一件、亡くなった方に向き合って判断できるような仕組みを作っていかなきゃいけないところが重要」と訴えた。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)


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