プロレスの世界には、何人もの「ミスター」がいる。「ミスタープロレス」といえば天龍源一郎、「ミスターパーフェクト」カート・ヘニング、永田裕志は「ミスターIWGP」と呼ばれた。さらに「ミスター女子プロレス」神取忍も有名だ。
では「ミスターG1クライマックス」と言ったら? やはり蝶野正洋だろう。その蝶野が「G1 CLIMAX」の中から、厳選したベストバウト5試合を選出する「蝶野正洋がガッデム!選んだG1BEST BOUT」(7月21日(金)22:40~ AbemaTV)が放送される。
栄えある第1回大会(1991年)の優勝者にして、通算5回の優勝は史上最多記録だ。第1回大会の決勝戦、大方の予想を覆して武藤敬司を破り、両国国技館に座布団が舞った光景を忘れないというオールドファンも多いのではないか。
もともと、蝶野は目立つタイプのレスラーではなかった。若手の登竜門であるヤングライオン杯で優勝、海外武者修行も経験し、帰国後は橋本真也、武藤敬司とともに闘魂三銃士として売り出されたが、ファンによりインパクトを残したのはド迫力ファイトの橋本、華麗な武藤のほうだった。
ところが、そんな蝶野がG1決勝へ。しかも、旧世代を制して三銃士が力をアピールしたリーグ戦で、武藤を下しての優勝だ。その衝撃は凄まじいものだったし、何よりもドラマチックだった。この蝶野優勝で、ファンは「G1では何かが起きる」「単に人気選手が勝って終わりじゃない」という強烈な印象を植えつけられた。いわば蝶野は、G1を定着させ、ブレイクさせた選手なのだ。
意外性に満ちた初優勝たったが、その後5回も優勝するというのも意外だった。強豪ひしめく新日本マットで「まさか」を起こし続ける力が蝶野にはあったということだろう。
意外といえば、「黒のカリスマ」と呼ばれるヒール的存在でブレイクしたことも、昔からのファンには意外だったはず。以前はコスチュームが白を基調としていただけに、なおさらだ。さらに付け加えるなら、ダウンタウンの番組で常連になるというのもまた意外。
その人生において、蝶野は常に「意外性」を演出してきたと言えるだろう。対戦相手の裏をかき、観客の予想を覆してきた蝶野。G1を語る時、欠かせない存在だ。