歴代最多記録の29連勝を樹立した将棋の中学生棋士・藤井聡太四段(15)が7月21日、第2回上州YAMADAチャレンジ杯の4回戦で、三枚堂達也四段(24)に敗れた。7月2日の佐々木勇気六段戦(当時は五段)に敗れて以来、これで2敗目だ。大記録達成の時点ですでにその実力はトップクラスで、中学生らしからぬ完成度の高さも評判だったが、少しずつ若々しい粗さも見えてきたという。ベテラン勢からすれば、むしろこの粗さが成長するポイントと見る棋士も多いようだ。
藤井四段はプロ入り以来、33戦で31勝2敗。中学生棋士のデビュー直後の成績としてはこれ以上ない出来だが、三枚堂四段に敗れた早指し戦では、29連勝中でも危うい場面が何度か見られた。その様子に勝又清和六段(48)は「そもそも別の作戦なら成功しているのに、あえて別の作戦を選んでいるように見えることがある。勝敗以上のものを見据えているのかもしれない。指してみたいものを指しているという感じ。正直、得ではない作戦もやっている」と解説した。
もちろん勝負である以上、勝ちを目指してやっている。それでも藤井四段の指し手には、若々しい粗さや、将棋そのものへの探究心が垣間見える。野月浩貴八段(44)も「もしかすると、少しおっちょこちょいな面もあるのかもしれませんね」とほほ笑んだ。デビュー当初からすきのない戦いを続けてきた藤井四段に対し、「完成されすぎている」との声も聞かれていたが、むしろ粗さが見えたことで今後も成長する余地が十分にあると、さらなる期待をかける声も増えてきている。
名棋士たちも、みんなそうだった。タイトル通算98期のレジェンド、羽生善治三冠(46)と比較されることが多いが、羽生三冠も対局の序盤・中盤のミスを終盤で一気に取り返す大逆転劇から「羽生マジック」と呼ばれた。ここに経験が加わり、序盤・中盤の実力をつけたことで棋士としてのバランスが成熟した。その最高型は「羽生七冠」として結果に出た。勝又六段は「藤井四段はまだ15歳。穴はいくらでもふさがる。(苦戦した)対局で経験を積んだほうが、後々はるかに恐い」と予想した。
次回の対局は24日、羽生三冠が10期連続で保持しているタイトル、棋聖の一次予選(AbemaTVで放送予定)。2度目の敗戦から中3日の対局になるが、15歳の若者の成長はとてつもなく早い。次に見る藤井四段は、粗さを強さに変換させ、着実に一歩前進した「新・藤井聡太」四段だ。
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