今や日本中が知る最年少棋士・藤井聡太四段(15)とともに、注目が集まっているのが詰将棋だ。初心者でもすぐ解けるものから、プロでも解けないものまで難易度はさまざまだが、藤井四段は詰将棋が得意なトップ棋士と比較して、3倍のスピードで解くという。先月16日に行われた「詰将棋全国大会」では、詰将棋の普及・発展に貢献したとして表彰された藤井四段の「詰将棋力」はいかなるものか。
将棋界に一気に「藤井聡太」の名が広まったのは、詰将棋解答選手権に出場した小学2年のころだ。当時を知る勝又清和六段(48)は、「そのころから谷川(浩司)先生より成績がよかった」と、神童の出現に驚いたという。「イベントの空き時間に、藤井四段に解かせてみたんですよ」と25手詰の難問を見せ「これ、30秒で解いていました」と舌を巻いた。このレベルになると、およその最終型がイメージできると言われているが「先の展開がクリアに見えているんだと思います。数学の天才とか、そういうタイプだと思います」と分析した。
藤井四段のほかにも詰将棋を得意とする棋士は多い。棋聖戦で羽生善治三冠(46)に挑戦した斎藤慎太郎七段(24)もその1人だ。藤井四段が3連覇中の詰将棋解答選手権で、斎藤七段も三段時代に2011年、2012年と連覇した。だが、その斎藤七段も「彼は私の3倍速です」と、驚異的なスピードを認めている。デビュー間もない藤井四段について、棋士たちから「終盤力」と語られていたのは、この実力が知られていたからだ。
驚異的な「詰将棋力」は、実際の対局でも相手棋士にプレッシャーを与えている。勝又六段は「谷川先生に『光速の寄せ』もそんな感じ。つかまえにいくと一瞬で寄せてしまう。藤井四段の場合も、本当はつかまっていないのに寄せられだしたら諦めてしまう人も出てくるかもしれない。こういう心理的なものはとても大きい」と話した。藤井四段は終盤、読みがはっきりしてくると、一手を指す間隔も非常に短くなる傾向にある。次々と指されるうちに「自分はもう負けているのか…」と思わされた時点で、勝敗は決まってしまう。
詰将棋を解く能力では、既に将棋界でも最上位クラスと言われる藤井四段。現役棋士たちの心の植えつけたこのイメージは、今後の対局でも勝敗を左右する大きなポイントになる。8月4日の対局では、AbemaTV(アベマTV)で放送中の王位戦七番勝負で羽生三冠に連勝している若手実力者、菅井竜也七段(25)の胸を借りる。関西将棋会館ではいまだ無敗を続ける藤井四段だけに、注目の一局となりそうだ。
(C)AbemaTV