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 「明治以降、東京が政治・経済の中心地になってきたので、大阪ベースの企業も東京を無視することができなくなった。特に戦後は、銀行も商社も、東京にやってくるということが顕著になった」

 関西の企業や経済に詳しい経営コンサルタントの小宮一慶氏がそう語るように、これまで長い間、東京が"日本の中心"だった。しかし、そんな状況に今、異変が起きようとしている。異変の源は大阪だ。

 "東京に興味がない大阪の経営者"の一人、心斎橋にあるたこ焼き屋「甲賀流」の田中由弘代表。

 1974年創業の甲賀流は、関西圏に13店舗を展開、あのミシュランガイドにも掲載された人気店だ。客からは「中がとろっとして、外はカリカリで他とは違うなと思う」「普段、東京に住んでいるのでなかなかこういうたこ焼きがないので、久しぶりに食べた」と絶賛の声があがる。

 田中氏は、「東京でも成功する自信はあるが、大阪で自分らの食べていける分を稼げるというのがまず第一。東京まで行って、大きく稼ぐっていう感覚はあまりない」と話す。

 そんな田中氏が手本にしているのが、やはり関西圏だけで営業、大阪土産の豚まんで有名な「551蓬莱」だ。

 「東京含めて色んなところの百貨店に行かせて頂くが、551蓬莱がものすごく売れる。それ見て、かっこええなぁ思って。うちのたこ焼き食べたかったら、大阪来た時食べられるよ、みたいに言えたらかっこええなぁ思って」(田中氏)。

 大阪の高級住宅地、帝塚山に店を構える洋菓子店「ポアール」。スイーツ好きの関西人なら、知らない人はいないと言われるほどの有名店だ。1969年に創業し、大阪市内に7店舗を展開しているが、東京への進出は考えていないという。グランシェフの辻井良樹氏は「東京から注文頂いたり、新幹線代も宿泊代も出すから来てくれという形で何度か伺っている。それは大阪でやっていることの値打ちというのがあるような気がする。ちゃんと管理ができて、しっかりブランドが維持できるのであれば、むしろ東京ではなくて海外の方がありだ」と話す。

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 一度は東京に進出するも、撤退を決断した店もある。

 創業400年を誇る、道頓堀の「いちびり庵」だ。元々は紙問屋だったが、明治時代に文房具店となり、1994年からは土産店として営業している。いちびり庵が東京で出店したのが、お台場にある「たこ焼きミュージアム」内のショップだった。しかし、大阪土産をそのまま東京に持っていっただけだったため、売上はどんどん下がっていったという。結局、開店から1年半後の2012年5月に撤退。現在お台場にあるいちびり庵は、東京土産なども置く店に変わっている。

 台場一丁目商店街自治会長の久保浩氏は「東京土産を置かないで大阪土産だけで勝負している時は、なかなか土産品が売れなかった。僕ら東京だから当たり前だが、東京土産を置くようになって、それが売れるようになった。大阪のプライドみたいなものを捨てた。逆に言うと、東京の人はプライドを捨てるのが上手だ」と話す。

 大阪の魅力について街で尋ねてみると、「おいしい、安い、楽しい」「ディズニーランドに対して、大阪にUSJあるで、と言えるんで。つい最近、東京の人としゃべった時もUSJうらやましがられた。大阪が対抗できるようになってきた」との声が聞かれた。

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 なにわ名物開発研究会会長の野杁育郎氏は「どんどん大阪の魅力が今、インバウンド観光客、この道頓堀にもいっぱい来て頂いているみたいに、世界から注目される街に大阪をアピールできるチャンスが広がってきている」と語る。

 大阪、そして関西の魅力はどこにあるのだろうか。東京の魅力は失われたのだろうか。

■今後、これをどうキープしていくのかが重要

 AbemaTV『AbemaPrime』に出演、これが"生涯4度目の上京"だという甲賀流の田中氏は「大阪はお客さんも辛口でうるさいけど、一度懐に入ったら、かわいがってくれるし、お店にずっと来てくれる。逆に東京は怖い。東京は遊びに行ったりするのはすごいところだと思う。東京も大阪もいいところがある。仲良くやっていきたい。元々、取って代わろうなんて気がない」と語る。

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 「関西の方が商売をする上で、真面目にやっていたらお客さんが離れないという自信がある。東京は新しいもの、新しいもので刺激的だけど、僕らみたいに同じことを何十年もするような商売は、東京だと埋もれてしまうような気がする」(田中氏)。

 大阪は、外国人にも大人気だ。

 大阪観光局によると、大阪府を訪れている外国人客数は、2014年に約376万人、2015年に716万人、2016年に約941万人と年々増えている。また、RJCリサーチによると、2016年の年間SNS発信地ランキングの1位はUSJだ。2位以下は、東京ディズニーランド、3位・富士山、4位・東京タワー、5位・大阪城となっており、その人気ぶりがうかがえる。

 通天閣のすぐそばにある「TOWER KNIVES OSAKA」は、カナダ出身デンマーク育ち のビヨン・ハイバーグ氏が経営する包丁専門店。この店では、堺で作られたものを中心に約350種類の包丁を販売している。「ニンジンも簡単に切れる」とまるで通販番組のように流暢な日本語を話すビヨン氏が来日したのは25年前。

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 ビヨン氏は「大阪は好きだ。でも東京で人々に声をかけたら、冷たいとは言わないが、控え目な感じだった。第一印象が難しいなと思った。そこは大阪の、最初から『まいど!いらっしゃい!』と目を合わせながら挨拶をしてくれた」と話す。

 慶応大学特任准教授の若新雄純氏は「東京がオワコンになったとか、東京の魅力が下がったというデータの話はあまりなくて、大阪がよくなってきたという話。本当は切り離して考えてもいいはずなのに、大阪が上がると東京が下がったかのように語られるのは不思議」と指摘する。そのうえで「おカネを稼ぐだけなら、東京以外でも仕事はあるし稼げる。でも、日本社会の構造は全国に行き渡るメディアは全て東京に集約されているので、目立ちたくてたまらない僕のような人には最高の街」と話した。

 コミュニティデザインを手がけるsudio-L代表の山崎亮氏は「好景気になる時期が東京とちょっとずれていただけで、関西は今、人々が集まる場所になってきている。今後、これをどうキープしていくのかが重要。東京と競うのではなくて、オリジナルのものとしてどう機運を高めていくのかが求められている。まさに今がそういう時期」と指摘した。

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