2014年、第24回のG1クライマックス決勝戦(8月10日(木)21:00~AbemaTVで放送)は、従来の両国国技館ではなく、西武ドームで開催された。当日は台風の影響で雨も降ったが、観衆は1万8000人。
そこで行なわれた決勝の組み合わせは、オカダ・カズチカvs中邑真輔だった。2人はユニット・CHAOSの同門。“レインメーカー”となって凱旋帰国したオカダが加入を選んだのがCHAOSであり、そのリーダーである中邑はオカダにとって兄のような存在だと言える。後に中邑が新日本プロレスを離脱した際には、その最終戦で、人目をはばからず涙を流すオカダの姿があった。
そんな大きな存在でも、いや、だからこそ超えたい。すでにオカダはIWGP王者にもなっていたが“中邑超え”も真のトップの条件。この年、オカダはG1開幕時点から中邑との決勝戦を望んでいた。
中邑とのCHAOS同門決勝を実現させたオカダは、“中邑超え”も果たして2度目のG1優勝を決めた。中邑はスライディング式、ジャンピング式とパターンを変えてボマイェをヒット。しかしトドメの一発はオカダがドロップキックで迎撃する。そこからオカダはレインメーカー3連発で勝負を決めた。
当時はレインメーカーは“一撃必殺”のイメージが強かったから、連発することは新鮮であり、驚きでもあった。そこまでオカダがこの勝負にかけていた。ということでもある。あまり感情を表に出さないオカダの必死さ、なりふり構わず勝ちにいく姿が見られた試合としても、この試合は印象深い。
ブシロードが親会社となり、新しい時代を迎えてブレイクへの道を突き進む新日本プロレス、その象徴であるオカダが夏の頂点に立ったこの一戦は高く評価され、その年のプロレス大賞でもベストバウトを受賞している。それも、最初の投票で約75%の支持を集める“圧勝”ぶりだった。
受賞を聞いた中邑は「台風と夕日の絵柄という芸術点が加算されたんでしょう」と評価の理由を分析したそうだ。確かに、プロレスは結果がすべてではないし、高度な技が出ればいいわけでもない。会場や天候、あらゆるシチュエーションを含めた“記憶”が何よりも大事なのだ。まさにこのオカダvs中邑は“記憶に残る”名勝負だった。