この夏、「インスタ映えする」と女子に大人気の「ナイトプール」。そんなナイトプールを舞台にした動画がネット上で議論を呼んでいる。それが人気YouTuber「６面ステーション」の３人によるチャレンジ動画だ。
"パリピ"たちが遊んでいる中を本気で泳ぐというもので、監視員から「他の人に迷惑かからないようにお願いします」と注意されてしまう場面も収められている。このナイトプールは遊泳禁止ではないが、周りの客や監視員からは迷惑行為に見えたのだろうか。メンバーは「泳いでるだけだけで怒られる！」と叫んでいた。
このプールにいながらにして泳がない"インスタ女子"への挑戦が、ネット上で話題を呼び、Twitterで拡散していったのだ。
この動画について、AbemaTV『AbemaPrime』では関係者に話を聞いた。
取材に応じた西武園ゆうえんちの新井啓祐さんは「やはりたくさんのお客様が来園されますので、本当にがっちり泳ぐにはむいてない」と話す。実際の来場者からは「いいと思う。ガチ。逆にカッコイイ、勇気があるなって」という声が上がる一方、「プールの目的が違うから…」「面白さを狙っている。ガチで泳ぎたいわけじゃない」と、彼らの行動を批判する声もあった。
しかし、番組に出演した６面ステーション３人は、騒動に困惑気味の様子だ。
メンバーのサカナギさんは「もう怖いとか気にしてたらやっていけないので、割り切ってますね。今回のはTwitterに動画が勝手に転載されたので拡散したので、YouTubeの再生回数はそんなに伸びていない」と話す。
また、６面さんは「再生回数上がるほど広告収益も上がるので、視聴回数を増やすためにYouTuberが過激な方に走っちゃうことはある」と話す一方、「監視員さんからは、注意といっても"ちょっとやめてね"っていう程度。面白いかなとは思ったんですが勝手に炎上しちゃった…」と苦笑い。しもDさんも「たしかに泳ぐんですけど、最後はパリピたちと一緒に泳いで、ナイトプール最高！と言って終わる。Twitterで拡散したのは、泳いでるところや僕がわめいてるところばかりが切り取られたので…」と、本来の意図が伝わっていないのではないかとした。
今、Twitterでのリツイート数やYouTubeの視聴回数を増やすためにより過激な行為に及ぶ人の数は増えているという。一般社団法人情報教育研究所の永坂武城氏は「一概には言えないが、ネット炎上の現象からも分かるようにウケ狙いの目的がある。その根底には承認の欲求が満たされたいといった心理がある」と話す。
文部科学省の有識者会議では「現代の若者のモラル低下の一つは新しいメディア技術の発達の影響が指摘されている。インターネットを長時間利用することで家族間でお互いへの関心が失われたり、さらには自己中心的な人間関係のあり方が助長されたりしている」という指摘（「子どもの徳育に関する懇談会」、2009年）もあり、SNSとそれを通じた自己承認欲求によって日本人のモラルが低下しているのではないかという指摘もある。
実際に、大盛の写真を撮るためだけにラーメンを注文してほとんど残したり、パジャマ禁止のディズニーランドで、わざわざ入園後にパジャマ姿に着替え、写真を撮影したりするといった事例が炎上を引き起こしてきた。
しかし、しもD氏は「アメリカなどは家の庭のプール一面に買ってきたドーナツを浮かべる奴もいる。日本でやっちゃうといろんな人から食べ物に何するんだと怒られるだろう。やりたい気持ちはあるが我慢することも多い」と、海外に比べ日本はまだまだ倫理に厳しいとの見方を示した。
承認欲求が人一倍強いと話す若新雄純・慶応大学特任准教授は「学校で悪さをする"クソガキ"がそれにあたる。誰しも小学生の頃から承認欲求はある。成績がいい、足が早い、そのどちらもない場合はちょっと悪いことをして目立つ。でも、インターネットを使ってモラル違反やルール違反で承認欲求を満たすのは“負け組”だと思う。本当の勝ち組は、SNSで社会的に認められることで承認欲求を満たす」と指摘。その上で、「ユーモアも足りない。日本の教育はみんなと同じことをやらせるのは上手。でもInstagramではみんなと同じことやっても意味がなくて、違うことをしないといけない。でも高校・大学まで、いい意味で人と違うことをするのを学んでこなかった。だから安易にルールを破ったり、ただのいたずらをしてしまうのではないか」と話した。
６面ステーションの６面さんは「炎上しちゃったのは不本意。モラルって難しい。僕たちは守らないといけない立場だ」とコメントしていた。（AbemaTV／『AbemaPrime』より）
